「うちの子には無理!」とどうしても思ってしまう保護者の方へ[やる気を引き出すコーチング]

 「お子さんに対して、こんなふうに声かけをしてみたらどうでしょう?」といったお話をこうして折々に発信していると、「そんなことでは、うちの子どもは言うことを聞きません。うちの子には無理です!」というお声も寄せられます。「質問しても、うちの子は答えないんですよ。何を言ってもダメです!」と嘆かれます。やってみたのに、思うようにいかない体験が重なると、確かに、こちらのやる気も萎えてきます。
 そんな中で、最近、こんなエピソードを寄せてくださった方があります。この春、中学生になった息子さんと小学校5年生の娘さんを持つお母さんのお声です。

■子どもと一緒に過ごしてみてわかったこと

 「4月の初めには終わると思っていた休校が延び、最初は、休みが長いことを喜んでいた子どもたちもだんだんと退屈するようになってきました。『暇すぎる!』と言い出し、そもそもいつまでこの休校は続きそうなのか?と上の子は考えるようになったようです。毎日、新型コロナウィルス感染症の感染者数をニュースでチェックしたり、他の都道府県や外国の状況を調べたりし始めました。『へぇ、そういうことをこまめに調べられるんだ』と意外な一面を見た気がしました。
 そのうち、入学したばかりの中学校で、まったく授業が始まらないことを気にして、『ネット動画とかで勉強したほうがいいのかな』と言い出しました。自分から勉強の話をするなんて今までなかったので、これにも驚きました。下の子とは、料理などを一緒に作ってみると、けっこう上手にできていて感心しました。
 それで、思ったんですね。今まで、いかに子どもの“できていないこと”ばかり見ていたんだろうって。できていることややろうとしていることって、本当はあったんだなと思いました。ずっと一緒に家にいる時間が長いことで、今まで見えなかったことが見えてきたことはよかったなと思いました。でも、ちょっとショックなこともあったんですよ」

■「できない前提」の言葉かけ

 「今まで、見えなかった子どもたちの良いところが見えてきたのが嬉しくて、言葉をかけてはいたんですけど、上の子から言われたんです。
 『お母さんって、いつも、できない前提だよね』。ハッとしましたよ。確かに、私が子どもたちにかけていた言葉は、
 『へぇ、珍しいね!勉強してるんだ』
 『そんなにやる気があるなんて思わなかった』
 『こんなことできるなんてびっくりしたわ』
 『意外と上手だね』
 というような言葉だったんです。息子の言う通りだと思いました。
 『どうせできないでしょう』っていう前提があるから、こういう言い方になってしまうんだって。すごく反省しました。私が、『うちの子には無理!』と決めつけていたから、今までできることもやらなかったのかなって思いました」

■最初から決めつけず見守ってみる

 このお母さんのお話に、ドキッ!とした方もいらっしゃるのではないでしょうか。「あなたにはどうせできない」と自分のことをあきらめている人の言葉に、素直に耳を傾けようと思いますか。最初から「無理」、「できない」と決めつけていることで、お子さんの可能性ややる気を奪っているとしたら、とてももったいないことです。
 「今回、どうして、お子さんに対する見方が変わったのですか?」
と私はお母さんに質問してみました。
 「特別に何かがあったわけではないんです。私もあまりに家にいる時間が長くて、『あれしなさい、これやめなさい』って言い続けるのにもう疲れちゃったんです。言う気力がなくなって、今、何してるのかなって様子を見ていたというのが正直なところですが、それがかえってよかったのかもしれませんね」
 なるほど!「どうせ無理」、「言わないとやらない」という気持ちを脇に置いて、ゆっくりお子さんを見守ってみるのはどうでしょうか。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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