子どもの自己肯定感と気候変動の関係とは?環境活動家の谷口たかひささんに聞いてみた

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「子どもはみんな、自己肯定感を持っています」
全都道府県で700回以上、気候変動のお話会を続けてきた谷口たかひささん。このお話会では「気候変動」の他、「自己肯定感」についても伝えています。

自己肯定感とは、そのままの自分を認められる感覚。自己肯定感があると、チャレンジする心をもち、失敗しても前向きに考えられるといわれています。講演で世界中を訪れる谷口さんに、日本の子どもたちが自己肯定感を高めるにはどうしたらいいかを伺いました。また、気候変動と自己肯定感について話すのはなぜでしょうか。

この記事のポイント

自己肯定感が高い人が増えると、より良い未来に近づける

──「気候変動」と「自己肯定感」。意外な組み合わせですね。

谷口たかひさ(以下谷口):意外と言われることが多いんですが、実は、その二つはつながっているんです。

──どういうことでしょう。

谷口:何か問題にぶつかったとき、自己肯定感が低いと「自分なんかがどうにかできるはずがない……」と思ってしまう傾向があるんです。でも、自己肯定感が高いと「自分にできることがあるかも」「やってみよう」と思えます。そして今、地球には「気候変動」という大きな課題がありますよね。

──なるほど。社会問題に対して前向きに取り組む人が増える。

谷口:はい。自己肯定感が高い人が増えて社会全体の自己肯定感の総量が上がると、未来がより良くなるかもしれません。なので、その話をしています。

日本の子どもたちは自己肯定感が低い?

──子どもの自己肯定感を伸ばしたいと考えている保護者のかたも多いです。谷口さんはドイツで環境活動をされていました。日本とドイツで、子どもたちのちがいを感じることはありますか?

谷口:日本の子どもたちは、やりたいことがあっても「周りに何か言われるかも」「怒られるんじゃないか」とブレーキをかけていると感じることが多いです。一方ドイツの子どもたちは、余計なブレーキはかけずにバンバンやる印象。子ども自身がちがうわけではなく、環境によるものだと思います。

──なぜそうなってしまうのでしょう。

谷口:日本ではテストの点数で成績が決まることが多く、「まちがえたくない」意識が強くなりやすいと思います。ドイツでは成績の6割くらいは議論の中で決まると聞きました。授業中にどれだけ自分の意見を表現できて、また人の意見を尊重できたかを先生がみるそうです。

──ディベート(テーマについて賛成・反対に分かれて議論すること)の授業ですよね。いろいろな考え方があると意識できるし、実生活で役に立ちそうです。

谷口:ディベートは個人でも、社会の一員としても役に立ちますね。話し合いで解決できるのが人間のすごいところ。対話の反対は戦争かもしれません。だから対話はとても重要だと思っています。

──自己肯定感があれば、自分と相手と同意見でなくても対話ができますね。日本の子どもたちは自己肯定感が低いと思いますか?

谷口:日本の若者の自己肯定感が低いという調査結果もありますし、実際に保護者のかたから「子どもの自己肯定感について悩んでいる」と聞くことも多いですね。

強制されなければ、子どもは勉強が好きになる

──親として子どもの自己肯定感を伸ばすため否定的な言葉かけはしたくないと思っても、つい口うるさくなってしまうことがあります。谷口さん自身はどんなふうに育てられたのでしょう?

谷口:「そのままでいい」とはよく言われていましたね。もちろん命の危険があるとか嘘をつく、人を傷つけるようなことは怒られましたが、それ以外で怒られたことはないです。「こうするべき」「勉強しろ」みたいなことも言われたことはないですね。

──「勉強しろ」と言われずに、勉強はしました?

谷口:めちゃめちゃ勉強しましたね。自分の好きに生きるために学力は必要だと思ったし、勉強が好きだったので。勉強が嫌いな子もいますけれど、実は「勉強しろ」と強制されるから嫌いになる子が大半だと思います。勉強ってけっこう面白いはずなので。

──面白い勉強とは、自分が興味をもった勉強ということでしょうか。

谷口:そうですね。勉強は好きでも宿題はやっていなかったです。数学は好きでどんどん先に進めていましたけど、英語は一切やらなかったので、イギリスの大学に進んだときもbe動詞がわかりませんでした

──そうなんですか。でも今は国連で英語のスピーチができるんですね。

谷口:日本では必要性を感じなかったので勉強しなかったんですが、イギリスでは人と話すのに必要なので、勉強しました

──必要だから勉強しようと思えるのは自己肯定感があるからだと思います。そして実際にがんばれる理由は何ですか?

谷口:自分に嫌われたくないことですね。自分で自分のことを嫌いになると、他に何を持っていても幸せを感じられません。自分を好きでいたいのが大きな理由です。

子どもの自己肯定感を上げる接し方は?

──子どもが自己肯定感を持って自分を好きでいるために、保護者はどのように接したらいいと思いますか?

谷口:「そのままでいいよ」と、ありのままを受け入れることが大事です。ただ、《そのまま》にはもしかしたらネガティブに感じることも含まれているかもしれないんですね。

──短所ということでしょうか。

谷口:はい。「自己肯定感を高くもってほしい」「元気であってほしい」などは、本人ではなく周りの期待です。心で思うのはともかく、そういう声かけには注意してください。子どもとギャップがあった場合、本人が苦しむことになるかもしれません。だから「こうあってほしい」よりも、ありのままを受け入れてあげるほうがいいなと思っています。

──「そのままでいい」と言うつもりで、理想を押し付けてしまっていることもありますね……。

谷口:周りが押し付けなくても、子どもは元々自己肯定感をもっています。あなたのままで100点満点だと、いつも伝えてあげてほしいですね。

まとめ & 実践 TIPS

「自己肯定感をもち、前向きに努力できる人になってほしい」

そんな思いが、押し付けとなって子どもを委縮させてしまうこともあります。子どもの気質や興味をもつものは、保護者の理想どおりとは限りません。そのままの子どもの姿を尊重し受け入れるには、大人こそ成長が必要なのかもしれません。

編集/磯本美穂 執筆/樋口かおる

参考:
参議院「子供たちの自己肯定感を育む」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2017pdf/20170908065.pdf

内閣府「特集1 日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~」
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01gaiyou/s0_1.html

プロフィール

谷口たかひさ

1988年生まれ。実業家、環境活動家。日本の大学在学中に留学費用のためインターネットビジネスで起業し、イギリスへ留学。卒業後チェーンストアのエリアマネージャー、アフリカのギニアでの学校設立、メガバンク/M&A/メディアのコンサルタント、グローバルIT企業の取締役を経験。プラスチック問題と、時間と共に価値が減る地域通貨に取り組むためドイツへ移住し、起業。2019年ドイツで気候危機の深刻さを目の当たりにし、「みんなが知れば必ず変わる」をモットーに「地球を守ろう!」を立ち上げ、気候危機の発信や講演を開始。世界中から講演に呼ばれるようになり、日本では1年で515回、全都道府県での講演を達成。

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