【不登校とゲーム・スマホ依存】児童精神科医が解説!向き合い方と家庭でできること
「学校に行かず、家でゲームやスマホばかり…このままでいいんだろうか?」
不登校の子どもが、ゲームやスマホに依存する姿を見て、このままでいいのか心配を抱えている保護者は多いでしょう。でも一度、取り上げる前に立ち止まってみませんか?子どもにとって、スマホやゲームは、傷ついた心を守るための大切な存在になっている場合が多いです。この記事では、ゲームやスマホとの向き合い方と、家庭でできることをお伝えします。
この記事のポイント
不登校の子どもとゲーム・スマホの向き合い方
スマホやゲームは「敵」ではなく「救命具」
保護者から見れば、スマホやゲームは子どもを依存させる「敵」のように感じるかたもいるかもしれません。事実として、スマホやゲームによる視力の低下や運動不足などの弊害はあります。しかし、不登校の子ども達にとって「浮き輪」のような救命具になっている場合も多いのです。
たとえば、以下のような状況があります。
・中学校に通えない後ろめたさや将来への不安などから自分を守るため、自己防衛としてゲームやスマホに頼っている
・オンライン上の友人(インティメイト・ストレンジャー)との繋がりが、安心できる大切な居場所になっている
・好きなことに熱中することで、「楽しい」という感情を取り戻し、外の世界へ一歩踏み出すためのエネルギーを蓄えている
このように、不登校の子どもにとって、スマホやゲームは「自己防衛」「居場所」「エネルギーチャージ」など、傷ついた自分を回復させ、元気を取り戻して次の居場所へたどり着くための「浮き輪」のような役割があるのです。
「スマホやゲームのせいで学校や外に行けない」ではなく、「学校に行けなくて苦しいからスマホやゲームをしている」という因果関係を、ぜひ一度捉え直してみてください。
スマホやゲームの強制的な取り上げはリスクがある
スマホやゲームの強制的な取り上げにはリスクが伴います。なぜなら、前述した通り、スマホやゲームが、不登校の子どもの心を守り、助けている存在だからです。でも「依存しすぎて心配」という保護者の気持ちもよくわかります。
そこで、依存が気になるときは、一度立ち止まって「ゲームやスマホを取り上げて、子どもにどうなってほしいのか」を考えてみてください。「実際に会って友達と喋ってほしい」「家族と会話してほしい」など、ゲームやスマホを取り上げたい背景には、子どもへの思いが隠れているはずです。
その気持ちが確認できれば、取り上げ以外の解決方法を見つけることができるでしょう。たとえば、「友達と遊んでほしい」が願いなら、ゲームやスマホを取り上げるより、興味があるゲーム大会への出場や、推しに会いに行くなど、友達と出会いやすい場所に連れて行くほうが願いが叶いやすいです。
このように、ゲームやスマホを取り上げなくても良い方法をぜひ考えてみてください。
ポイントは3つ!スマホやゲームのルール作り
ゲームやスマホが不登校の子どもにとって大切な存在とは理解できるものの、使用頻度が気になる保護者も多いでしょう。ここでは、ゲームやスマホの使用のルール作りのポイントを3つ紹介します。
1.ルール作りの前に家庭のコミュニケーションレベルを確認する
ルール作りは、子どもとの関係性がしっかりできているうえで行うことが大切です。まずは、家庭内のコミュニケーションがどの段階にあるかを確認してみてください。今はどの段階にいても大丈夫です。一段階ずつ進めていきましょう。
レベル1: 挨拶ができる
レベル2: 食べたいものに答えてくれる、一緒にご飯が食べられる
レベル3: 他愛のない雑談ができる
挨拶ができない状態では、ルールの話はできません。コミュニケーションレベルが「3」になって初めて、ゲームのルールや将来についての話し合いが可能になります。まずは挨拶から始め、何をしたら子どもがコミュニケーションを取ってくれるのかを考えてみてください。
2.ルールは「これなら守れそう」という低いハードルから始める
最初から「1日1時間」といった厳しいルールにすると、実行できずに子どもも保護者も疲弊してしまいます。
「食事の時間はスマホを置く」「夜9時には一旦終わる」など、子ども自身に「これくらいなら守れそう」と思えるルールを提案してもらい、保護者が承認するという進め方がおすすめです。
3.ルールを守れなかったら作り直すだけ
一度決めたルールを完璧に守り続けることは、大人でも難しいはずです。もし子どもがルールを守れなかったとしても、責めないであげてください。
ルールには、子どもの「守る責任」と保護者の「守らせる(環境を整える)責任」の2つの側面で成り立っています。どちらか一方だけが悪いということはないのです。
もしルールが守れなかったら、「どうして守れなかったか」「どういう約束なら守れるか」を話し合い、さらにハードルを下げた新しいルールを作り直しましょう。最初から完璧を目指さず、失敗を前提に今の家庭にちょうどいいラインを何度も引き直していくことが大切です。
子どもの回復の第一歩は、家庭で元気になること
不登校の子どものために家族ができることは、家庭を「安心して過ごせる安全な場所」にすることです。子どもが心から安心できる家庭は、子どもの心の健康を保ち、外の世界へ飛び出したあとも穏やかに過ごせることが多いです。
学校に行く・行かないよりも、「あなたが元気でいてくれるほうが嬉しい」というメッセージを子どもに伝えてあげてください。その言葉が、子どもの居場所を作る第一歩になります。
また、子どもが熱中しているゲームやSNSを否定せず、その世界にポジティブな目を向けるとよいでしょう。心のエネルギーが回復し、家庭内での元気を取り戻すことにつながります。
安心できる家庭は家族にしか作れません。上で紹介したコミュニケーションレベルを少しずつアップさせながら、安心できる居場所を作っていってください。
まとめ & 実践 TIPS
スマホやゲームは、不登校のお子さんにとって心を守る大切な存在です。まずは「学校に行けなくて苦しいからゲームをしている」という視点で、お子さんの気持ちを受け止めてあげてください。ルール作りはコミュニケーションが土台です。挨拶から始め、お子さんが「守れそう」と思えるハードルで少しずつ進めていきましょう。うまくいかなくても、作り直せば大丈夫です。何より大切なのは、ご家庭が安心できる居場所であること。「元気でいてくれるだけで嬉しい」というあたたかい言葉が、お子さんの回復を支える力になります。

大湫病院 児童精神科医 関 正樹 せき まさき
1977年生まれ。2003年福井医科大学医学部卒業。岐阜大学医学部附属病院、土岐市立総合病院精神科を経て、2007年8月より現職。岐阜県東濃地方の地域の児童精神科医として、発達障害や不登校の診療にあたるとともに、地域における発達障害の啓発活動や療育施設の座談会などに出席し、家族支援をおこなっている。日本児童青年精神医学会代議員。精神保健指定医、精神科専門医、子どものこころ専門医、児童青年精神医学会認定医。著書に『思春期の 「つながる気持ち」はどこへ行く? 学校に行きづらい子どもとネット・ゲーム・SNS 』(日本評論社、2024)、『子どもたちはインターネットやゲームの世界で何をしているんだろう?児童精神科医からみた子どもたちの「居場所」』(金子書房、2023)などがある。
