教育相談3万件のプロが教える!子どものSOSを引き出す対話と保護者のあり方

もし子どもが不登校になったとき、保護者が最初に感じるのは「何かしてあげたい、でも何をすれば…」という戸惑いではないでしょうか。子どもの心を知り、支えるために大切にしたいのが、家族の何気ない「対話」です。今回は、3万件以上の教育相談に携わってきた大久保 俊輝先生が、子どものSOSを引き出す対話のコツと保護者のあり方についてお話しします。

この記事のポイント

    普段の何気ない対話が子どもを安定させる

    普段の何気ない対話が子どもを安定させる

    長い間教育現場に身を置き、3万件以上の教育相談を受けている中で、子どもの心の安定に大切だと感じていることがあります。それが、家族での何気ない「対話」です。皆さん、家族揃って食事をする時間はありますか?

    実は、私が調べた範囲では、中国の敦煌(とんこう)や台湾といった地域は、不登校が特に少ないようです。その理由を考えたとき、これらの地域のある共通点にたどり着きます。それが、学校や仕事がある平日でも、家族全員で2時間ほど一緒に昼ごはんを食べること。

    この食事の時間が生み出すのが「対話」です。食事をしながら、家族に学校であった楽しかったことや嫌なこと、成功したことや失敗したことを話す...この何気ない対話が、不登校が少ない背景ではないかと言われています。

    日本では、「孤食(1人で食事をとること )」の割合が増えています。そのため、子どもが自分の悩みを話す機会が減っていることは否めません。日本では平日に家族で昼食を取ることは難しいですが、できる限り家族の対話が生まれる時間を作ってほしいと思います。

    その対話から、「家族って楽しいな。良いもんだな」という気持ちが生まれ、心の安定につながっていくでしょう。

    子どものSOSを引き出す「対話」のコツ3つ 

    子どものSOSを引き出す「対話」のコツ3つ

    私の言う「対話」は、一方通行の「会話」ではなく、双方向に水が流れるように心が通い合うことを指します。ここでは、子どもの気持ちを引き出す対話のコツを3つ紹介します。

    1.同じ土俵に立って考えや気持ちを共有する

    大人と子どもでは、考え方や感じ方は大きく異なります。だからこそ、対話にはまず子どもと考えや気持ちを共有し、目線を合わせる...つまり同じ土俵に立つことが必要です。

    同じ土俵に立つためには、まず子どもの話を聞いてみましょう。
    「学校に行くことについてはどう思ってる?」
    「その時どんな気持ちだった?」
    質問をすることで、子どもの世界に立つことができます。大人の視点からではなく、同じ目線で話をすることが対話への第一歩です。

    2.率直に言える関係になる

    対話をするためには、子どもに自分の気持ちを素直に話してもらう必要があります。しかし、傷ついた心を抱える子どもにとって、自分の気持ちをそのまま言葉にするのは容易ではありません。

    そんなときは、まず保護者の方から率直に自分の気持ちを話してみましょう。保護者という立場で「もっと頑張れ」「大人になったとき困るよ」などと言うのではなく、「学校に行けなくて不安もあるよね」「お母さん(お父さん)も心配なんだ」「あなたには幸せになってもらいたい」のような、正直な気持ちを伝えてみてください。

    また、保護者自身の失敗談や悩んだ経験を話すことも効果的です。同じ土俵に立って自分から自己開示をすることで、子どもも心を開き、素直な気持ちを話してくれるようになります。

    3.「幸せになってほしい」をベースにする

    「我が子には幸せになってもらいたい...」というのが保護者の心からの願いでしょう。ただ、幸せは押し付けられるものではなく、自分で獲得していくものです。ですので、自分の「善意」によって相手を思い通りに動かそうとせず、ただ純粋に相手の幸せを願いましょう。

    そもそも、幸せの形は人それぞれです。同じ状況でも、幸せと思える人もいれば、不幸だと思う人もいます。だからこそ、保護者にできることは「正解を与えること」ではなく、子どもが自分で幸せを見つけていけるよう、安心できる居場所であり続けることです。

    子どもの良さを見つけ、10年先の未来を信じて

    子どもの良さを見つけ、10年先の未来を信じて

    実は、私の3人の子ども達はみんな不登校でした。でも今は大人になり、3人共自立して自分の道を歩んでいます。子どもが不登校で不安を抱えている保護者は多いと思いますが、不登校の時期は長い人生のほんの通過点にすぎません。

    学校に行けないことを責めたり、よその子と比べたりせずに、子どもの良いところを見つけてあげましょう。特に、弱点は強みと表裏一体です。弱点を「長所」「利点」「美点」へと言い換えることで、子どもの良さが見えてきます。

    たとえば、『こだわりが強い』は『粘り強く物事を追求できる』、『人見知り』は『じっくり信頼関係を築ける』と捉え直すことができます。見方を変えるだけで、子どもの良さがみえてくるのです。

    不登校の子どもは、多くの場合で心に傷を負っています。子どもの良さを見つけて、「自分はダメな人間だ」と子どもに思わせないことが大切なのです。「自分には可能性がある」と信じられる力(人間力)を育んでいきましょう。

    子どもの反抗的な態度...どう返すのが正解? 

    子どもの反抗的な態度...どう返すのが正解? 

    「ご飯できたよー」→「いらない。あとで食べる」
    「冷めちゃうよー」→「うるさいな」
    「今日どうだったー」→「別に」「言いたくない」

    などと、子どもに返されることはよくあるのではないでしょうか?

    そこで私ならこう返します。
    「お待たせしました!美味しいディナー完成しました!」とか
    「ぼやきタイムスタートってか?むかついたことなかった? めっちゃ嬉しい事は? 無い? そうなんだ!」と笑って「いいこともあるよ! きっとね。」などと答えます。

    大切なのは、ユーモアを必ず加えることです。

    朝起きない場合も、「遅刻するよ!」ではなく
    「コケコッコー7時です。7時です。」と7時半なのに耳元で囁くとか。

    ユーモアを潤滑油にしましょう。
    子どもが拒否したときこそ、親の胆力が試されるチャンスです。

    まとめ & 実践 TIPS

    まとめ & 実践 TIPS

    不登校の時期は、長い人生のほんの通過点にすぎません。大切なのは、答えを急いで出すことではなく、子どもの隣に「安心できる人」としていてあげること。まずは今日、一言だけ声をかけてみてください。「ご飯できたよ」でも「今日どうだった?」でも、それだけで十分です。その小さな積み重ねが、子どもの心に「自分は大切にされている」という根っこを育てていきます。保護者の「笑顔」と「寛容さ」で、子どもの良き理解者になってあげてください。

    大久保 俊輝(おおくぼ としき)

    モラロジー道徳教育財団 特任教授

    勤労学生として短大夜学・通信教育で教員となり、千葉県で10年間勤務後、県の最年少 任用室長に抜擢され 校長人事や育成に携わる。 その後、自ら困難校で校長を歴任し、定年後は新任校長の育成を10年間にわたり担当。この間、大学講師・特任教授・教授として、常に第一線で示範授業(しはんじゅぎょう)や教育相談活動を続けている。 大学を離れた後は、「実践道徳」を通じて、人と社会を幸せにできることを証明する活動を本格的にスタートさせている。不登校支援「あんたがおらな」代表 。著書に『わが子が「学校に行きたくない」と言ったら-不登校解決レシピ』がある。

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