助けを求められない子どもたち。SOSを受け止めるには【椎名先生の「不登校ライフ」カウンセリングルーム #12】
椎名 雄一先生(一般社団法人日本心理療法協会代表理事)による、不登校のお子さまの保護者のかたより寄せられたお悩みにズバリお答えいただく『椎名先生の「不登校ライフ」カウンセリングルーム』。今回は、新学期の緊張が続いた時期を過ぎ、少しずつ蓄積した疲労が心身に現れてくるタイミングでのご相談です。椎名先生から気をつけたいことや具体的なアドバイスをいただきました。
この記事のポイント
「助けを求める」は簡単なことではないことを理解しよう
保護者からのご質問
中学生の子どもが最近元気がなく、学校のことを聞いても「別に」「大丈夫」としか言いません。無理に聞き出そうとすると部屋にこもってしまいます。なにかあったのでは、と心配ですが、本人が話してくれない以上どうしようもなく、ただ見ているしかない状態です。子どもがSOSを出してくれたら対応できるのに、と思ってしまいます。保護者としてはどうしたらいいのでしょうか?
(ご質問は過去に椎名先生に届いた内容を要約したものです)
椎名先生回答
「SOSを出してくれたら対応できるのに」というお気持ちはよくわかります。そうしたら保護者も本格的に協力できそうですよね。
ただ、その前にひとつ想像してみてください。
もし、皆さんが初めて本格的なカウンセリングを受けるとしたらどうでしょう。「なにから話せばいいんだろう」「否定されたらどうしよう」「わかってもらえないのでは」などと考えませんか?大人でもそうなのですから、助けを求めるというのは、実はかなり難しいことなのです。
ですから、子どもにとってはさらにハードルが高いことなのですね。それではその「難しさ」について、少し分解して解説していきましょう。
子どもがSOSを出せない背景に、タイミング・言語化・遠慮・申し訳なさがある
まず、知っておきたいこととして、子どもはSOSをどのタイミングで出したら良いかの感覚を持っていません。たとえば、授業中に「トイレに行っていいですか」と言い出すタイミングですら難しいですよね。先生の話を遮ってはいけないけれど、プリントを配っているときもダメだな...。など、それくらいタイミングを見計らうことは難しいことなのですね。
次に、自分の状態を言語化することの難しさがあります。「なんとなくいやな感じがする」「特に理由がないのに疲れてしまった」「文字を読んでも頭に入ってこない」。こういった曖昧な感覚を、先生や保護者がすんなりと想起できるように説明することは、子どもにとって至難の業(わざ)です。
だからこそ、「どうせうまく伝わらない」「自分だけでなくきっとみんなもそうだ」「よくあることだ」くらいの受け止めかたをされてしまうだろうから話せない。子どもとしては、そんなふうになりがちです。
さらに、自己肯定感が低い子は「自分なんかのために時間をとってもらうのは申し訳ない」という遠慮を持っています。コンビニで店員さんに聞かれたことに答えるのも難しい子もいるのです。
保護者アンケートでも「娘は『申し訳ない』という言葉が多い」「自分が悪くなくてもすぐ『ごめん』と言う」「自分の意見を言うとき、枕詞のように『ごめんだけど...』と言う」という声が非常に多く寄せられています。
そして、不登校傾向のある子どもに特に多いのが「自分に時間やお金や労力をかけてもらっても結果が出せないから申し訳ない」「自分のために頑張らないでほしい」という気持ちです。これではSOSはなかなか出せませんし、子どもはSOSを出すほどの状況になっているという自覚すら持てていないかもしれません。
直接的な問いや曖昧な解釈の外、気持ちは関係ないところから漏れ出す
ただ、私たち人間は気持ちが関係のないところから漏れ出すことがよくあります。どういうことかというと、「恋愛をしている人をカラオケに連れていくと恋の歌ばかり歌う」そういうようなことです。
ですから、テレビの話でもアニメの話でも推し活の話でも良いので、毎日少しずつ会話をすることでSOSの断片を見つけることができます。大事なのは、本人もSOSと思っていないくらいの段階で、そういう言動がふと出てくるということです。
保護者のアンケートでも「人前で給食を食べられなくなった」「マスクを外せなくなった」「前髪を伸ばして目を隠すようになった」など、ふり返れば明確なサインだったけれど当時は見逃していた。という声が多数あります。
そういった変化を「思春期だからかな」のような、曖昧な解釈で見過ごされていた。SOSは「助けて」というわかりやすい言葉ではなく、日常の小さな変化として現れるので、想像していない場所から漏れ出すことがよくあるのです。
聞きかたにはコツがある!大人は勝手な仮説をもたないこと
ここで聞きかたにコツがあります。こちらが「きっとこういうことだろう」とある種の正解や仮説を持って聞かないことです。仮説がある時点でそれに引っ張られて、お子さんが本当に思っていることを感じ取れなくなります。
自分とはまったく違う文化、まったく違う価値観の話を理解するつもりで真剣に聞く。そうするとお子さんの心の揺らぎを見つけることができます。そして、そのような聞きかたをしていると、お子さんも「この人には話したらわかってもらえるかも」と感じられるようになります。結果として、SOSが言葉にできそうになったときに言ってくれるかもしれません。
「子どもが自分からSOSを出してくれたらいいのに」と待つのではなく、SOSを出せる関係を日々の雑談のなかで作っておくこと。そして、日常会話のなかで「ゆらぎ」を感じ取っておくこと。それが保護者にできるもっとも大きなセーフティネットといえますね。
