不登校のきっかけ、小学生は「感覚過敏」中学生は「体調の不安定」― 寄り添う支援が大切

不登校児童生徒数が年々増加し、文部科学省の最新調査でも過去最多を更新するなか、先日「不登校ライフナビ」が小中学生の保護者2,240名を対象に行った「不登校・フリースクールに関する意識調査(※1)」でも、それを裏付けるような結果となりました。「不登校ライフナビ」では数回に分けて、意識調査から見える「不登校」という現象の背景や向き合い方について解説していきます。

この記事のポイント

    約4割が「不登校・行き渋り経験がある」。年齢ときっかけにおける関係性

    この意識調査は、「不登校ライフナビ」に登録する小中学生の保護者、計2,240名を対象に行いました。まず、子どもの学校への登校状況で当てはまるものを尋ねた質問では、全体の約4割が「現在もしくは過去に不登校経験がある※2」「行き渋りなどの兆候がある」との回答をしており、実に半数に迫る勢いとなっているのです。

    このうち、「不登校になったきっかけ」について尋ねた質問の回答からは、年齢と不登校のきっかけにおける関係性が浮きぼりになりました。

    小学生の最多回答は「感覚の過敏さや集中のしにくさなど、発達特性による不安や疲れがあった」というものに対して、中学生では「朝起きるのがつらい、体調が安定しなかった」との回答がもっとも多くなりました。2位以下は図のとおりです。

    多様な子どもに対応した学ぶ環境の必要性 
    ー 小学生の不登校にある背景

    音や光の刺激に敏感な特性は近年HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とも呼ばれます。なおHSPは医学的な診断名ではなく、心理学的に提唱された生まれ持った感受性の傾向に関する概念です。こうした特性を持つ子どもにとって、自由に席を離れて避難することのできない教室生活は強い疲労を伴うことがあります。四方から押し寄せるクラスメイトの大きな声や、視界のノイズとなるようなチカチカした光の渦などにさらされることで、感覚過敏な子どもたちは疲弊してしまいます。

    また、「周りの空気が読めないこと」や「建前がわからず文字どおりに受け取ってしまう」ことで、友だちと関係を築くことが苦手な子どもたちもいます。こうした発達に特性のある子や感覚に過敏な子どもたちなど、さまざまな個性や特性を持った子どもたちがいるなかで、小学校で求められるのは「みんな一緒に同じく行動すること」。学ぶ子どもたちは多様化している現状に対して、非常に一律的な正解が重要視される環境があります。

    小学生の不登校へのきっかけにおける2位以下は、友だちや先生との関係をうまくつくることができずに苦しんでいる姿が想像できます。こうした子どもたちにとって、学校外の安心できる居場所をつくることは、とても大切なこととなっています。

    思春期の心と身体に起きる影響。「起立性調節障害」への理解 
    ー 中学生の不登校にある背景

    次に、中学生での最多だったのは、小学生で5位だった「朝起きるのがつらい、体調が安定しなかった」という回答であることにも注目です。

    思春期に入った10代の子どもたちは、ホルモンバランスや自律神経が崩れやすく、その崩れは、朝起きることが困難になる「起立性調節障害」の原因にも大きく関わっています。起立性調節障害は、不登校生徒の約3~4割が該当するとも言われるほど関係の深い障害で、朝から午前中に特に症状が大きく出ることが特徴です。

    起立性調節障害は、起立時に身体や脳への血流が低下するため、立ち眩みや頭痛、めまい、全身倦怠感が強く出ることで、朝なかなか起きることができない病気です。一方で夜になると元気になるため、「なまけている」「さぼっている」と誤解を受けるケースが多く、だんだんと不登校になるきっかけとなっています。


    最近は起立性調節障害について少しずつ理解が進んできましたが、学校や担任の先生へも診断について共有することで、時間をずらした登校などの配慮や連携も可能です。

    小中学生共に2番目に多い「クラスメイトとの人間関係がうまくいかなかった」というきっかけについても、「クラスの友だちとうまくなじめなくても、部活では友だちとうまくやっている」というケースも少なくないので、子どもが安心して自分らしくいられるスペースを持てるようにすることは、やはり大切です。

    サインを見つけて、学校や自治体のサポートを活用しよう

    ここまで小学生、中学生別に「不登校になったきっかけ」から背景で起きている可能性の高い事象をまとめてみました。冒頭に示した約4割という少なくない割合で、不登校経験や兆しを持つ子どもたちがいるという事実に着目し、その背景として考えられるきっかけへの支援や対応方法を考えてみましょう。

    子どもたちは不登校になったときには、すでに限界を迎えていることが多いものです。そこで、行き渋るようになった訴えを否定せず、朝の様子や登校前後の状態を簡単に記録することは適切な支援を受ける際に役立ちます。

    また、眠れているか、食べられているか、排泄はあるか、といった基本的な点に着目して子どもの変化を見逃さないようにしましょう。

    子どもの状況によっては、日々の状態の記録を担任の先生に相談し、部分登校・時差登校など具体的な配慮を依頼しましょう。朝起きられない・めまい等が続く場合は早めに小児科等で相談し、必要なら医師の所見を学校と共有します。
    学校以外の居場所となるフリースクールやオンライン学習等は、体験利用からトライしてみて、子どもとの相性を確かめてから活用するとよいでしょう。

    学校との連携方法

    ● 記録を添えて短いメールや面談で現状を報告する。
    ● 部分登校・時差登校・在宅学習など具体案を提示し、短期の目標を決める。
    ● スクールカウンセラーや養護教諭と情報共有し、医師の所見があれば提出する。

    自治体で受けられる支援情報

    ● まず自治体の子ども・家庭支援窓口や教育委員会で利用可能な補助や相談窓口を確認する。
    ● フリースクール利用料補助や相談支援、スクールカウンセリングの案内がある場合は申請方法を教えてもらう。

    支援内容は自治体ごとに異なるため、窓口で最新の手続きと必要書類を確認してください。

    子どもの不登校の背景にある課題を知り、適切な支援につながることは大切です。家庭だけでなく学校や自治体の支援をうまく活用していきましょう。
     

    (※1)調査概要:

    ◇調査対象:
    ベネッセの保護者向けアプリ「まなびの手帳」およびベネッセ教育情報サイト「不登校ライフナビ」に登録されている、小学1年生~中学3年生の保護者
    ◇主要な調査項目:
    お子さまの学年/お子さまの登校状況/不登校の要因/フリースクールの認知・検討・利用状況/フリースクールを利用した際の出席扱いについて/フリースクールに期待すること/フリースクールを利用する際に国や自治体に支援してほしいこと
    ◇回答数:不登校ライフナビに登録されている小中学生の保護者2,240名
    ◇期間:2025年11月5日~11日
    ◇方法:インターネットでのアンケート調査

    (※2)「過去に不登校状態になったことがあるが今は通えている」「現在学校に通えていない(不登校状態にある)」を合わせたもの
    この設問に限り、回答者を「まなびの手帳」に登録されている小中学生の保護者に絞っています。

    プロフィール


    上木原 孝伸

    教育企業で講師として17年間教壇に立ち、教科指導や教室運営に携わった後、通信制高校の開校準備から参画、同校の副校長を4年間務める。その後、発達に特性があるお子さまとそのご家庭にマッチする環境のコンサルティングサービスの責任者を務めた後、ベネッセコーポレーションに入社。不登校ライフナビの監修等を務める。

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