出産手当金とは?もらえる条件や期間はどれくらい?
出産の前後は、どうしても仕事を休むことになるため、収入について不安になってしまいますよね。そんなかたのために、条件を満たした場合は国から出産手当金が支給されます。安心して出産に臨み、産後ゆっくりと休養できるように設けられた制度なので、しっかり活用したいところです。
ここでは、出産の前後の収入に不安を抱えるかたに向けて、出産手当金をもらえる条件や支給期間について、わかりやすくご紹介します。
出産手当金とは?そのほか出産に関して知っておきたい制度とは?
出産の前後は、どうしても休養期間が必要です。この場合、会社を休むことになるため、収入が少なくなってしまいます。会社によっては、出産前後の休養期間中にも給料を支払ってくれますが、ほとんどの会社は無給となります。
そこで、活用したい制度が出産手当金です。企業から給料が支払われない場合には、生活が困窮する可能性があります。出産手当金は、生活を保障することで安心して出産の前後を過ごせるように設けられた制度です。
受給者は、健康保険に加入している出産する本人となります。
出産に関する制度としては、出産手当金の他に「出産育児一時金」があります。出産育児一時金は、1児につき420,000円(産科医療補償制度未加入の医療機関での出産の場合は404,000円)が支給される制度です(※1)。
出産育児一時金は出産に関する給付で、出産手当金は出産期間の生活費に関する給付となります。
出産手当金をもらえる条件や対象期間はどれくらい?
出産手当金は、出産を迎えるすべてのかたに支給されるものではありません。出産手当金の支給条件や支給対象となる期間について、詳しくご紹介します。
・どのくらいもらえる?
出産手当金の支給額は、まず1日あたりの金額を計算し、会社を休んだ日数をかけて算出します。1日あたりの支給額の計算方法は、次のとおりです。
・支給開始日以前から12か月間の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2
支給開始日以前の勤務日数が12か月未満の場合は、次の2つを比べて少ない方の金額を計算に使用します。
・勤務開始から支給開始日の前月までの標準報酬月額の平均額
・28万円
たとえば、28万円を使用して計算した場合、28万円÷30日×3分の2=約6,222円となります。支給日数が98日の場合は、6,222円×98日=609,756円が総支給額です。
出産手当金が振り込まれる時期は、必要書類を協会けんぽに提出してから2週間程度です。
・条件
出産手当金が支給される条件は、次のとおりです。
・妊娠4か月(85日)以上経過した出産(早産・流産・死産・人工中絶を含む)
・健康保険の被保険者である期間内の出産
出産手当金は、出産を機に退職する場合でも支給されるケースがあります。退職後は、被保険者の資格が喪失するため、通常では出産手当金を受けられません。任意継続被保険者であっても、出産手当金を受給できないのです。
次の条件を満たした場合にのみ、資格喪失後も出産手当金を受給できます。
・資格喪失日までに1年以上継続して被保険者となっている
・退職日に出勤していない
・出産日以前42日よりあとに退職している(予定日後の出産の場合は出産予定日以前42日よりあと)(※2)
・対象期間
出産手当金の支給対象となる期間は、出産日の42日前から(双子以上の妊娠の場合は98日前から)、出産日の翌日以降56日目までの会社を休んだ期間です。つまり、誰でも産前42日間+産後56日間=合計98日間分の出産手当金が受け取れます。双子以上の妊娠の場合は、産前98日間+産後56日間=合計154日間分となります。ここで、出産予定日前、予定日後、予定日通りに出産した場合、それぞれいくら支給されるのかを見ていきましょう。
出産予定日よりも早く出産した場合は、産前産後の合計98日間分が出産手当金として支給されます。出産予定日ではなく出産日を基準として計算されるため、予定日が早まったからといって支給される金額が減らされる心配はありません。ただし、産前42日間に働いて給料をもらっていた時期がある場合、その日数分は支給されません。あらかじめ余裕をもって休みに入る日を決めておくと安心できそうです。
出産予定日よりも遅れて出産した場合には、予定日から出産日までの日数を加えた期間が支給対象となります。つまり、出産が2日遅れた場合、産前産後98日間分+遅れた2日間分=合計100日分の出産手当金が支給されます。
予定日通りに出産した場合は、産前産後の合計98日間分の出産手当金が受け取れます(※3)。
・傷病手当金を受給している場合
