相川七瀬「親が願う私と、私がなりたい私は違う」自らの葛藤から導き出した、距離感を保つ子育て
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45歳で國學院大学入学、49歳で大学院進学。
昔から好奇心の塊で、プロデューサーの織田哲郎氏からは「お前を老けさせないのはその好奇心だと思うよ」とのお墨付きをもらう、歌手の相川七瀬さん。
3人のお子さまから「姉弟のように接されている」と話し、自分自身に敏感に生きる相川さんに、その秘けつと「子どもに見せたい背中」について聞きました。
「親が望む私と、私がなりたい私は違う」
ーー相川さんは、仕事に家庭に学びにと、忙しく過ごされていますよね。親として、どう自分自身の人生に意識を向けているのでしょうか?
仕事や学びに関しては、忙しくても時間に支配されないように意識すること、子育てに関しては、子どもは子どもの人格や人生があって自分とは違う、という距離感を意識していますね。
ーーそれぞれ、詳しくお聞きしたいです。
私は、自分のことを、時間への欲求が人一倍強いタイプだと思っているんです。
自分で時間を支配したい。もちろん仕事もあるし自分以外に優先すべきことはたくさんあって、「今は忙しいから落ち着いた時に」と後回しにしてしまいそうな時もあります。
でも、「この時間までは仕事が入っているけれど、ここに余白の時間があるから何をしようかな?」というふうに、常に考えている気がしますね。そこに入るのは「あの本を読みたいな」くらいの些細なことなんですけれど、そういう湧き出る欲求を諦めてしまったら、誰のための人生なんだろう?と思ってしまって。
ーー自分のことをつい後回しにしてしまいがちな時に、思い出したい言葉です。
子どもとの距離感についても、子どもを育てるのは自分の喜びであり、もちろん自分の時間を投げ打ってきた部分はありますが、子どもを自分が思うようにマネジメントできるものではない、心まで統治できるものではないと考えています。
それは、自分が子どもだった時に親との関係性の中で「親が望む私と、私がなりたい私は違う」とずっと思っていたことがきっかけなんですよね。
ーーすると、お子さまとはどのように接してこられたのですか?
親としてどうしてあげたいとかではなく、子どもの人生は本人次第だから、本人のモチベーションが上がっていることを潰さないことが私の仕事だったのかなと思います。
母親が否定しない、その強さは
ーー可能性を広げる、ではなく、潰さない、なのですね。
心配心から、子どもが苦手そうなことをしていると「それはあなたには、向いていないんじゃないかな〜」って感じたこともあります。
ーー同じようなことを感じた経験のある保護者のかたも多そうですね。
だけど、向いていないってあくまで私の主観じゃないですか。私だって歌手を目指した時に周りから「無理無理! なれっこないよ!」と言われたけれど、それでも諦められなかったから今ここにいるわけで。
振り返ってみれば、私が歌が好きということを、母親は1回も否定しなかったんですよね。だから、いくら他人に向いていないと言われても、自分はネガティブな意識を持たなかった。だから私も、子どもたちが続けたいことは否定しないで見守るようにしているんです。
そういうふうに、子どもたち一人ひとりのポテンシャルに目を向けていると、じゃあ私のポテンシャルは? と目が向いて。
ーー相川さんご自身のポテンシャル。
はい。私自身の人生は、子どもたちのために犠牲にするものじゃない。誰かに「犠牲にしてくれ」と言われたわけでもない。だったら自分の好きなことをちゃんと集めて暮らしたいなっていう欲求が40代過ぎから生まれてきました。
自分のフィルターを、他の人にかけない
ーーお話を伺っていると、相川さんは親子という近い関係性の中で、お互いを尊重しあっているように感じます。
親ではあるのだけれど、基本的にはきょうだいのような目線で向き合っていますね。私が学生になったのも大きいと思うけれど、同じ高さから物事を一緒に見ている感じ。そうすると彼らの悩みをキャッチできるし、親として接するよりは歳の離れたお姉さんみたいなポジションで、常に彼らに起きている変化を感じたいと思っています。
一番気を付けているのは、価値観を強要しないこと。たとえば、何か起きた時に私は怖いと思うけれど、子どもたちは思わないかもしれない。私が「怖い」って言ったら子どもたちにも「怖いフィルター」がかかってしまう気がして、それはフラットじゃないなって。
基本的には、子どもと私は人格が違うと認識して、子どもたちがどういう感性を持っているかを一歩外側から見ているスタンスですね。
ーー 一貫して、本人の可能性を潰さないことにこだわるのですね。
私の子育ては「体験をたくさんあげることだった」の一言に尽きます。田んぼに入ったり畑で野菜を作ったり。初めてのものを見せるとか、行ったことがないところに行くとか、大人になったらやらないかもしれないことを一緒にやりました。
これが正解かはわからないけれど、そこから自分の興味がある分野が見つかればと思って、体験をあげることが私の子育てだったように思います。
ーーすると、ご自身の生き方も、「こういう人生もある」という体験の一つなのでしょうか。
モデルケースの一つかもしれないですね。子どもたちがどう理解しているかは私にはわからないけれど、45歳で大学に入ったことは、何歳でも大学に行けるとかセカンドキャリアがどうという話ではなくて、「始めたい時に自分が始めたいことをいつでも始められる、それが40代であっても」ということ。
その意味がわかるのは、彼らが同じ年齢くらいになった時です。「お母さん、この年齢から行ってたんだ!?」って思う時が何十年か先にあって、その時に彼らの答え合わせが始まるだろうと思いますね。それはすなわち、今何かにつまずいても大丈夫ということだなって思っています。
(聞き手/文:飯室佐世子 写真:テラケイコ)
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