幼稚園の選び方とは?園生活の満足度を高めるために重視したいポイントとスケジュール
- 幼稚園・保育園
幼稚園を選ぶ時、どんなポイントから選べばよいのでしょうか。
お子さまに合った園を選んで、楽しい幼稚園生活を送れるようにしてあげたいと思いつつも、迷ってしまうこともありますよね。
そこで、幼稚園の教育の特徴から、お子さまに合った幼稚園の選び方や見学のポイントについて、ベネッセ教育総合研究所 研究員の野﨑 友花の監修のもと、紹介します。
保護者調査で明らかになった満足度を高めるポイントや学びに向かう力を育むポイントにも要注目です。
幼稚園とは? どのような種類がある?
幼稚園は、文部科学省の管轄にある教育施設で、学校教育法に基づいて運営されています。対象年齢や種類、保育時間は次のとおりです。
種類
国や地方自治体が運営する国公立幼稚園と、学校法人や社会福祉法人といったさまざまな事業者が運営する私立幼稚園があります。
また、厳密には幼稚園ではないものの認定こども園の幼稚園枠もあります。
対象年齢
満3歳から小学校入学前の幼児が対象となります。
3歳の誕生日を迎えた次の4月を待って入園することが多いですが、最近では、3歳の誕生日直後から通う子どもも増加しています。
また、子育て支援の一環として、3歳未満の子どもを「親子登園」や「預かり保育」として受け入れる園も増えています。令和5年度の調査では、2歳児の受け入れは私立幼稚園の約40%のところ、公立幼稚園では2.4%にとどまります(※1)。
保育時間
保育時間は、4時間を標準として各園が定めています。
一般的には、9時ごろに始まり14時ごろまで活動を行います。その後、預かり保育や、私立の幼稚園では課外活動を実施する園も多くあります。課外活動は、園によっては体操や英語などさまざまなプログラムが実施されており、習い事として活用する家庭も多いようです。
幼稚園で行われている教育
幼児教育では、遊びを大切にした教育が行われています。
幼稚園では幼稚園教育要領に基づいた教育が行われています。遊びや生活の中で、感性を働かせたり、不思議さに気付いたり、工夫したり試したりする中で、小学校以降の学びにつながる力を総合的に育んでいます。
遊びから学ぶことの重要性は、調査からも明らかになっています。
ベネッセ教育総合研究所が幼稚園・保育園・認定こども園などに通う年長児を持つ保護者に行った調査(※2)によると、園で遊び込む経験を多くした子どもほど「学びに向かう力」が高くなっています。遊び込む経験の頻度に応じて2群に分けた場合、遊び込む経験が多い子どものほうが「協調性」「がんばる力」「好奇心」「自己主張」「自己統制」といった「学びに向かう力」が高い傾向が見られました。
※「学びに向かう力」は、5つの領域(好奇心・協調性・自己統制・自己主張・がんばる力)に関わる15の質問項目から構成される。各領域を代表する質問項目を1つずつ図示。
※「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の%。
※「遊び込む経験」は、6項目(自由に好きな遊びをする・好きなことや得意なことをいかして遊ぶ・遊びに自分なりの工夫を加える・挑戦的な活動に取り組む・先生に頼らず製作する・見通しをもって、遊びをやり遂げる)について、「とてもよくあった」を4点、「よくあった」を3点、「たまにあった」を2点、「あまりなかった」を1点として合計値を得点化し、2区分した。1項目でも「わからない」を選択した人は除く。
では、遊びの中から学ぶとは具体的にどのようなことなのでしょうか。「遊び込む経験が大切といっても、どういうこと? 普通に遊ぶのと何が違うの?」と疑問に感じることもあるでしょう。
遊び込むとは、進んで創意工夫しながら、遊びに没頭すること。また、一つの遊びが広がりや深まりをもって展開されている状態をさします。
砂でお団子を作って遊ぶケースを例に見てみましょう。
夢中になって遊び込むプロセスと培われる力
・砂のお団子を固くしたい(楽しく頑張る力)
・水を入れてみたらどうだろう?(試し、工夫する力)
・水を入れすぎるとくずれちゃうな(気づく力)
・いろいろ試してみた結果、水の量はこのくらいがよさそう(気づく力)
砂でお団子を作るといっても、さまざまな形で頭を働かせていることがわかるのではないでしょうか。これらは、小学校以降での学びの土台となるもの。幼児教育において育みたい資質・能力は次の図のような関係性になります。
※ 文部科学省「幼児教育部会における審議の取りまとめ」2016年より一部抜粋して作成
遊びをとおしての学びは、幼稚園ごとにさまざまな工夫がされています。
お子さまに合った方法を取り入れている園を選べるといいですね。
お子さまに合った幼稚園選びのポイント
幼稚園を選ぶ際には、次の3つのプロセスを意識するようにしましょう。
1. 通える範囲にある幼稚園をリストアップ
まずは、候補となる幼稚園をリストアップしましょう。
通園は毎日のことなので、無理なく通えることが大切です。幼稚園だけでなく、認定こども園の幼稚園枠も候補とならないかチェックしておけるといいですね。近所のご家庭のお子さんが通っている幼稚園について聞いておくのもいいでしょう。
2. チェック項目ごとに比較して絞り込む
候補となる園をリストアップしたら、次の項目で比較して絞り込んでいきましょう。
表などでまとめると、比較がしやすくなります。また、スムーズに絞り込んでいけるよう、あらかじめ絶対に譲れない条件や優先順位を決めておけるといいですね。
