地方移住で「子どものびのび、受験は心配」親の仕事や家計はどうなった? 移住家族が体験したメリットとデメリット

「出社が減ったから、会社の近くに住まなくてもいい」
「田んぼが見えるようなところで子どもを育てたい」

テレワークをきっかけに暮らし方を見直し、地方移住や首都圏近郊への転居を考える人が増えています。でも、子どもを連れての引っ越しには「子どもが新しい環境になじめるだろうか」「進学に影響があるのでは?」といった不安も。

そこで、子連れで地方移住した人に、実際に引っ越して良かったこと、悪かったことを聞きました。進学や保活をきっかけに移住した、3家族の体験談を紹介します。

この記事のポイント

子どもの小学校入学がきっかけ。母子のみ長野県佐久穂町へ

【移住した人】
やつづかえりさんと子ども(小1)

【移住前→移住後】
東京都町田市→長野県佐久穂町(さくほまち、人口約1万人)

【移住の理由・きっかけ】
子どもの小学校入学
「どうしても子どもを通わせたい小学校があったので、1年生になるタイミングで移住しました」

【仕事の変化】
妻:ライター(変化なし)
夫:会社員(変化なし)
「仕事内容は変わらず、自宅での仕事が増えました。今年から佐久穂町の地域活性化関連の仕事も始まる予定。夫は東京で会社員を続けています」(やつづかさん)

【経済的な変化】
2拠点になった分と、冬の寒さ対策で生活費はやや増加
「東京の賃貸住宅を引き払い、夫は都内ワンルームに引っ越し、私は佐久穂町で中古住宅を購入。時々夫が長野に来ます(今後、学校の長期休みには上京したいと考えています)。以前は都心に取材に行くことも多かったのですが、オンライン取材が増えて交通費がかからなくなりました」

2020年3月末、母子での教育移住をしたやつづかさん。お子さんが入学した大日向小学校は、日本初のイエナプランスクール(ドイツの教育学者ペーター・ペーターセンが創始した教育方法)認定校で、2019年に開校したばかり。中等部も開校の予定です。

移住して1年、良かったこと
・考え方に共感できる学校と豊かな自然に触れ、子どもがのびのびと育っている
・学校や地域を通じて、自分も仲間との出会いがあった
悪かったこと
・コロナ禍で、東京との行き来がむずかしかった
・子どもが保育園時代のお友だちと会えず寂しがった
どちらも深刻なものではなく、今は佐久穂町での暮らしに親子でなじみ、子どもがちがう地域に進学しても住み続けたいと考えているそう。

「大日向小学校に入学するために移住してきた、同じ境遇の家族が多いことはとても心強いです。自治体も、新しい学校や移住者家族を歓迎してくれていると感じます。

移住者が暮らしやすい雰囲気があるかどうかは、移住先を決める大きなポイントになると思います」

隣県の山梨で乗馬レッスン

東京に通勤できる静岡県三島市へ。共働き夫婦の移住

【移住した人】
松久晃士さんと綾子さん、長女(5歳)、次女(0歳)

【移住前→移住後】
東京都目黒区→静岡県三島市(人口約11万人)

【移住の理由・きっかけ】
保活、里帰り出産
「長女誕生前に目黒区・世田谷区・大田区で保育園を探したのですが、毎日何件も園に電話し、相手にされず辛い経験に。妻の実家のある三島で里帰り出産の際に、私も2カ月ほど過ごしましたが、出会うのはやさしくて心穏やかな人たちばかり。三島に住みたいと考えたとき、市役所であたたかく相談に乗っていただいたことも決め手になりました」(晃士さん)

【仕事の変化】
夫:会社員(変化なし)
妻:会社員(変化なし)
「夫婦ともに東京勤務のまま、新幹線通勤に(現在は在宅勤務)。移住後に妻が転職しましたが、転職後の勤務地も東京です」

【経済的な変化】
物価と家賃が安く、生活費は減少
「家賃は半分になり、家の広さは1.5倍に。夫婦で5万円ほどあった通勤費の自己負担分も、在宅勤務の増加でほぼゼロに。ご近所から野菜をいただくことも」

2016年に移住して4年半、良かったこと
・広い園庭のある保育園に通うことができる
・いつも富士山が眺められ、少し出かければ大自然
・人混みで密になる機会が少ない
悪かったことはほぼなく、強いてあげれば
・大好きな串カツ田中がない(笑)
・芸術に触れる機会が少ない
くらい。世界的ピアニストの演奏に触れるような機会は身近ではないものの、東京にほど近い距離のため、デメリットとは感じていないそう。

