“ウィズコロナ”世代の子どもたちをポジティブ思考で育てるために

昨年度までと大きく違って、授業のしかた、学校での活動が大きく違う“ウィズコロナ”世代の子どもたち。そんな子どもたちがポジティブな気持ちで生きていくためには、保護者が考え方の方向転換をしていくことが必要です。法政大学人文科学研究科の渡辺弥生先生にお話を伺いました。

学習の遅れがかわいそう、というだけの学年にしないで

子どもの学習について、ネガティブな部分ばかりに注目しないで、ポジティブな面を探していきましょう。昨年度までと比べていろいろなことが遅れてしまって、この年代の子たちは「かわいそう」と思ってしまったら、ほんとうにかわいそうな子たちになってしまいます。そうではなく、こういう時代だからこそ、「世界の情勢を知ることができた」「家族で乗り切るために時間を共有できた」など、「できた」ことを見つけていきましょう。慎重に手を洗う習慣など感染症予防が身に付いた、オンラインも含めて学びやすいスキルを得たなど、いろいろプラスの考え方ができますね。こうした気づきが、彼らにとって、叡智(wisdom)につながります。彼らの世代は、粘り強く、慎重な世代として成熟していくことになるでしょう。

こうした発想の転換を、保護者世代がまずしていきましょう。何か工夫できることはないか、新しい仕組みを作っていけるんじゃないかと、生活の中で、くじけずに前向きに生きる姿を見せることは、子どもにとっては生きる良きモデルです。気持ちも救われていきます。

「~~だから◎◎できる」という方向へ思考の転換を

学校の先生も、学校の衛生面に気をつけ、オンライン教材作りもしなければならず試行錯誤の真っただ中です。そうした先生の様子を批判するよりは、先生まかせにすることなく、PTAも一緒になって、子どもたちのために、クリエーティブなことを始めるチャンスかもしれません。子どもにとって望ましい環境とは、先生と親が、仲が良いことです。大人たちが互いに協力している姿は、子どもたちにとっては良きモデルです。保護者の中には、モンスターペアレンツと呼ばれているように、何かあるとすぐに学校を責め立てて要望を出す方がいますが、先生と親が敵対することは、子どもにとって一番のストレスです。

先生もPTAも、本来は子どものためを思っているのですから、何かできることを考えて、知恵を持ち寄ってみませんか。保護者の方には、いろいろな特技や才能をお持ちの方も多いので、「私がマスクを作りましょうか」「IT関連、手伝いますよ!」など提案していくのはどうでしょう。不安ありきで対策を考えるのではなく、こういう時代だから何か新しいことをやってみませんか?学校の「雰囲気」を温かいものにしていくと、子どもたち一人一人も伸びていく、というエビデンスがたくさんあります。

ポジティブに考えるということは、「~~だから○○できない」と考えることではなく、「~~だから◎◎できる」というモードに変換していくことによって生まれるものです。子どもの学習も、今だから挑戦できることを保護者も学校も一緒になって見つけて、ポジティブに楽しもうとしてみてください。

プロフィール


渡辺弥生

法政大学文学部心理学科教授。教育学博士。発達心理学、発達臨床心理学、学校心理学が専門で、子どもの社会性や感情の発達などについて研究し、対人関係のトラブルなどを予防する実践を学校で実施。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か?—乗り越えるための発達心理学』(光文社)、『感情の正体—発達心理学で気持ちをマネジメントする』(筑摩書房)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)、『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(フォレスト出版)など多数。

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