子どもの感情表現を人間的成長につなげる方法
子どもが泣いたり、怒ったりしていると、どうしてよいかわからず頭ごなしに叱りつけてしまう。そんなことはありませんか? しかし、叱りつけても、子どもがその時に抱いた感情は消えるわけではありません。子どもの感情にどのように寄り添い、それをいかに成長へ結び付けていくか、法政大学の渡辺弥生先生に聞きました。
子どもの感情表現を人間的成長につなげる4つの方法
子どもがのびのびと感情表現をするには、大人の側が頭ごなしに否定せず受け止めてあげる心を持つことが欠かせません。それには、子どもがぶつけてきた感情に対して、大人がすぐに良い悪いを判断し、感情的にならないことが重要です。余裕を持って、まずは子どもの気持ちを受容します。
そのうえで、子どもの感情表現を人間的成長につなげるにはどうしたらよいか、4つの方法をご紹介します。
【方法1】叱らずに、子どもの気持ちを理解したうえで説明をする
子どもの感情をはなから否定するような叱り方では子どもの感情のはけ口がなくなってしまいます。また、脅して静かにさせる、「そんなことをする子はお母さんは嫌いです」と愛情がなくなることをちらつかせるなども、子どもに本質的に何がよくなかったのかを気付かせるには至りません。
保護者がいる時はよい子でいるかもしれませんが、根本的に何が悪かったのかは理解せず、保護者の目が届かなくなると同じことを繰り返したり、親の顔色を見て行動したりするようになります。
つまり、泣いていることなどに対して頭ごなしに「泣いたらだめ!」などと叱らずに、「お兄ちゃんにとられて、悔しくて泣いてるんだね」と子どもの気持ちを代弁してあげましょう。子ども自身が自分の気持ちを理解することにつながり、気持ちを落ち着かせることになります。
最近ではスマートフォンをいじりながら子どもを注意する保護者のかたを見かけたりしますが、きちんと子どもに正対して、子どもの表情などしぐさもよく見て気持ちに寄り添ってやりましょう。親自身も子どもの目をよく見て、ノンバーバルなコミュニケーションも使ってどう解決したらよいか理解させるのがポイントです。
【方法2】モデリングを意識する
子どもは保護者を見て育つものです。「かんしゃく、起こさないの!」と叱っていたとしても、保護者のかたが感情的に子どもに接していれば、子どもも当然同じように模倣して成長していきます。自分が子どものモデルになっていることを意識して、きちんと親自身が「かんしゃくを起こさず」感情のコントロールができているかを振り返ってみることが必要です。
【方法3】子どもの感情を言葉で代弁してあげる
親子間で感情を表現する言葉が貧困になってきていることが気がかりです。「ヤバイ」「マジ」などのボキャブラリーだけでは、複雑な人間の感情を表現することは難しいでしょう。子どもが初めての感情に向き合っている時、「切ないんだね」「感激しているのね」など保護者が一歩先に立って気持ちに当てはまるボキャブラリーや表現で代弁してあげると、子どもも感情と言葉をリンクさせて習得していくことができます。自分の表現に自信がない保護者のかたは、感情表現が豊かな絵本を子どもと一緒に読むなどして、親自身が感情表現をともに学んでいくことも有効です。
【方法4】できている時に認めてあげる
子どもは褒められることが大好きです。しかし、大人は子どもがトラブルを起こした時には叱るのに、できている時に、褒めたり認めてあげたりすることは案外おろそかにしがちです。
たとえば、子どもがおとなしく一人で遊んでいると、これ幸いと大人は別のことをしてしまう。穏やかに楽しく遊んでいるならば、「楽しく遊べているね」と声をかけるなど、子どもを褒めてあげてほしいと思います。できている時に注意を向けてあげることは、実は叱ることよりも効果があるともいわれています。「悔しかったけれど、よく泣かずに我慢したね」など、子どもが上手に感情をコントロールできた際には褒めてあげることが大切なのです。
子どもの感情は社会で生きる礎(いしずえ)に
感情を上手に表に出すことや、お友達の気持ちを適切に理解できるようになることは重要です。表現を押さえ込んでしまうと、「何を考えているかわからない子」と見られがちだからです。一方、「すぐキレる」「場をわきまえず大声で騒ぐ」など感情表現がストレートすぎると、社会生活を営んでいくのに支障をきたす可能性もあります。いずれも円滑な対人関係を築くことが難しくなってしまいます。つまり、感情の理解や表出、さらにきちんとコントロールできるようになるよう導いてやることこそが、人間関係を結ぶうえで不可欠なのです。
いらない感情はありません。子どもの感情を一つひとつ受け止めて、社会性を伴った表現ができるように関わってあげるとよいのではないでしょうか。