2016年3月までは、出産手当金の支給期間中は傷病手当金を受給できないルールとなっていました。2016年4月1日以降は、出産手当金よりも多くの傷病手当金を受給している場合に、その差額が支給されるようになっています(※4)。
・もらえないケース
次のようなケースでは、出産手当金を受給できません。
a国民健康保険に加入
国民健康保険には存在しない制度です。そのため、国保に加入していても出産手当金は支給されません。
b出産手当金以上の報酬を休養期間中に受け取っている
休んだ期間中に会社から出産手当金よりも多額の報酬を受け取っている場合も、出産手当金を受給できないので注意しましょう。
なお、共済組合や船員保険などの公的医療制度を利用している場合においては、出産手当金を利用できます。利用条件や支給額について詳しくは、利用している公的医療制度の事務所などに問い合わせましょう(※5)。
フリーランスのかたは社会保険に加入できませんが、公的医療制度は利用できます。そのため、利用している公的医療制度によっては、出産手当金を受給できるのです。また、正社員の場合は、勤務先によって利用条件が変わることはありません。これは、出産手当金が社会保険によって定められている制度であるためです。
出産手当金の手続きはどうやるの?
出産手当金を正しく支給されるために、手続きの方法や注意点を確認しておきましょう。
・必要書類
出産手当金の申請には、健康保険出産手当金支給申請書が必要です。協会けんぽのホームページからダウンロードできます(※6)。もしくは、お近くの協会けんぽの窓口でもらいましょう。健康保険出産手当金支給申請書には、医師または助産師と事業主の記入欄があります。記入漏れや押印漏れがあると承認されないので注意しましょう。
・申請方法
健康保険出産手当金支給申請書に、担当医師と事業主の両方の証明を受け、協会けんぽへ提出します。書類に不備がなければ、約2週間で振り込まれます。
・申請のタイミング
産前と産後の2回に分けて申請できますが、一般的にまとめて申請します。まとめて申請する場合は、出産手当金の対象期間が過ぎてから申請できます。ただし、出産手当金よりも多額の報酬を受け取っていないことの証明が必要なため、その月の給与の支払い額が確定し、その給与が支払われる日以降でなければ申請できません。
なお、申請期限は休業していた日ごとに、その翌日から2年と定められています。
・注意点
健康保険出産手当金支給申請書について、次のようなことに注意が必要です。
a下書きの鉛筆書きのままになっていないか
b修正液で修正していないか
c訂正箇所には訂正印を押したか
d記入日が申請日よりも前の日になっているか
e医師・助産師・事業主の記入や押印にミスはないか
健康保険出産手当金支給申請書にミスがあると、支給時期が遅れてしまいます。生活に支障をきたさないためにも、よく確認したうえで提出しましょう。
出産手当金をしっかり受給して、安心して育児ライフを満喫しましょう
出産手当金は、収入のことを気にせず安心して出産を迎え、育児ができるように設けられた制度です。出産手当金よりも多くの報酬を休養期間中に受け取れるケースは多くありません。出産手当金についてしっかりと確認しておき、うまく活用することをおすすめします。
(※1)全国健康保険協会 協会けんぽ『出産に関する給付』:
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31712/1948-273
(※2)全国健康保険協会 協会けんぽ 三重支部『出産手当金のご案内』:
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/mie/kouhou/seidoannai/syussan.pdf
(※3)全国健康保険協会 協会けんぽ『出産で会社を休んだとき』
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat315/sb3090/r148
(※4)全国健康保険協会 協会けんぽ『傷病手当金・出産手当金』:
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/g3/cat310/280201seidokaisei.pdf
(※5)地方職員共済組合『出産したとき』:
http://www.chikyosai.or.jp/division/short/scene/marriage/02.html
(※6)全国健康保険協会 協会けんぽ『出産で会社を休んだとき』:
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat315/sb3090/r148