チェックしておきたい項目
・通園の方法:園バスの有無、親が送迎する際の方法
・昼食:給食はあるか、お弁当が必要か
・保育内容・教育内容:教育目標や方針、プログラム
・預かり保育:延長保育はあるか、時間や内容はどんなものか
・保育料
・行事・イベント:どんな行事があるか、保護者の役割はどんなものか
・規模:全体の人数や1クラスの人数
・課外活動の有無
3. 気になる園に実際に足を運んで見学し最終決定
パンフレットや口コミだけではわからない情報もあります。
設備や先生、在園児の雰囲気をつかむためにも、実際に見学に行くようにしましょう。
見学で見ておきたいポイントは次のとおりです。
・施設や設備の様子
◦教室や園庭、ホールなどの清潔感
◦整理整頓されているか
◦大切に使われているか
・先生の様子
◦先生同士の関係性はどうか
◦園長と先生の関係性はどうか
◦子どもへの接し方の特徴
▪子どもたちに寄り添いながら、子どもの「やりたい」気持ちを高めるような関わり方をしているか。
▪子どもへの注意の仕方はどうか。頭ごなしに叱らず、子どもたちの意見や考えを聞いているか。
・在園児の様子
◦楽しそうか
◦いきいき、のびのびしているか
◦子ども同士の関わりはどうか
・遊びの様子
◦どんな遊びをしているか
◦子どもが夢中になっているか
◦先生の関わりや声かけはどうか
これらの点を見学でチェックしたうえで、お子さまに合った園はどこかを選べるといいですね。お子さまに合うかを的確に判断するためにも、保護者二人で見学するなど複数の目で見られるとベターです。
距離や給食だけで選ぶのは注意! 調査で明らかになった満足度が高まる選び方
保護者は、実際にどんな観点から幼稚園を選んでいるのでしょうか。
ベネッセ教育研究所が行った調査の結果は下図のとおり(※2)。
「家から近い」「給食がある」がトップ2となり、機能面を重視していることがわかります。日々通うことを考えると、便利さは大切なポイントですよね。
とはいえ、卒園時の園への満足度を高めるのは「園長や先生が信頼できる」「保育の理念に共感できる」といった観点となるようです。グラフに示された入園を決めた理由と、卒園時の園への満足度の関連を見てみると、園への満足度が高い群と低い群とで差があるのは「園長や先生が信頼できる(差34.8ポイント)」「保育の理念に共感できる(差28.3ポイント)」となります。通いやすさも大切な観点ですが、3年間の園生活全体の満足度を高めるためにも、先生への信頼や理念といった園の根幹に関わる部分をしっかり見極めて選んでいけるといいですね。
※複数回答。
※右表の園の満足度は「園の満足度」の回答結果をもとに、低群(満足度7割以下)と高群(同9割以上)のみ、選択率を示している。網掛けは、低群と高群で10ポイント以上の差があった項目。10ポイント以上20ポイント未満の差があったものは「>」「<」、20ポイント以上の差があったものは「≪」としている。
保育の理念に共感できるかが大切といっても、どう判断していけばいいか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。
お子さまの姿を一番近くで見ている保護者の感覚に従えば、基本的には大丈夫ですが、1点付け加えるとすると「他の子どもと一緒にいる時の子どもの姿」を把握し、我が子の特徴をつかんだうえで判断することが大切です。家族といる時と他の子どもたちの集団の中にいる時の姿は異なることもあるものです。「家では積極的だけど、集団の中ではおとなしいな。じっくりマイペースで遊びに向き合わせてくれる園がよさそう」といった具合に判断基準を持っておけるといいですね。
幼稚園入園までのスケジュール
一般的な幼稚園入園までのスケジュールは、次のとおりです。
園ごとに異なるため、個別に確認が必要ですが、1年ほど前から複数の園を比較検討していけるとよいでしょう。
・4月〜:各幼稚園の情報収集、体験会や園庭開放、見学会への参加
◦各幼稚園の教育理念や特色について、情報収集。園のホームページやSNS、幼稚園の口コミ等を参考にする。
◦体験会や園庭開放、見学会への参加もするとよい。
・9月~10月:入園願書の入手・入園説明会
◦願書が配布されたり、入園説明会が実施されたりする。
・10月〜:願書の提出・入園手続き
◦願書を提出、入園が決定。
◦面接や試験を実施する園もあるため、選考方法は事前に確認が必要。
・11月〜3月:入園準備の説明会
まとめ & 実践 TIPS
幼稚園で楽しく遊び込む経験は、幼少期の素敵な思い出になるだけでなく、学びに向かう力につながるさまざまな力を伸ばしてくれるものです。
今回ご紹介した観点を参考に、お子さまの特徴を踏まえて最適な園を選んでいけるといいですね。
(出典)
※1
令和5年度幼児教育実態調査/文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youchien/20240517-ope_dev03-1.pdf
※2
園での経験と幼児の成長に関する調査/ベネッセ教育総合研究所
調査対象:幼稚園・保育園・認定こども園などに通う年長児をもつ保護者2,266人(母親2,060人、父親206人)
調査期間:2016年2月19日~2月22日
https://benesse.jp/berd/up_images/research/Encyosa_web_all.pdf
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