保護者が「沈黙」すると子どもは自ら話し出す

「家ではぜんぜん話そうとしないんですよ!」
「質問しても返ってこないんですよ!」
お子さんとのコミュニケーションにおいて、このように嘆かれる保護者のかたとしょっちゅう出会います。
親子で一緒に参加するコミュニケーション講座をしていますが、どちらかと言うと、「いいから! 一緒に行こう!」と言う保護者にしぶしぶついてきた、テンションがかなり低いお子さんがほとんどです。そんな時に、私がよく感じることを今回はお伝えします。

■親の「沈黙」がない対話

私:こんにちは! 今日は来てくれてありがとう! ○○さんは何年生ですか?
お母さん:ほら! 何年生? 答えて!
お子さん:……6年生。
私:そう! じゃあ、もうすぐ中学生だね! 入る部活とかもう考えてみた?
お母さん:……ほら! あれ! ……バレーボール、やるんでしょ?
お子さん:……ああ、まあ。
私:へえ! そうなんだ! バレーボールを選んだ理由は何なの?
お母さん:……だから、小学校からやってたんだよね?

終始、このような調子で、子どもより先に話し始める保護者のかたが、驚くほど多いのです。お子さんに質問しているのに、子どもが答えるまで黙っていられないようです。

「お母さん、ありがとうございます。○○さんと直接お話ししてもいいでしょうか?」と許可をとって、お子さんと向かい合ってみます。すると、最初はスローペースながらも、自分の言葉で、自分の気持ちを言える子がほとんどです。ゆっくり聴いていくと、日頃、考えていること、やってみたいことをどんどん素直に話してくれることに感動します。「今日は来てよかったです!」と笑顔で帰っていく姿に、思わず胸が熱くなります。

保護者のかたの前だと照れくさくて、よけいにしゃべらないという事情は、こういう場面では大いにありますが、「沈黙」の時間をつくってあげたら、お子さんはもっと自分から話せるのになあといつも思うのです。

■「沈黙」は子どもが考える時間

「沈黙」の時間がないと、子どもは、落ち着いて、自分の中に答えを探しにいけないのです。考えているそばから、「で、どうなの?」「こうじゃないの?」と言われてしまうと、もう考えること自体が面倒くさくなってしまって、考えることをやめてしまいます。その結果、何か話しかけられても、話さなくなってしまいます。

コミュニケーションをとっている時の「沈黙」の時間が苦手というかたは多いと思いますが、自発性を引き出す対話において、「沈黙」はとても大切な要素です。相手が自分で考え、自分で気付く時間なのです。それを奪ってしまうのは、非常にもったいないことです。

■深呼吸3回分待つ

子どもが答えるまでの「沈黙」の時間を、5秒も待てない保護者のかたが実はほとんどです。「せっかく、石川さんが質問してくださっているんだから、早く何か答えないと失礼でしょ!」というお気づかいもあるようですが、「今、お子さんが考えているところなんだから、もうちょっと黙って待ってあげてほしいなあ」と思わずにはいられません。

できれば、深呼吸3回分、30秒はただ黙って待つぐらいの気持ちで、「間」をとってみてほしいのです。「長いなあ」「ちょっと気まずいな」と感じるぐらい。それでもまだ足りないぐらいかもしれません。

「沈黙」の前に、「わかんない」と即答されたとしても、「そうなんだ」と受けとめ、「たとえば、◯◯はどうだったの?」と、質問を変えながら、ゆっくりゆっくり向き合ってみてください。答えをせかさない、先回りして言わない、ただ黙って待ってみます。
話しかけているのに、返してくれないお子さんには、もしかしたら、対話を急ぎ過ぎているのかもしれません。こちらが黙って、深呼吸をしながら聴くぐらいがちょうどいいように思います。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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