学校に行かない理由は友だちだけじゃない 〜担任の先生と考えが合わないときにやってみるべきこと〜

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不登校の子どもが過去最多(※1)となり、ニュースなどで取り上げられることが増えています。不登校の理由として「友だち関係」がよく語られますが、私はそれ以上に「担任との関係」が大きな要因となるケースも少なくないことを感じています。
学校は、小さな社会です。そのなかで人間関係に悩み、心が疲れてしまうことは珍しいことではありません。学校の担任の先生とわが子がうまく言ってないと考えられる場合、保護者としてどのようにしていけばよいのでしょうか?

この記事のポイント

その1:保護者が原因探しに走らない

まず、子どもが「学校に行きたくない」と口にしたとき、保護者としては戸惑いや不安を覚えるのは当たり前です。大切なのは、すぐに「行きなさい」と促したり、「休んでいいよ」と簡単に決めたりせず、子どもの様子をよく見守ることです。
理由を知りたくなる気持ちは当然ですが、学校に行かない子にはさまざまな要因が複雑に絡み合っており、一言で説明できるものではありません。保護者が勝手に「あの子との関係かしら?」「学校の先生が威圧的だからいけないんだ」「我が子のああいう性格が悪いのかな」「保護者として育て方を間違えたかもしれない」など決めつけてはいけません。特に何も状況がわかっていないのに、自分や誰かを責めるのは、我が子のためにもなりません。焦らず、子どもの気持ちに耳を傾けることが何より大切なのです。

その2:保護者が自分の育て方のせいにしない

なかでも一番気を付けたいのが、「自分の育て方が悪かったのでは」と考えることです。不登校は保護者の責任ではありません。学校という環境のなかで起きることは、保護者だけで解決できるものではなく、さまざまな外的要因が影響しています。保護者が一緒に落ち込んでしまうと、子どもは「自分のせいで保護者を悲しませている」と感じ、余計に心を閉ざしてしまうこともあります。保護者自身が無理をしないことが大切です。心では笑えないかもですが、ぜひ鏡に向かって笑顔をつくってみてください。

その3:担任や学校のせいに決めつけない

私は約20年にわたり公立学校で教員をしてきました。もちろんクラスに学校に行かない子のお子さんがいることもありました。
若い頃、強引に登校を促した結果、子どもがさらに心を閉ざしてしまったこともあります。今でも「本当にこの対応でよかったのか」と思っています。あの頃は、学校に来させることが、その子にとってもいいことだと信じ切っていました。家まで行き、保護者と打ち合わせをして、引っ張って連れて行ったこともありました。あの当時は正義感しかありませんでしたが、今では反省しています。

不登校の原因は、ときに先生の指導スタイルが原因となるケースもあります。教師にもさまざまな考え方や正義があるなかで、すべての子どもにとって完璧な存在でいることは難しいものです。担任の先生と相性が合わないこともあるでしょう。
しかし、どんな担任でも「担任のせいだ」と一方的に決めつけてはいけません。担任には担任の正義があります。そこで戦いすぎても、我が子にとって何もいいことはありません。大事なことは、我が子が将来自分で生きていけるような大人になること。自分の正義が正しいことを証明することではないのです。だからこそ、学校と冷静に話し合いを進める姿勢を大切にしてほしいと思います。

その4:管理職を交えて対話する

とはいえ、担任と話が合わないということもあるでしょう。担任の言動や態度で我が子が不登校になっている可能性が高いのに、担任は全くそう思っていない。そんな時保護者としてイライラするのは当たり前のことです。
そんなときは、担任だけでなく、校長先生や教頭先生など管理職の先生にも同席してもらうことをおすすめします。担任は日々子どもと接しているからこそ、感情が入りやすいものです。第三者が加わることで、より客観的な視点で話し合いができ、建設的な方向へ進めることが期待できます。「校長先生に相談なんてしていいんですか?」と言われることがありますが、大丈夫です。ただ、教員も人なので、学校や担任のよいところもぜひ伝えてあげてください。

その5:「学校復帰」だけをゴールにしない

我が子が不登校になると、どうしても「また学校に戻れるのか」ということが気になります。しかし、何度もお伝えしますが本当に大切なことは、子どもが将来自分らしく生きていけることです。学校に通うことは大事な経験ではありますが、それがすべてではありません。学校に行かない子は「逃げ」でも「負け」でもなく、「今の自分にはこの環境が合わない」という子どもなりの意思表示でもあります。

その6:保護者として我が子と向き合う時間が作れたと思う

不登校は、保護者にとっても「子どもと向き合う時間」をもつきっかけになります。
事実は一つですが、解釈は無数にできます。不登校という事実のなか、「不登校になって困った」と解釈するのか、「この子と一緒にこれからを考える時間がもてた」ととらえるかはあなた次第です。そのなかで大切にしてほしい言葉があります。「あなたはあなたのままで素晴らしい」です。我が子はそのままで素晴らしいのです。保護者自身も無理をせず、必要に応じて支援団体や専門機関を頼ることも大切です。

その7:我が子はぜったい大丈夫と信じ切る

不登校という事実は、子どもにとっても保護者にとっても、新たな成長の機会です。「こうあるべき」という考え方に縛られず、子どもの声に耳を傾け、子どものペースを大切にしながら支え続けていきましょう。我が子は絶対大丈夫。自分に言い聞かせてください。最後に、わが子のことを一生懸命考えてこうやって勉強し続けているご自身を認めてあげてくださいね。

(※1)
出典:文部科学省 2024年1月16日に開かれた中教審初等中等教育文科会(第143回)の「不登校・いじめの状況と文部科学省における対応について」の資料

プロフィール


庄子寛之

元公立小学校指導教諭。大学院にて臨床心理学について学び、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。「先生の先生」として、ベネッセの最新データを使いながら教育委員会や学校向けに研修を行ったり、保護者や一般向けに子育て講演を行ったりしている。研修・講演は500回以上。講師として直接指導した教育関係者は1万5000人に及ぶ。全国の学校が休校していた2020年のコロナ禍に、これからの教育について考えるオンラインイベントを企画し、世界中の教育関係者を2000名以上集め、話題を呼ぶ。子ども教育のプロとして、NHK「おはよう日本」や朝日新聞、毎日新聞などのメディアなどにも取り上げられ、一躍有名になる。また、ラクロスの指導者としての顔も持ち、東京学芸大学女子ラクロス部監督、U-21女子日本代表監督、U-19女子日本代表監督を歴任。「教師」×「指導者」として、一貫して「自分で行動できる子ども・選手」の育成を実践している。著書に『自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』(ダイヤモンド社)など多数。

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