成長実感が持てる言葉が子どもの意欲を引き出す[やる気を引き出すコーチング]

コーチングをしていると、「もともとやる気がない子どもはいない」、「可能性がまったくない子どもなんて一人もいない」と心から思えます。とりわけ、コーチングの効果を実感させてもらえたのが、当時、中学1年生だったNさんとの出会いでした。

Nさんはコミュニケーションに苦手意識があるようで、中学校に入ってから、なかなか環境になじめず、何事にも無気力で学校も休みがちになっていました。私と最初に会った時も、目を合わせようとせず一言も話しませんでした。
そこで、話すことを無理に強制せず、しばらくお互いに黙ったまま、一緒にお茶を飲んだり、私が自己紹介をしたりといったところからコーチングはスタートしました。

■変化をフィードバックする

2回目に、Nさんと会った時は、少し緊張が解けたのか、最初と印象が違って見えました。顔色が多少良くなったようにも感じられました。一番驚いたのは、私の目を見て、「こんにちは!」と挨拶をしたことです。

「この前とまったく違うね!」と、私は開口一番伝えました。
「え?」
「うん、違う!この前よりずっとコミュニケーション上手になってるよ」
「え?」と言って、「そんなことない!」と言うように、首を横にふるのですが、Nさんはかすかに微笑みました。これも前回にはなかったことです。
「絶対に前進してる!」
「でも、学校にはまだ・・・」
「いいんだよ。それはいつでも行けるから。Nさんは、この前とはもうまったく違うステップにいるよ。私の目を見て挨拶してくれた。笑顔になってる。顔色もいい。声も前より大きい!」

嬉しくて、そんな言葉をかけました。この日は、初回よりも少し会話ができました。
誰しも、自分の身長が伸びていることには、自分では気づきにくいものです。コーチは、その変化を見つけてフィードバックします。コーチングで言う「フィードバック」とは、評価や助言を与えることではありません。コーチが相手から感じとったことをただ伝えます。

本人には気づきにくい変化を伝えることで、本人の中でも、気づきや喜びが生まれます。自分では「何も変わっていない」と感じていたことも、前回からの変化を伝えてもらうことで、「前進しているんだ」と実感できるようになります。

■成長の大きさを伝える

こうして対話を繰り返すうちに、Nさんは少しずつ一歩踏み出すようになっていきました。学校にも行ってみました。それでも、Nさんにはまだ気が重いことがありました。
「学校にはこの前、1日行けただけなんです。やっぱり、誰とも何も話さないまま帰ってきてしまいました」
「そう、1日学校にいたんだね。チャレンジしたんだね」
「でも、何も変わってないです。学校行っても、しゃべらないから、学校行っても行かなくても同じなんです」
「そうか、そう思ったんだね。私にはすごく変わったように見えるよ。今日のNさんを見ていて思った。私は1ヶ月でこんなに変われないよ」
会うたびに、そんな言葉をかけていると、Nさんも少しずつチャレンジを繰り返すようになりました。最終的に、快活な中学生となって学校に通い、友達もでき、高校にも進学しました。子どもの可能性とは測り知れないということを教えてもらった出会いでした。

もちろん、チャレンジしても、すぐに成果が実感できないこともあります。そんな時は、どうしても、くじけそうになってしまいます。それでも、1つチャレンジしたことは、それだけで、その子にとって大きな成長です。「それぐらいのことで大げさにほめなくても」と流してはいけないのです。
「あなたは大きな成長を遂げたんだ!」とぜひ、言葉にして伝えることが大切です。自己肯定感と次へのチャレンジ意欲を高めます。成長実感が持てる言葉かけや関わりが、子どもの可能性を開花させていくのではないかと私は思います。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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