子どもの言いわけを引き出す質問、引き出さない質問[やる気を引き出すコーチング]

これは、知人の学習塾の先生から聴いた興味深いお話です。
A君、B君は共に、大学受験に向かって、勉強に取り組んでいる高校3年生です。模試の結果をもとに、先生が指導をしていると、二人の反応の違いに驚かされることがしばしばありました。

A君は、結果が思わしくないと、「今月は学校行事が忙しくて、勉強のほうがなかなか・・・」と言いわけをします。「先生が『勉強しとけ』って言ったところが出なかったから悪かったんです」と先生のせいにすることもあります。

B君のほうは、「今回はわからない単語が多くて、得点につながらなかったように思います。次は、単語力を強化しておこうと思います」と自分なりに結果を分析し、次の対策を考えて答えます。

生徒のタイプは各々とはいえ、「こうも反応が違うのはいったい何なのだろう?」と先生は不思議に思っていました。そして、ついに、「こういうことなのか!」と思い当たる場面に出会ったそうです。

■原因追及は言いわけを引き出す

それは、三者面談の席でのことでした。A君親子の場合、ことあるごとに、お母さんがA君に向かって、不満そうに質問するのです。

「どうして、夏休みにもっとがんばっておかなかったの?」
「どうして、そういう言い方をするの?」
「どうして、いつも親に相談しないの?」

そのたびに、A君は、「だって・・・」と言いわけをします。
お母さんは、先生に対しても、「先生、どうして、この子はこんなにやる気がないのでしょうか?」と詰め寄るありさま。
結局、あまり前向きな面談にはなりませんでした。

お母さんは、純粋に、原因や理由を知りたくて「どうして?」と問いただしていたのかもしれませんが、「万事、あの調子で原因追及をされていたら、A君が言いわけをするようになってしまうのは仕方がないかもしれないな」と先生は思ったそうです。

■解決策を探る質問の効果

一方、B君親子の三者面談では、少し様子が違いました。
B君のお母さんからは、こんな質問が、折々に先生やB君に対して投げかけられるのです。

「先生、数学が伸びてきたようですが、どんな方法で伸びたのでしょうか?それがわかると、他の科目ももっと伸びるように思うのですが」
「B君、目標に近づくために、あと何をしたらいいと思う?」
「どうしたらもっと伸ばせるのかな?」

「なるほど!このお母さんの質問の仕方が、いつもB君から、前向きな対策を引き出しているのか!」と先生は納得したそうです。
結果をふまえて、次、もっとうまくやるためにはどうしたらいいのか、解決策を探るよう促す質問です。
「日頃から、どんな問いかけをするのかが、子どもの思考回路を作っていくんだなとあらためて思いましたよ」と先生は話してくださいました。

■「どうして?」から「どうすれば?」へ

同じような話を、あるフリースクールでも聴いたことがあります。
例えば、子どもたちがふざけ合っているうちに、花瓶が倒れて割れてしまったという場面で、「誰が壊したの?」「どうして壊れたの?」と言われ慣れている子どもは、「自分がやったんじゃない!」と必死に自己弁護をします。「○○ちゃんが押したから」と人のせいにしようとします。

ところが、日頃から、「何が起きたの?」「どうすればいいのかな?」というコミュニケーションをとってもらっている子どもは、そんな時も、決して動揺せず、「危ないから、まず片づけよう!」と淡々と次の行動を起こすと言うのです。

「どうして、こんなことをしたの?ダメでしょう!」と言えば、責められないように言いわけを考える子どもになってしまいます。
「こういう時はどうすればいいと思う?」と問い続ければ、建設的に解決策を考えられる子どもになります。どちらが生きる力を持った大人へと育つでしょうか。「どうして?」を「どうすれば?」に変えるところから、まず意識してみたいものです。

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