脳の成長の原動力とは?保護者に何ができる?

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子どもの脳を鍛えたい、成長させたいと願う保護者のかたは多いことでしょう。
何をすれば子どもの「脳の成長」に役立つのでしょうか。医師であり、東北大学の加齢医学研究所で「脳」について研究している瀧靖之先生にお話を伺いました。

この記事のポイント

「知的好奇心」が記憶力を高める?

脳の発達においては、「知的好奇心」が重要だと考えます。
なぜ知的好奇心かというと、知的好奇心が高いと、いろいろなことに興味を持ち、ポジティブな感情を生みやすく、ポジティブな感情というのは記憶力を高めることに効果があるといわれているからです。これは脳の中で好き・嫌いなどの感情をつかさどる「扁桃体(へんとうたい)」と、そのすぐそばにある記憶の倉庫番である「海馬(かいば)」が密接に機能連絡をしているからではないかと考えられています。
好きなことや興味があることは覚えられるけれど、イヤイヤ勉強しても、なかなか覚えられない……保護者のかたも一度はそういった経験があるのではないでしょうか。それは「覚えられない」というより、イヤイヤ取り組んでいるので、海馬が「覚えておく必要はない」と判断しているからなのかもしれません。
反対に考えると、イヤイヤではなく、「知的好奇心」を持って、楽しく取り組めば、「海馬」がどんどん働くのではないでしょうか。好きな電車の名前やキャラクターの種類であれば、たくさんあってもどんどん覚えていくといったことが起きるのは、子どもが熱中しているからでしょう。

この、「熱中体験」が、脳の発達においては大事だと考えます。

熱中体験が、脳の成長の原動力に

私が『東大脳の育て方』(主婦の友社)という本を監修した時に、東大生によく見られた共通点として、音楽やスポーツ、ゲームなどで、並外れた「熱中体験」をしているということがわかりました。熱中体験するものとしては、勉強でもいいですが、自分の好きな趣味など、勉強以外で構いません。趣味活動は、基本的に人にあれこれ言われてやるものではなく、「自分から夢中になって取り組む」ことが多く、熱中しやすい傾向にあります。たとえば、「昆虫採集が面白いから熱中する」「サッカーが楽しいから熱中する」といった状態の時に、熱中すればするほど、もっと昆虫のことが知りたくなったり、もっとサッカーが上手になるためにはどうすればよいかと自分で考えるようになったりします。この時の「知的好奇心」や「自己主体性」が、脳の成長の原動力になると考えられており、知的好奇心や自己主体性が高ければ高いほど、勉強の能力も高まるという報告もあります。

親が一緒にやると、より効果的!?

私たちの脳には「ミラーニューロン」と呼ばれる、「まねする・模倣する」機能が備わっていると考えられています。たとえば、赤ちゃんがそばにいる大人の表情や動作をまねするといったことから始まり、大人になっても他者や見本を「見て学ぶ」機会はよくあるでしょう。
この模倣の力は、子どもが勉強したり、何かに熱中したりする時にも使えます。一番身近で、一番一緒にいる時間が長いであろう保護者が、子どもの模倣の相手として最適だと思います。ですから、子どもに勉強をさせたいのであれば、「保護者が一緒に勉強すること」が一番です。親が、「勉強しなさい」「これやりなさい」と一方的に言うだけで、スマホを触ったり、他のことをしていたりするのであれば、子どもが「勉強したくない」と思うのも、無理はありません。
だから模倣の力をめいっぱい使いながら、保護者も一緒に楽しんで勉強することをおすすめします。

私も息子と算数の問題集を「ヨーイドン!」で、競争してやっています。
保護者に時間がなく、大変なのもよくわかります。でも勉強は時として孤独なもの。子どもひとりでやるのはなかなか大変なので、模倣の力とアタッチメント(愛着形成)を生かし、親子で一緒にやってはどうでしょうか。
また、「一緒にやる」ことで、それが「親子のコミュニケーション」になるよさもあります。一緒に勉強していれば、「この問題はどうやって解くんだろうね」「どうやって解いたらそうなった?」といった会話が自然と入ってきます。
同じことを一緒にやることで、親子の会話が増え、勉強もコミュニケーションツールになるのです。私たちの脳トレにもなります(笑)。

脳は何歳になっても成長できる!
大人でも成長を「諦めないこと」

脳の可塑性※(※外部からの刺激に対して変化する力)は素晴らしいです。大人の脳だって、刺激を与え続ければ、成長することができます。私も再受験して医学部に入りましたし、何歳からでも「できる」のです。
「できない」は思い込みです。親自身が「自分は知的好奇心が低いからムリ」「算数は苦手だから、一緒にはできない」などと考えずに、とりあえず親もどんどん調べたり、一緒にやってみたりするといいと思います。親が一生懸命やっている姿を、子どもは見ています。

結論としては、子どもの脳を育てるには保護者のかたの関わりが重要だと思います。
単純接触効果を増やすために外の世界へと連れ出すのも保護者ですし、一緒に勉強するのも保護者。子どもに勉強の習慣を付けさせたい、知的好奇心を伸ばしたいなどとお考えであれば、「親の楽しい努力」が大事なのではないでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

楽しいことや夢中になれる「熱中体験」が、知的好奇心や自己主体性を育み、脳を育てるうえで重要なことがわかりました。また、子どもに勉強させたいと思うなら、親が「一緒に」なってやることで、習慣化させることができ、親子の会話も増えることが期待できそうです。

プロフィール


瀧靖之

東北大学 加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 教授
医師。医学博士。東北大学理学部の生物学科で、ヒトの血液の赤血球について研究している中で、研究だけでなく「世の中にもっと役立ちたい」と思い、受験勉強をし直して、理学部を卒業後、同大学医学部に再入学。卒業後、東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人に上る。

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