ホントの自己肯定感って何?自己肯定感を高めるために保護者ができることは?

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「自己肯定感」という言葉の意味を知っていますか? 「ポジティブ」「自信がある」だと思っているかたも多いでしょう。しかし、それは違います。本当の自己肯定感とはいったい何なのか……。正しく理解することで、親子ともに生きやすく幸せになれるはずです。

自己肯定感とは?

ありのままの自分を受け入れること

自己肯定感とは「ありのままの自分を認め、受け入れられる感覚のこと」です。「自分で自分を愛してあげられること」といっても良いでしょう。

これは、周りと比較する必要はないものです。周りに認められなくても、ほめられなくても、自分自身の価値を感じられる……。それが「自己肯定感がある」ということになります。

よく、「誰かにほめてもらえば自己肯定感が高まる」と思っている人がいます。しかしこれだと、ほめてもらえなくなったら自己肯定感が低くなるということになりますよね。周りの評価に左右されてしまうものは、本当の自己肯定感とはいえないのです。

自己肯定感と自信は違う?

自己肯定感と同じ意味で使われるのが「自信」です。ただし、この2つは異なるもの。自信は、自分の価値や能力を信じることです。これは、何かしらの根拠がないと生まれません。「成功したことがある」「前にほめてもらえた」などですね。対して自己肯定感は、無条件で自分を肯定することです。そこに理由や根拠は必要ありません。

また、「肯定」を「ポジティブ」と考える人も多いでしょう。ただ、これも違います。「自己を肯定する」というのは、良いところだけでなく悪いところも含めて、自分のすべてを認めてあげるということ。ポジティブ思考とは違うものです。

自信もポジティブ思考も大事ですが、何かのきっかけでマイナスに変化するかもしれない不安定なものです。だからこそ、どんな状態であっても揺るがない自己肯定感が大事になってきます。

自己肯定感が低い子どもの特徴

自己肯定感が低いと、生きづらくなったり、幸せを感じづらかったりします。子どもの場合はどんな特徴があるのか、見てみましょう。

ただし、発達の特性や性格、年齢によって、感情を表現するのが難しい場合もあるため、あくまで傾向として考えてください。

ほめられても喜ばない

自己肯定感が低いと、ほめられても素直に喜ばないことがあります。「どうせそんなふうに思ってないでしょ」「みんなできてるから全然すごくない」など、少しひねくれた形でとらえてしまうからです。この場合は、保護者のかたがどんなにオーバーにほめても伝わりません。

挑戦したがらない

始めから「できない」と決めつけて、挑戦を避けようとする特徴もあります。失敗や間違いを恐れるあまりに、新しいことや難しいことに挑戦できなくなってしまうのです。苦手なことを嫌がるのは当たり前ですが、すべてのことに対して挑戦したがらないのであれば、自己肯定感が低いのかもしれません。

自分の意見を言わない

自己肯定感が低い子どもは、自分の言うことや考えが間違っていると思っています。そのため、自己主張することができません。周りから見れば「そんなこと?」と思うことでも、怖くて意見が言えないのです。そのため、常に誰かの意見に従って、後をついていくことになります。親に決めてもらわないと動けないお子さまも同じです。

ネガティブな言葉が多い

「どうせ……」「私なんか」「自分はダメだ」など、自分を否定する言葉が多いのも、自己肯定感が低い子どもの特徴です。また、「嫌い」「むかつく」など、相手を拒否する言動も多い傾向にあります。

自己肯定感が低い原因とは?

自己肯定感は、自分自身で高めていくもの。しかし子どもの自己肯定感には、親を始めとする周囲の人の関わり方が大きく影響してしまうのです。

ネガティブな言葉ばかり使っている

子どもに対して、「それはダメ」「なんでできないの?」といったネガティブな言葉ばかり言ってはいませんか? こういった言葉が多いと、自己肯定感も低くなってしまう可能性があります。過剰なしつけもネガティブな言葉を使うことが多いため、要注意です。

結果ばかりに注目している

ほめるとき、結果ばかりに注目している場合は注意が必要。「上手」「できた」というほめ方ばかりだと、「下手」「できなかった」ときは認めてもらえないことになるからです。「たくさんほめているのに我が子の自己肯定感が低い気がする」というかたは、結果だけでなく、そこまでの過程や気持ちにも目を向けてあげると良いですね。

親がすべて決めてしまっている

「こっちにしなさい」「こっちの方がいいよ」など、保護者のかたがすべて決めてしまってはいませんか? これが繰り返されると、「私の意見はどうせ聞いてくれない」と思うようになります。危険なことでない限りは、子どもに決めさせてあげたいですね。

