毎日繰り返すあの時間。9歳の我が子の「仕上げ磨き」が、母にくれたもの

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子育ては、思いも寄らないことの連続。子どもに向き合う保護者の数だけ、多彩なストーリーがあります。誰かの経験が、別の誰かの背中をそっと押すこともあるかもしれません。

今回は、9歳のお子さまへの「仕上げ磨き」(子どもが歯磨きをしたあとに、磨き残しがないか大人がケアすること)を通じた気付きについて中村彩理さん(ペンネーム)のエピソードを、ご本人がつづったnoteからご紹介します。

※以下、ご本人承諾のうえ、投稿内容をもとにご紹介いたします。

※写真はイメージです。

この記事のポイント

仕上げ磨きはいつまで?

二人の子どもを持つ中村さんは、乳幼児歯科健診での歯科医の言葉に衝撃を覚えました。

「仕上げ磨きは10歳くらいまでしてあげてくださいね。できれば12歳まで。大人の歯に生え変わるくらいまではね」

  • (中村さんの投稿より *一部編集)

10歳といえば、もう自分一人で歯磨きができる時期。そんなに大きくなってまで、親の仕上げ磨きが求められるとは思いも寄らなかったという中村さん。それもそのはず。中村さん自身は、物心付いたころから一人で歯磨きをしており、幼いころに親がしてくれていたであろう仕上げ磨きの記憶は残っていません。

「子どもの立場で想像するだけで、照れくさいような気がした」

  • (中村さんの投稿より *一部編集)

親のひざに頭を預けて、大きく口を開ける。その無防備さが、思春期に入るか入らないかという時期の子どもにとっても、その親にとっても、決まりの悪さを感じるのではないかと思ったといいます。

仕上げ磨きで感じる成長といとおしさ

驚きつつも、歯科医の助言を守り、お子さまへの仕上げ磨きを続けているという中村さん。9歳の上のお子さまは、矯正治療を行っていることもあり、仕上げ磨きは不可欠だといいます。日々繰り返される仕上げ磨きは、ルーティンとなっているからこそ、時の流れを感じるものとなっているんだとか。

かつては小さな頭がひざにのり、必死に口を開けていた子ども。
今ではひざにのった頭はずしりと重い。
小さなつぶつぶの乳歯が生えるのみであったのが、現在は奥歯を除いては乳歯も抜けて、立派な歯が生えている。

  • (中村さんの投稿より *一部編集)

頭の重さ。口を開けた表情。生えそろった歯。伸びる足の長さ。仕上げ磨きで上から子どもをのぞきこむと、大きくなった我が子のディテールの成長まで感じることができます。

時の流れを感じて切なくもなるが、そんなに大きくなってもまだ母のひざに頭をあずけて口を開けている姿はかわいらしく愛おしい。

  • (中村さんの投稿より *一部編集)

いつか終わる日がくるからこそ

※写真はイメージです。

親としては面倒に感じることもある仕上げ磨きも、実はとてもよい習慣なのではないかと感じるようになったという中村さん。虫歯予防の観点はもちろん、スキンシップで親子の心をそっと紡いでくれることを実感するんだとか。

たとえば、夜寝る前の親子げんか。寝る時間になっても、タブレットで動画を見ることをやめられない子どもに「いい加減にして」と注意する母。タブレットを取り上げられて、かんしゃくを起こす子ども。どれだけ母親がイライラしていても、どれだけ子どもがすねて泣きわめこうとも、寝る前には仕上げ磨きが待っています。

お互いイライラしたり泣いたりしながらも、しぶしぶでも膝に頭を乗せて仕上げ磨きをすることで必然的にスキンシップが図られる。

そして仲直りとまではいかなくとも、わだかまりを残したままその日を終えるのではなく、なんとなく肌が触れ合い、なんとなく必要な会話をして、仕切り直しができるのだ。

  • (中村さんの投稿より *一部編集)

互いに向かい合っている時にはバトルになっていたものの、触れ合っているけれど向き合っていないという絶妙な距離感が、荒ぶっていた心を静めるのかもしれません。さっきまではあんなに腹を立てていた我が子なのに、ひざの上で口を大きく開けている姿を見たら、その無防備なかわいさに「ま、いっか」とヒートアップしていた気持ちも落ち着くのでしょう。

険悪になっていた親子の空気が改善とまではいかなくとも、ノーサイドとなり仕切り直される。仕上げ磨きには、そんな効果もあるのかもしれません。でも、その期間も有限です。

いつまでこれが続くのか、仕上げ磨きが終わる日もそう遠くはないかもしれない。
それまではしっかりとその時間を噛みしめ楽しみたいと思う。

大切な歯と、触れ合う時間のために。

  • (中村さんの投稿より *一部編集)

いつか終わりがくるものだからこそ、かけがえのない時間とも思えるもの。終わりがきたあとに、その尊さを痛感することもあるでしょう。時におっくうになりながらも、大切な親子の触れ合いの時間をかみしめていけるといいですね。

●ご紹介した記事
「仕上げ磨きで寝る前のふれあいを」
https://note.com/good_hosta555/n/n26b0e4e52188

●元記事の著者プロフィール

中村 彩理

社会福祉士・精神保健福祉士・公認心理師・ライター。 15年間ソーシャルワーカーとして働いています。読書や旅行レポート、福祉制度や生きづらさ、子育てや日常の様々な気付きなどを発信しています。

プロフィール



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