楽しさのヒントは身近なところに!暮らしのタネをまく 365教室【直島アート便り】
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小豆島の福田地区にある福武ハウスは、廃校となった旧福田小学校を地域の新たな交流の拠点として再生し、アートや食、地域資源を活かした体験を通して、人と土地、人と人をつなぐ活動を展開しています。地域固有の文化を収集・保存し、体験する「福武ハウス風土ラボラトリ—」では、暮らしに紐づくさまざまなテーマを切り口に、地域の新たな魅力を伝えるプログラムを実施しています。
今回は、福武ハウス風土ラボラトリ—の参加型プログラム「暮らしのタネをまく 365(さんろくご)教室」をご紹介します。
「福武ハウス風土ラボラトリー」とは
福武ハウス風土ラボラトリ—(通称:ふふラボ)は、地域に根付く文化や暮らしに焦点を当て、その土地の新たな魅力を創り出すプロジェクトとして、2020年に始まりました。
このプロジェクトは、「食」「祭り」「踊り」などさまざまなテーマにおける地域固有の文化を収集・保存、体験することで、参加者が自らを起点として、自分にとって豊かだと思える生き方をつくるための材料を発見し、「今日を生きること」の複雑さ、鮮やかさ、楽しさを探究する機会を提供する試みです。
これまで、福田地区の地域資源、固有の文化をリサーチすべく、島内にてフィールドワークをしたり、お年寄りのかたにインタビューをしてきました。
その中で出会った、島の自然や食材、集落で暮らす住民の記憶の物語など日々の生活の中にあふれる数々の豊かさに注目し、福武ハウス風土ラボラトリーでは新たに参加型のプログラムをスタートします。
「暮らしのタネをまく 365教室」
「暮らしのタネをまく 365教室」では、小豆島の地域資源と先人の知恵を活用しながら、暮らしに関わるさまざまなモノやコトを「つくる」ことを通して、身の回りにある自然やそこから生まれる多様な価値に気付いたり、共に「つくる」ことで繋がる人と人とのコミュニティの輪を広げたりしながら、自分なりに豊かに暮らしていくヒントを見つけ、これからを生きる力を育んでいきます。
4月14日から始まる瀬戸内国際芸術祭2022の会期中、365教室では小豆島の食材を使った保存食作り、間伐材を活用したグリーンウッドワーク、鋳金や染色など、島の資源を活用したモノづくりワークショップを開催します。参加者は、暮らしの中にある身近な素材を使ったものづくり体験を通して、どのような暮らしのヒントを見つけられるのでしょうか。
365教室:コウイカの骨で作る鋳金ワークショップ
瀬戸内国際芸術祭2022に先立ち、2022年2月に福武ハウスにて「コウイカの骨で作る鋳金ワークショップ」が行われました。
海産資源が豊かな小豆島では、海辺を歩いていると大小さまざまなコウイカの骨を見つけることができます。
今回は、小豆島在住のアーティスト・柴田早穂さんを講師としてお迎えし、コウイカの骨を削って作った型に錫(すず)を流し込み、オリジナルのチャームを作るワークショップを実施しました。
小豆島の海辺で採れたコウイカの骨
参加者はまず、好きな形のコウイカの骨を選び、表面が平らになるまで削ります。
「イカの骨ってそんなに簡単に削れるの?」「本当に鋳型になるの!?」と参加者からは驚きの声が上がりました。
次に、滑らかになった表面にそれぞれ好きなデザインを描きます。
「動物にしようかな」「お昼に食べたエビが美味しかったから、エビもいいかも」「骨の模様を生かしたデザインにしたいな」など、はじめての参加者同士、制作をしながら会話も弾みます。
デザインができたら、小さな金属のヘラを使って骨を削り、鋳型を作っていきます。
骨を削る作業は大人も子どもも真剣そのもの。完成品をイメージしながら、ああでもない、こうでもないと試行錯誤を重ねます。
鋳型が完成したら、木材に固定し、熱して溶けた錫を流し込みます。
お玉で錫をすくってみると意外と重かったり、上手く鋳型が彫れていないと錫が流れていかなかったり、実際に手を動かす中で気付いたことを他の参加者とシェアするなど、お互いに協力しながら作品を手掛けていました。
柴田さんと一緒に、骨の鋳型に錫を流し込みます
錫が固まるのを待ち、骨の鋳型から外せば完成です。自分で彫った形に、コウイカの骨の有機的な模様が加わり、個性溢れる作品ができ上がりました。
参加者からは、「骨の模様に注目したことはなかった」「その辺に落ちているもので制作ができるとは思わなかった」「何かを作ることにここまで集中したのは久しぶり」などワークショップに取り組む中で気付いた、島で採れた素材そのものの持つ魅力や、純粋に「つくる」という行為そのものを楽しんだという声を多くいただきました。
今回の365教室では、「つくる」ことに集中する時間があったり、他の参加者とおしゃべりしながら手を動かす時間があったり、日常の何気ない風景を構成する自然を身近に感じながら、ものづくりを通して生まれる時間を豊かに共有し合う場となっていたのではないでしょうか。
自分で暮らしをつくるヒント
365教室では、「つくる」ことを通して身の周りの自然や暮らしに目を向け、人と人、人と土地との繋がりを築くきっかけを創り出します。
アートや食、地域固有の文化をテーマに人や土地との繋がりを育む福武ハウスを拠点に、土地の知恵や文化について手を動かしながら学び、共に参加した人と体験をシェアすることで生まれる新たなコミュニティや、身近な地域資源を活用していくうちに出合える新しい価値の中に、これからの暮らしをつくるヒントを見つけることができるかもしれません。
4月14日から始まる瀬戸内国際芸術祭2022では、福武ハウス風土ラボラトリー「暮らしのタネをまく 365教室」にて、小豆島に広がる多様な素材を見て、触って、「つくる」ことを楽しみながら、暮らしを考える時間を体験してみてはいかがでしょうか。
福武ハウスの最新の情報はこちらからご確認ください。
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