朝食抜きの若者は4人に1人 食育白書

2006年から政府が公表している「食育白書」。先ごろ、2018年度版が公表されました。子どもや若者の朝食欠食率が上昇しており、改善を呼び掛けています。学校や大学など、食事を提供する教育機関での取り組みや、その担い手として栄養教諭の活躍に期待が掛かります。

小中学生の朝ごはん抜きも増加

さまざまな経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を身に付け、健全な食生活を実践する人間を育てる「食育」 は、どの世代にあっても大切なものです。2005年に制定された食育基本法では、食育の基本的な理念が示されました。毎年公表される「食育白書」は、この法律に基づいて行われた施策について整理し、現状や課題をまとめたものです。
2016年3月には「第3次食育推進基本計画」が決定され、20年度までの5年間で取り組むべき重点課題として▽若い世代を中心とした食育▽多様な暮らしに対応した食育▽健康寿命の延伸につながる食育▽食の循環や環境を意識した食育▽食文化の継承に向けた食育……の5つが設定されています。

しかし、子どもや若い世代の食に関する行動には、まだまだ課題があるようです。朝食を「全く食べていない」「あまり食べていない」と回答した欠食の割合は、小学生で5.5%(前年4.6%)、中学生で8.0%(前年6.8%)と、前年より増加しています。朝食を食べない20~30代の若い世代の割合は26.9%で、2015年度の24.7%より増えています。第3次計画における2020年度の目標値は「15%以下」ですから、達成は厳しいと言わざるを得ません。

関心高めるため、あの手この手

こうした事態に対応すべく、子どもや若い世代が日中を過ごす学校や大学では、積極的に食育に取り組んでいます。小中学校の学校給食は、健康を保つための栄養摂取という意義に加え、望ましい食習慣を身に付けたり、地域の食文化を学んだりするための重要な教材として捉えられています。食育白書では、愛媛県教育委員会の取り組みとして、生産者と学校給食関係者の情報交換会を紹介。学校給食で使いやすい地場産物の加工品の開発につながった例を紹介しています。
小中学校の食育推進のために2005年度から配置が始まった栄養教諭は、給食の時間だけでなく、教科横断的な食の指導や子どもの個別的な相談指導なども、その役割に含まれます。人数は2018年5月1日現在で6,324人と前年度より232人増加しました。白書では富津市立佐貫中学校で栄養教諭が「朝食の大切さ」などの公開授業を行い、生活習慣の改善を呼びかけた取り組みを紹介しています。

若者向けの食育推進事例としては、大学生協(全国大学生活協同組合連合会)の事例が紹介されています。管理栄養士が考案した「カット野菜を使ったお手軽レシピ」をホームページで公開。各大学の学食で食生活相談会・お料理教室などを開催して、自炊の実践を促しています。
子どもは学校や塾・習い事、学生は大学の授業やアルバイト、大人は仕事や家事・育児・介護と、誰もが忙しく過ごしている中、食に「手をかけたいけれどできない」現状を振り返るヒントとして、食育白書をのぞいてみてはいかがでしょうか。

(筆者:長尾康子)

※ 農林水産省 2018年度 食育白書
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/h30_index.html

※ 第3次食育推進基本計画
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/dai3_kihon_keikaku.html

※ 文部科学省 食に関する指導の手引-第二次改訂版-
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1292952.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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