子どもが自ら解決策を「編み出す力」をどう育む?[やる気を引き出すコーチング]
「やりたいことがわからないんですが、どうしたら見つかりますか?」と、中高生からよく質問されます。「自分に自信が持てないのですが、どうしたら自信はつきますか?」という質問も多いです。「どうすればいいですか?」、「何か良い方法はないですか?」とやり方を問う質問が実に多いです。
もっと、自分の内側に答えを探しにいってみたらよいのに、どうして、子どもたちはやり方の答えを外側に求めるようになっていくのでしょうか。
このコラムを書かせていただくようになって、おかげさまで、今年で10年目を迎えます。今回は、あらためて、コーチングの必要性についてお伝えしたいと思います。
「答え」を与えるから自分で考えなくなる
コーチングの説明をする時に、私はよくこんな例えを使います。
「木にボールがひっかかっています。このボールを木から下ろしたいのですが、手が届きそうにありません。今、あなたのお子さんがこういう状況に陥っていたとしたら、あなたは、この子にどう関わりますか?」
こういう時、「ハシゴを使えばいいよ」などと、すぐに解決策を示してしまう保護者の方は案外多いものです。しかし、いつもそうやって「答え」を与え続けていたら、お子さんはどうなってしまうでしょうか? そうです、自分で考えなくなります。
「答えは一つしかない」という思考の枠の中にどんどん入っていきます。そして、その唯一絶対の正解は、「自分の内側にはない、外側から与えてもらうもの」と思うようになります。こうして、常に、「どうしたらいいかわからないので、答えを教えてほしい」と依存するようになっていくのです。
コーチは「教えない」
ですから、コーチングでは、たとえ、こちらが何らかの解決策をイメージしていたとしても、いきなり、「答え」を与えるようなことはしません。「どうしたらいいと思う?」と質問し、自分で解決策を探るよう関わります。
この時、お子さんが、「棒を使ってみる」と答えたとしましょう。しかし、どう見ても、棒が短すぎて、ボールには届きそうもありません。「棒じゃダメだよ!うまくいかないよ。ハシゴを使いなさい」と言ってしまったら、どうなるでしょう?「ほら、やっぱり、誰かの答えのほうが正しいんだ」と自分では考えなくなります。
では、明らかに、「それではうまくいかない。失敗する」とわかっている時、コーチだったら、どうするでしょう?本人の自発性や考える力を奪わないで、関わるにはどうしたらよいのでしょうか?
質問をしたからには、コーチはいったん、その「答え」を受け取ります。これを「受容」と言いました。
「なるほど!棒を使うんだね」。受容して、さらに、質問によって対話を深めます。
「棒の長さはどれぐらいだっけ?木の高さはどう?」本人が現状を観察し、自ら気づくことを促します。時間的に余裕があり、失敗しても、やり直しがきくような場合には、あえて、失敗を体験してもらうのも、自分で気づき、考え、学ぶ良い機会です。
質問によって「編み出す力」を育む
質問を投げかけ、自分で考えるよう促していると、
「あ!棒じゃ届かないかも。そうだ!脚立に乗って棒を使ってみよう!」と、こちらの想定を超える新たなアイディアを編み出すかもしれません。
知識や情報は、もうインターネットで検索すれば、何でも簡単に手に入る時代です。これからはますます、持っている知識や情報を生かして、いかに、新たなやり方を自分で編み出していけるか、その力が問われるようになるでしょう。
だから、既存の「答え」を与えるのではなく、質問によって、自ら考えることをサポートする関わりが必須なのです。まずは、「どうすればいいと思う?」と投げかけるところから始めてみませんか。
今年も、コーチングについて、より幅広くお伝えしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
(石川尚子)