子どものやる気をなくす大人の言葉

高校2年生のMさんとの面談コーチングは、毎回、私自身がとても勉強になっています。日常生活で感じたことを、いつも率直に話してくれるからです。このコラムでも、「こうやって接すると、子どもはやる気になるんですよ」という方法をずいぶん書いてきましたが、必ずしも、「そうではないんだ!」という現実もいろいろ教えられます。
今回は、「こんなふうに思う子どももいる」というお話を、彼女の言葉を借りて、ご紹介させていただきます。


子どものやる気をなくす大人の言葉

■下手にほめると逆効果

Mさん:私が勉強していると、お母さんが「あ! 勉強してるんだー! えらいねー!」とか言ってくるんですよ。あれ! すっごいムカついて、かえって、やる気がなくなるんですよね。今まで、「勉強しなさい! 高校生が勉強するのは当たり前だ!」とか言っといて、ちょっと勉強していると、「えらいねー!」ってほめるんですよ。当たり前のことなんだから、大げさにほめることじゃないでしょ! なんか、おかしくないですか?

私:たしかに、言われてみれば、そうだよね。じゃあ、そういう時は、どうしてほしいの?
Mさん:別に何も言わなくていいんですよ。そっとしておいてほしい。勉強していない時は、「しなさい!」って言って、している時は、「やってるねー! えらいねー!」って言う。もう、いちいちうるさい! 黙って、そっとしておいてくれたほうが、やる気になるのに!

なるほど! たいへん勉強になりました。「やっていない時に言うのではなく、やっている時に、『やってるね。がんばってるね』と承認の言葉をかけてあげましょう」と、私もさんざんお伝えしてきましたが、大げさに言われると、それを嫌だと思う子どももいるようです。お子さんの様子を見極めて、集中しているようだったら、「そっと見守る」ことも一つの方法なのです。

■うっとうしい質問

Mさん:あと、お母さんから質問されるのが、もううっとうしいんですよ!
私:え? そうなんだ!

常日頃から、「質問を投げかけ、子どもが自分で考えるよう促しましょう」と伝えているコーチの私にとっては、なかなか手厳しいコメントです。

Mさん:お母さんが「ごはん食べる?』とか聞いてきて、「いらない」って言うと、「なんで?」って質問してくるんですよ。「おなかすいてないから」って言うじゃないですか。そうしたら、また、「なんで?」って。 おなかがすいていないから、すいていない、って言ってるのに、「なんで?」って言われても、なんて答えていいかわからないじゃないですか。自分だって、おなかがすいてないから食べないっていう日だってあるのに、いちいち「なんで?」ってうっとうしいと思いませんか? もうちょっと考えて、会話してほしいなって思うんですよね。

私:へえ、そうなんだ。じゃあ、そういう時は、大人としては、どうしたらいいのかな?
Mさん:「ふーん、おなかすいてないんだー」でいいんじゃないですか? 「なんで?」って言われると、「おなかがすいてないとダメ!」って言われてる感じで、ムカつくんですよね

たしかに、「なぜ?」「どうして?」の質問には、責められているニュアンスが感じられますね。こちらとしては、「どうしてなんだろう?」と純粋に理由を知りたくなる場面もありますが、Mさんが言うように、こちらが知りたい質問よりも、「相手の状況や気持ちを受けとめる」ことがまず大事なのだと思います。

■「理解したい」をベースに向かい合う

子どもの感じ方は、おのおのみんな違いますし、なかなか理論どおりにはいかないものです。しかし、毎回、Mさんと話していて、「Mさんを理解したい」と思うこちらの気持ちには、心を開いてくれるように感じます。「理解できない」と片付けるのではなく、「理解したい」という気持ちで、これからもさまざまな子どもたちと向かい合っていきたいと思います。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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