「目黒区で45㎡・15万円だった家賃は、2016年三島市の戸建てに移り住み7.5万円に。2020年8月には市内で引っ越し、新築のマンション・80㎡で家賃は13万円になりました。それでも、同じ広さの目黒区のマンションに比べれば半額程度に抑えられています。

長女は自然の中を元気に走り回り、三島での暮らしを楽しんでいますが、今後娘たちが留学したいと言いはじめたら一緒に行くことだってあるかもしれません。その時々で“すっと動ける”柔軟性を、いつも持っておきたいなと考えています。

ちょうどいい都市感と豊かな自然のバランスがある、三島への移住はものすごくおすすめです」

新幹線がとまる三島駅のすぐ近くにある白滝公園。富士山の雪解け水が湧き出ています

海のある田舎暮らしを求めて、青森県八戸市へUターン

【移住した人】
ワラビカナコさんと夫、子ども(小2)

【移住前→移住後】
東京都練馬区→青森県八戸市(人口約23万人)

【移住の理由・きっかけ】
海のある田舎暮らしを希望
「海がない埼玉県育ちの夫が、妻の実家がある八戸を気に入って移住を希望しました」(カナコさん)

【仕事の変化】
妻:正社員→転職しパート、その後起業
夫:契約社員→転職し正社員
「息子が1歳と手がかかる時期での移住&転職。育児がなくても年齢や職域をふまえると正社員での就職はむずかしかったのではと感じています。パートとして就職した後、Webディレクション事務所を設立しました。夫は東京に本社を置くITベンチャーの八戸支社に就職。出張も多く忙しい日々でしたが、コロナ禍で自身の働き方を考えるようになり、今は地元企業に転職。地域に根付いた暮らしを楽しんでいるようです」

【経済的な変化】
家賃は下がったものの、車2台の維持費も発生
「東京在住時と比べ年収が大幅に減少したので、移住初年度は税金がきつかったです(税金は前年度の収入で計算されるため)。

家賃は安くなりましたが、田舎生活に必須な車2台(一人一台)の維持費、冬の暖房費などを含めると大幅に楽になった!という実感はありません。必要のない保険を解約しました」

2013年末に移住して7年、良かったこと
・近くに両親がいるのは何かと安心
・海、山、川など自然が近くにある
・「何かをやりたい」と思った時に挑戦しやすい環境
悪かったこと
・最低賃金が低い
・就職や進学などの選択肢が少ない
都会的な利便性もあり、大自然が身近にある八戸暮らしを満喫しているカナコさん家族。来年には埼玉県の夫の両親を呼び寄せ、同居の予定だそう。

「どこに移住したいかよりも、なぜ移住したいかが大事。子育て環境を優先するのであれば、保育園、医療費免除額、子育て支援制度、助成金などをチェック。同じ県でも市町村単位で制度が全くちがうことがあります。移住の目的に沿った情報収集が必要です。

SNSや移住イベントなどで、移住希望先の地域の人とつながっておくのもおすすめ。いざ移住した後のサポートや地域とのつながり作りなど、チカラになってもらえると思います」

近所には自然の遊び場がいっぱい

子連れでの地方移住。気を付けることは?

のんびり過ごせるなどメリットが多い地方移住ですが、「就職事情」「中学受験の選択肢はある?」など気になることもたくさん。他の移住者への取材では、

「秋にはとんぼが飛び交い自然環境に恵まれているが、噂好きの人が多くプライバシーが気になる」
「大丈夫だと思っていたのに、保育園に空きがなく入れなかった」
「東京からの移住。塾で“教育の質は落ちる”と言われた」

などのデメリットについての意見も聞きました。同じ市内でも、エリアによって学校の雰囲気がちがうことも。まずは自治体の移住相談窓口などにアクセスし、仕事や住環境、補助金や支援制度についても聞いておきましょう。

まとめ & 実践 TIPS

働き方が変わりつつある今、注目を集める地方や首都圏近郊への移住。まずは家族で「どんな暮らしがしたい?」と話し合ってみてはいかがでしょう。

後編では経済評論家に取材し、地方移住でのコストメリットなどをリポートします。

プロフィール

樋口かおる

ライター&グラフィックデザイナー&編集者&駄菓子屋さん&落語会主宰。早稲田大学商学部卒。DIYが好きでおもちゃから家具までなんでも手作りします。プログラミングとゲーム制作は息子と勉強中。

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