新中学1年生の4月にはどう寄り添う?【椎名先生の「不登校ライフ」カウンセリングルーム #11】
椎名 雄一先生(一般社団法人日本心理療法協会代表理事)による、不登校のお子さまの保護者のかたより寄せられたお悩みにズバリお答えいただく『椎名先生の「不登校ライフ」カウンセリングルーム』。今回は、この春から中学生となる保護者のかたから、新しい環境に立つお子さまを案じるご相談です。椎名先生からエールを込めたアドバイスをいただきました。
この記事のポイント
今年の「新中1生」が特殊な学年である理由
保護者からのご質問
この春、子どもが中学に入学します。小学校では特に問題なく通えていましたが、最近のニュースで不登校が増えていると知り、新しい環境に馴染めるか心配です。中学では複数の小学校から生徒が集まると聞いていますし、勉強も難しくなります。親として、入学前後になにを意識しておけばよいのでしょうか?
(ご質問は過去に椎名先生に届いた内容を要約したものです)
椎名先生回答
新たに中学1年生となったお子さんを持つ保護者の皆さんが不安に感じるのはよくわかります。不登校が増えているニュースもありますし、「我が子は大丈夫だろうか?」と考えてしまいますよね。
なかでも今年の新中1は少し特殊な学年なのです。彼らは2020年のコロナ禍の初年度に小学1年生だった子どもたちだからです。小学1年生は集団生活の土台を作る時期ですが、行事の縮小や活動制限のなかで、その土台づくりが十分にできなかった可能性があります。
実際に団体行動が苦手だという報告は現場からも上がっていて、学年全体の課題として認識されているケースもあります。その意味では他の学年よりも新学期のハードルが高い子もいる可能性があるわけですね。
「行けばなんとかなる」は本当か。子どもが直面している「場面」に目を向ける
こうした心配をしている保護者の多くが陥りやすいのが「学校に行ってしまえばなんとかなるだろう」「時間が経てば慣れるだろう」という考え方です。
「なんとかなる」とはどういうことを指しているのでしょうか?なんともならない子もいるわけです。お子さんがただ我慢しているだけでは「なんとかなった」とは言えませんよね。「やがて慣れる」という考えかたも同じことです。
繰り返すことで慣れる場合もありますが、繰り返すほどどんどん嫌になっていくことだってあるのです。このような中身のない「行けば」とか「慣れる」などのように思考停止してしまうと、お子さんが実際になにを体験したのか?なにに困っているのか?といった本質が見えなくなってしまいます。
保護者は「学校」や「授業」という大きな枠組みで考えがちですが、お子さんが直面しているのはもっと具体的なことです。「友だちができるかどうか」だったり「雑談で流行りの話についていけるかどうか」だったりします。あるいは、タブレットの使いかたや校舎のトイレの場所はどこか?など。そうそう、たくさんの教材の管理を困難に感じる子も少なくないでしょう。
子どもがつまずく可能性とは、そうした一つひとつの場面にあるのです。「これさえあれば大丈夫」ではなく、お子さんが実際に足で移動して、目で見て、会話をするときにどこに困難があるのか?と、そのような発想をした方がうまくいきます。
「学校どうだった?」よりも、何気ない雑談の扉を開けておこう
新学期になると「学校でなにがあった?」「友だちできた?」と、つい保護者は聞きたくなりますが、うまくいっていない場合、お子さんは答えにくくなります。詮索されているような気持ちになって口を閉ざしてしまうかもしれません。
大事なのは雑談を通じて親子の会話の扉が常に開いている状態を維持しておくことです。
話題はあえて学校の話ではない方がうまくいきます。毎日のゲームの話やアニメの話題は少しずつ移り変わりますから、会話の糸口になりやすいですね。そしてその会話のなかでのお子さんの話しかたのトーンや「やる気」の上がり下がりを感じとりながら、学校での様子を察するようにしてください。
「いつもよりも元気がないな」「人と絡みたくない感じだな」というような兆候はまったく関係のない雑談からでも察することができます。直接聞いて警戒されるよりもずっと正確にお子さんの状態をキャッチすることができます。
保護者の皆さんに伝えたい3つのこと
1つ目は、異変に気づけるようにしておくこと。毎日同じトーンで「おはよう」「いってらっしゃい」「おかえり」と話しかけてください。あえてこちらは変化を出さない。そうするとお子さんの揺らぎに気づきやすくなります。
2つ目は、話しかけやすい存在でいること。雑談の扉が開いていれば、お子さんは躊躇しながらも相談してくれる可能性が高くなります。学校の話を根掘り葉掘り聞くよりも、ゲームやアニメの話で笑い合える関係の方がよほど相談しやすいものです。
3つ目は少し難しいですが、どんな前提をもってお子さんと関わるかです。お子さんには困難があっても自分で対処する力があります。間違っても「親が力を貸さなくてはいけない子」だという前提で関わらないこと。
多くの保護者はまだ起きていないことを不安に思い、その不安を前提にお子さんと関わって、結果としてお子さんを不安にさせています。「顔色悪いわよ、大丈夫?」と聞けば、お子さんは自分の体調が悪いのだと思い込んでしまいます。親の不安で子どもを誘導しないように気をつけたいですね。
大人としてできる準備もある
それでも心配が尽きない保護者のかたは、大人としてできることも準備しておきましょう。特に大事なのは先生との信頼関係です。「担任に恵まれた」と言っている保護者を見ると、運の良さもあるかもしれませんが、それ以上にその保護者の関わりかたが誠実で、先生の力を引き出していたということが多いです。
お子さんが困ったときに先生が味方になってくれるかどうかは大きな助けとなりますから、その関係づくりは、保護者が大人としてできることのひとつと言えますね。
