オンライン授業を通して掴んだ子どもとのコミュニケーションの基本[やる気を引き出すコーチング]

長かった休校期間が終わり、ようやく学校も再開されました。この間、オンラインによる授業の導入も急速に進んだという学校、塾もあったことと思います。最初は手探りながらも、オンライン授業を進める中で、「以前よりも、子どもたちとのコミュニケーションがうまくとれるようになりました」とふりかえる学習塾の先生、Aさんのお話をうかがいました。

■ポイントは大きめのうなずき

「オンラインで授業や面談をしていて、何がやりにくいかと言うと、まず、相手にこちらが言いたいことが伝わっているのかが掴みにくいということなんです。画面上に顔は映し出されているのですが、反応がわかりにくいんです。ということは、おそらく、子どもたちも同じではないのかなと思いまして、リアルで会っている時以上に、双方向のコミュニケーションを意識するようになりました。
授業や面談の前に、『今日の気分はどう?』、『昨日は何をして過ごしたの?』と、こちらから問いかけ、答えてもらう時間をとって、お互いの声が聞こえていることを確認し合ってからスタートしていました。相手が話している時は、いつもより大きめに首を縦にふってうなずき、『そうなんだね!』とやや大げさにあいづちを入れます。『聞こえているよ』、『君の答えを受けとったよ』という意思表示を、表情と動作、声のトーンに意識してしました。そうすると、子どもも話しやすくなるようです。手を抜くと、あまりしゃべらなくなります。大きくうなずく動作があるのとないのとで、こんなに違うのかと思いました」

■相手が話し終わるまで待つ

「あと、オンラインだと、どうしても少しタイムラグがあるので、相手の返答にすぐ、こちらが話そうとすると、声がかぶってしまうこともありますよね。だから、自ずと、相手が話し終わるまでじっくり待つという習慣ができました。以前、コーチングでは、相手の言葉の最後のマル(『・・・。』句点)まで聴きとる気持ちで傾聴するとおっしゃっていましたよね。あれを意識して、間を大切にして聴きました。そうすると、この子が言おうとしていることに、より意識を向けられるようになった気がするんです。何を言いたいのかをちゃんと聴けるようになりました。よく考えたら、うなずくとか最後まで口を挟まず聴くとかって基本中の基本じゃないですか?それが、リアルの時はいかにできていなかったか、オンラインに切り替わったことで初めて気づかされました。話を聴いているつもりで、半分も聴かないうちにもう自分の頭の中でこちらが言いたいことを考えているような始末だったと思います。オンラインになって、不自由なこともたくさんありましたけど、子どもの話を聴くトレーニングとしては、とても良い機会になりました」

■「傾聴」がすべての基本

Aさんは最後にこうおっしゃっていました。
「ようやく直接会って、子どもたちに指導ができるようになりましたが、以前より格段に子どもたちとのコミュニケーションがよくなったと感じます。画面越しではなく、直接話せる楽さもありますが、休校中に、子どもたち一人ひとりの話をゆっくり聴けたことで、その子の背景や考え、強みや悩みなどをより理解できるようになったことも大きいと思います。子どもたちは、話を聴いてもらうことで、『自分のことをわかってくれた』と感じるようです。これまで以上に信頼関係ができたような気がします。話を聴くことがこんなに大切なことなんだと感じたのも、オンライン期間があったからだと思います。今さら、こんなことを言っていてお恥ずかしいのですが、やはり、言って聞かせるより、まず『傾聴』ですね。そのほうが子どものやる気スイッチが入ります」
Aさんのお話は、確かに、基本中の基本なのだと思いますが、私たちは日頃、この基本を軽視していることはないだろうかとあらためて感じさせられたお話でした。

多くの保護者が子どものオンライン授業に不安を感じている

ある調査によれば、自宅でのオンライン学習をする子どもを育てる保護者のうち、8割以上が自宅学習に不安を感じていました。寄せられていたのは、「子供のやる気や集中力が続かない」「自発的に勉強しない」といった不安の声です。「勉強時間が少ない」「学校のように長時間勉強させられない」など、子どもの学習時間を危惧する声もあがっていました。
一般的に、自主的な学習を継続するためには「計画」「実行」「フィードバック」というプロセスを経るのが効果的だといわれています。このすべてを子どもが自発的に行うのは難しいので、学習のための環境を整備する必要があります。保護者が工夫を凝らし、子どものやる気を引き出してあげることが大切だといえるでしょう。

オンライン授業に後ろ向きな子どものやる気を引き出すコツ

子どもがオンライン授業に乗り気ではない場合、いくつかの方法を実践することでやる気を引き出せる可能性があります。まず、1日のルーティンをあらかじめ決めておくのが効果的です。家での暮らしには学校のように時間割がないため、生活からメリハリが失われやすく、学習にも気持ちが入らなくなります。そこで、毎日のスケジュールを決めて時間通りに生活することで、学校と同じような環境を作ることができます。起床時間や朝の散歩、食事、勉強、掃除などのタイムスケジュールを設定し、子どもの生活にメリハリをつけると良いでしょう。
ルーティンだけではなく、勉強のゴールを毎朝一緒に設定する方法も効果的です。その日のうちに達成するべき学習目標を決めておき、「終わったら残りの時間は遊んでもいい」といったルールを設けることで、子どもが学習に打ち込みやすくなるでしょう。
オンライン授業に集中できる環境を用意するのもおすすめの方法のひとつです。おもちゃやゲームなど、家には子どもを誘惑するものが多くあり、そのままの状態ではなかなか集中してくれません。オンライン授業のための場所を作り、その机には最低限のものしか置かないようにすれば、子どもも他のことを考えずに授業に集中できるはずです。
そして、適切な方法で子どものストレス発散を促すことも大切です。自宅学習ではどうしてもストレスがたまりやすいので、適度に体を動かす、日光を浴びる、誰かと話すなど、健全な方法でリフレッシュさせてあげましょう。

オンライン授業ではやる気を維持することが大切

自宅で行うオンライン授業では保護者も子どもも不安になりやすいものですが、正しい方法でサポートしてあげることで子どものやる気は維持できます。ルーティンを決める、集中できる環境を用意するなど、工夫を凝らして子どもの生活にメリハリをつけてあげましょう。そのうえで、あまり無理をしないように見守りながら、ストレス発散を促すことが大切です。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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