子育てを「経済学的」視点で捉えると見えてくる意外な事実とは?

子育てと「経済学」は、あまりなじまないと感じる人が多いかもしれません。これまで私たちは、どちらかというと先人たちの経験的な知恵や知識に頼った子育てをする傾向が強かったと言えるでしょう。しかし、子育てを経済学的な視点で捉えると見えてくる事実があります。

子育てを経済学的な視点で捉えると見えることがある

最近、子育てに経済学的な視点を持ち込んだ書籍が立て続けにヒットしています。例えば、『「学力」の経済学』(中室牧子著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『幼児教育の経済学』(ジェームズ・J・ヘックマン著/東洋経済新報社)』などが挙げられます。

子育てを経済学的な視点から捉えると、どのような事実が見えてくるのでしょうか。上記の書籍から内容の一部をご紹介します。

子育てにおいて「ごほうびで釣る」のはアリ?

子どもに何かをさせたいときに、「ごほうび」を与えることの良し悪しを考えたことがある人は多いかもしれません。例えば、「しっかりと勉強をしたらお小遣いを増やす」といったやり方です。こうした方法は一時的な効果は高いかもしれませんが、ごほうびが目的になってしまうと、「学ぶことは楽しい」という気持ちを失わせるのではないかという心配がつきまといます。

この問題について、『「学力」の経済学』では、心理学の手法により内的インセンティブを計測したところ、ごほうびを与えた子どもと与えなかった子どもの間では、統計的に有意な差は見られなかったと指摘しています。つまり、ごほうびが勉強に対する気持ちを左右することはないということです。

同書には「テストの点数」「本を読むこと」のどちらにごほうびを与えると効果的かという実験結果も掲載されています。直感的には、テストの点数にごほうびを与える方がうまくいきそうな気がしますよね。ところが結果は逆でした。テストの点数などの「アウトプット」にごほうびが与えられる場合、「どんな勉強をするとよいか」という具体的な方法は示されません。ごほうびがほしくても、何をすればよいかがわからない状態では、結果の向上はあまり期待できないのです。一方、本を読むことなどの「インプット」にごほうびを与える場合、するべきことは明確です。そのため、インプットにごほうびを与える方が効果的というわけです。

大規模な実験が裏づける「非認知能力」の重要性

幼児期の早期教育というと、読み書きや計算、英会話といった「認知能力」を高めることに目が向きやすいのではないでしょうか。もちろん、そうした力が重要であることを否定しませんが、『幼児教育の経済学』では、アメリカにおける大規模な調査研究の結果として、幼児期から「非認知能力」を伸ばすことの重要性を強調しています。

非認知能力とは、がまん強さや根気強さ、協調性、思いやりなど、目に見えない力や姿勢などを指し、認知能力の土台になると考えられています。同書は、非認知能力の高さは、賃金や就労、労働経験年数、大学進学、健康管理、犯罪率などを左右し、社会的・経済的な成功をもたらす大きな要因になると指摘しています。認知能力だけに着目して、非認知能力を伸ばす視点がすっぽりと抜け落ちないように注意した方がよさそうです。

経験論だけではなく、科学的なデータも参考になる

ちまたにはあまたの「育児本」があり、その中には経験にもとづいて書かれたものが少なくありません。例えば、「子どもを東大に入学させた保護者が教える…」といったタイトルの本をよく見かけます。もちろん、そうした書籍にも経験に裏打ちされた有用な情報が多く含まれますが、一部の成功体験が万人に当てはまるとは限らないケースも少なくないでしょう。ときには視点を大きく変えて、科学的なデータにもとづいた方法論に目を向けてみると、貴重な発見がもたらされるかもしれません。

参考:
「「学力」の経済学」(中室牧子著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
「幼児教育の経済学」(ジェームズ・J・ヘックマン著/東洋経済新報社)

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