「質問」しだいでどんな環境でも前向きに考えられる子どもに![やる気を引き出すコーチング]

 新型コロナウィルス感染症の影響で、まさか、こんな新年度を迎えているとは思いもよらなかったというご家庭も多いことと思います。「そのうち、過去の経験やマニュアルなどあてにならず、予測不能で先の見通しが立ちにくい時代がやってくる。だから、既存の答えに頼るのではなく、自分で考える力を身につけておくことが必要」と言われて久しいですが、「今、まさに、そんな時代がやってきた!」と実感しているこの頃です。
 そんな中で、各ご家庭のお話を聴いていると、二極化している様子がうかがえます。親子共に非常にストレスを感じながら過ごされているご家庭と案外楽しく過ごされているご家庭があるようです。各々の状況や環境の違いはもちろんあると思いますが、私には、大人がいつもしている「質問」の違いによるところも大きいように思えてきます。

■被害者意識を引き出す質問

 例えば、下記の質問を、できれば一度、声に出して読み上げてみてください。
 「なぜ、こんなことになったのだろう?」
 「なぜ、こんな目にあわなくていけないのだろう?」
 「いったい、誰のせいでこうなっているのだろう?」
 「この先、どうしてくれるの?」
 「どうして、思い通りにいかないことばかりなのだろう?」
 「なぜ、子どもは言うことを聞かないのだろう?」
 「なぜ、いつも、この子はこうなのだろう?」
 「この状況でどうすればいいと言うの?」
 「誰が悪いの?」
 「なぜ、何もしてくれないの?」

 どんな気持ちになりましたか?気分がどんどん滅入ってくる感じがしませんか?このような質問を、大人が折々に口にしながら過ごしているご家庭は、それが、お子さんに直接投げかけられていなくても、親子のストレスが高いようです。
 これらの質問は、「問題は自分の外側にある」という視点に立った質問です。「今、私に起きている問題は、他者や環境のせいであって、自分はその被害者である」という意識から発せられる言葉です。このような言葉を聞かされて育つ子どもは、やはり、問題を自分事と捉えられず、他者のせいにして考えるようになってしまいます。「自分の問題解決は自分しだい」という意識が育たず、いつもまでも解決することができません。

■当事者意識を引き出す質問

 一方で、こちらの質問はどうでしょうか。できれば、また声に出して読み、ニュアンスを味わってみてください。
 「今、何が起きているのだろう?」
 「自分はどうしたいと思っているのだろう?」
 「子どもはどう考え、どうしたいと思っているのだろう?」
 「どうすればうまくいくのだろう?」
 「何があればできるのだろう?」
 「この状況を活かすとしたら、何ができるだろう?」
 「今、自分にできることは何だろう?」
 「自分がどう伝えたら、この子はわかってくれるだろう?」
 「他にどんな方法があるだろう?」
 「この体験を今後にどう活かせるだろうか?」

 先ほどの「被害者意識」の質問との違いを感じていただけるでしょうか?今度はどんな気持ちが湧いてきましたか?どちらがより心が安定し、前に向かっていきそうですか?
 これらの質問は、状況を冷静に見つめ、自分の内側に答えを探しにいく「当事者意識を引き出す質問」です。自分がコントロールできないもの(例えば、外部環境や他者の言動など)のせいにするのではなく、自分の考え方や言動をどうコントロールすれば良いのかを考える質問です。これらの質問に触れて育った子どもは、逆境にあっても前向きに考えられます。起きている出来事を恨むのではなく、どう自分に活かしていくのかと肯定的に捉えられるようになります。これこそが、変化が激しく予測不能な時代にあって、必要な「考える力」の一つではないでしょうか。
 ご家庭内で飛び交っている質問に、少しアンテナを立ててみてください。それは被害者意識を引き出す質問でしょうか?当事者意識を引き出す質問でしょうか?

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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