不登校でも模擬試験は必要?いまの学力を知って進路の可能性と選択肢を広げよう

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試験には独特の雰囲気や緊張感があるため不安を覚える子どもも多いですが、不登校の子どもにとってはさらに大きな心の負担となるものです。特に高校受験を意識する中学3年生にとっては、テストによって自分の現在地を知ることができる一方で、学校でテストを受けること自体に困難を伴うことが多いため保護者としては悩ましいところです。

テストや模擬試験は、子どもが進学を希望する際に「いまの学力」を知る目安になるため、幅広い選択肢を求めるうえでは有効です。子どもの気力が養われ、「この高校に行きたい」と志望したときにひとつの目安となるような活用方法を考えたいところです。

最近は、不登校の子どもでも教室以外の別室や自宅、オンラインなどでテストを受けられる工夫が進んでいます。学校と相談しながら、子どもに合った受験方法を選ぶことが大切です。この記事では、不登校から多様な進路を検討する際にひとつの目安とできる、テストの活用についてご紹介します。

この記事のポイント

まずは「いまの学力」を把握することから進路の選択肢が広がる

不登校の子どもたちにとって、テストは大きな不安やプレッシャーを感じやすいものです。教室での受験環境や周囲の視線、勉強の遅れなど、さまざまな要因が「テストが怖い」と感じさせてしまいます。そのため、テストを受けたくない、受ける自信がないという声も多く聞かれます。

不登校の子どもにとって、何よりも優先すべきは心の安寧です。精神的に疲れ切って休養が必要な時期には、受験や進路といった将来につながるテーマを考える余裕がなく、それ自体が避けたい話題であることも少なくありません。そうしたときには、無理にテストを受けさせる必要はありません。

一方で、「学校生活は苦手でも勉強や学ぶこと自体は好き」という子どもも一定数います。そうした場合には、高校進学の選択肢を広げる意味でも、自分の学力を知る機会として模擬試験を活用することは有効です。

いまの学力を知ることで、自分の得意・不得意を客観的に把握でき、どんな高校が合いそうか、どのような受験方法が選べるのかを考えるきっかけになります。現状を把握することは、これからの学びや進路を前向きに描いていくための第一歩となります。

学校に行かなくても受けられる模擬試験の方法

その前に、子どものテストへの不安をなるべく緩和するために、受験環境を整えることから考えてみます。

学校の定期テストもいまでは、別室受験や自宅、オンラインで受けるなどの配慮をしてくれることが多くなっています。先生と相談し、子どもの状態に合う方法を一緒に考えていきましょう。

また、多くの塾や予備校では外部生でも模擬試験が受けられるよう門戸を開いており、不登校の子どもでも受けやすいように自宅受験や外部会場受験といった方法があるので問い合わせてみましょう。

通信教育サービスを提供している会社の模擬試験は、自宅で受験できる形式が多いので、普段の生活空間のなかで安心して臨むことができます。不登校の子どもが安心できる環境で自分の力を試すことができる試みが広がっていますし、申し込み方法や受験の流れも簡単になってきているので、保護者の方もぜひ情報を集めてみてください。

定期テスト、模擬試験。それぞれ異なる目的と役割を理解しよう

さて、定期テストと模擬試験にはそれぞれ異なる役割があります。

定期テストの目的と役割

定期テストは、学校で学んだ内容を一定期間ごとに確認するために行われるテストです。中間テストや期末テストなどが代表的で、授業で扱った範囲から出題されます。あらかじめ出題範囲が示されるため復習しやすく、学校に通っている生徒にとっては日々の学習の到達度を知る良い機会となります。

ただし、不登校の生徒にとっては「定期テストを受けられない」ことが多く、そこを無理に気にする必要はありません。むしろ、体調や気持ちが整わない時期に無理して受けることでさらに負担が大きくなる場合もあります。

大切なのは、定期テストに出られなかったからといって学びの可能性が閉ざされるわけではないということです。今の段階では結果よりも、少しずつでも学びを取り戻すきっかけをつかむことの方が意味があります。もし「自分の理解度を知りたい」と思えたときには、市販の問題集やオンライン教材など、学校外でも確認できる方法はたくさんあります。

模擬試験の目的と役割

模擬試験(模試)は、入試本番に近い形式やレベルで出題されるテストで、総合的な学力を測ることを目的としています。模試では、学校の教科書だけでなく幅広い知識が問われ、全国規模で自分の学力がどの位置にあるかを知ることができます。その結果は、志望校への合格可能性を判断する際の大切な目安となります。定期テストは口頭も含めて、学校の授業で習ったことからの出題が主になりますが、模擬試験はそのような特徴的な出題は少ないため、実力をシンプルに測れるテストとなります。

さまざまな方向から進路を具体的にイメージしてみよう

子どもが進路を具体的に考えられるようになるタイミングは、本当に人それぞれです。そのときが来たら、子どもが自分に合った高校を選べるように、少しずつ選択肢や情報を広げておくと安心につながります。学校見学や体験授業を通して「ここなら自分に合いそうだ」と感じられる体験は、子どもの気持ちを前向きにしてくれることもあります。

また、定期テストや模擬試験を通して学力の現在地を知ることも進路を考える上で参考になりますが、何より大切なのは子どもの心の状態と意思です。子どもが「いまの自分の力を知ってみたい」と思えたときに、自宅やオンラインなど無理のない形で受けられるように寄り添ってあげられるとよいでしょう。

プロフィール


上木原 孝伸

教育企業で講師として17年間教壇に立ち、教科指導や教室運営に携わった後、通信制高校の開校準備から参画、同校の副校長を4年間務める。その後、発達に特性があるお子さまとそのご家庭にマッチする環境のコンサルティングサービスの責任者を務めた後、ベネッセコーポレーションに入社。不登校ライフナビの監修等を務める。

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