子どもの話を聞いてあげない

子どもと向き合う時間が少ない場合も、注意が必要です。もしかすると子どもは、「ママ・パパは私に興味がないんだ」と思っているかもしれません。四六時中相手をするのは難しいですが、1日10分でも良いので、手を止めて子どもと向き合う時間を作っていきたいですね。

自己肯定感を高めることでのメリット

失敗や困難を乗り越えていける

自己肯定感が高いと、失敗したり困難にぶつかったりしても乗り越えていけます。これは、ポジティブ思考とは違うもの。失敗を無視するのではなく、それを受け止めたうえで解決策を考え、乗り越えていけるようになるのです。

幸せだと思えるようになる

自己肯定感が高ければ、どんな状況であっても「これでいいんだ」「幸せだ」と思えるようになります。誰とも比較せず、自分自身の感覚で決められるからです。周りから見たら不幸だと言われるような人生であっても、本人が幸せだと感じていればそれで良いはずですよね。

周りに振り回されずに良好な人間関係が築ける

本当の意味で自己肯定感が高い人は、自慢をすることもありませんし、他人を批判したり周囲の意見に振り回されたりもしません。自分をしっかり持っている人を「カッコいい」と思うのは当然。結果的に人が集まり、良好な人間関係が築けるでしょう。

子どもの自己肯定感を高める方法

子どもの自己肯定感を高めるためには、保護者のかたがありのままを認めてあげることが大切です。そのための具体的な方法をご紹介します。

お手伝いをしてもらう

子どもがお手伝いをしてくれたら「ありがとう」とお礼を言いますよね。そうすると、「自分の行動を認めてもらえた」ということになります。

ここで大事なのは、結果に注目しないこと。完璧にできなくても、途中でやめてしまっても大丈夫です。失敗しても余計に汚してしまっても、子どもがお手伝いをしてくれたこと自体にお礼を言いましょう。

ただし、無理強いはしないように。気分が乗っているときにちょっとだけやってくれたら、それでOKです。その積み重ねが、自己肯定感を高めていきます。

教えるのではなく一緒に考える

すぐに答えを教えるのではなく、子どもと一緒に考えることも大切。そして、子どもが自分で決めたり考えたりする機会を増やしていきましょう。

たとえば宿題。つまずいたり間違えたりしたときに、「ここはこうだよ」とすぐに教えているなら、それをやめてみましょう。そして「どこまでできたの?」「どうしたらうまくいくかな?」と一緒に考えてみます。難しいときは、「AとBどっちだと思う?」という選択肢を出して、子どもに決めてもらうと良いでしょう。

すぐにアドバイスしたり教えたりするのではなく、子どもが自分で答えを出せるようにサポートしてあげましょう。自分で考えて決めるという経験が、自己肯定感を高めてくれます。時間も手間もかかりますが、長い目で見れば親子ともにプラスになるはずです。

お礼や嬉しい気持ちを伝える

子どもの自己肯定感を高めるためには、保護者のかたの気持ちを伝えてあげることも大事。「うれしい」「ありがとう」「大好き」など、言葉や態度にして伝えてみましょう。

一番大事なのは、存在自体を認めてあげることです。子どもが生まれた頃を思い出してみてください。何もできなくても、今日生きてくれているだけで十分だったのではないでしょうか? 「あなたがいてくれるだけで幸せ」という気持ちを、いつまでも忘れずにいてあげてください。

そして、しっかり伝えてあげましょう。思っているだけではうまく伝わりません。恥ずかしい気持ちもあるかもしれませんが、勇気を出して言葉にしたいですね。

「良いところ探し」をして伝え合う

良いところ探しも、自己肯定感を高める方法の1つです。探したらそれを伝えましょう。夜寝る前の「良いところ発表会」を習慣にするのもおすすめです。

1日のなかで、子どもの良いところを最低1個見つけます。そして、夜寝る前に伝えましょう。このとき「すごい」「上手」といった言葉は使わず、「靴を揃えていた」「ご飯をおかわりした」と具体的に伝えるのがポイント。当たり前のことでもOKです。ただし、マイナスのことは言わないようにしましょう。

悪いところばかり目についてしまう人でも、1日1個なら見つけられますよね。これを続けていくと、子どもの長所にもたくさん気付けるはずです。また、お互いに伝え合うことで、親子ともに自己肯定感が高まります。

昔の写真を一緒に見る

小さい頃の写真を見返すこと、ありますよね。実は、自己肯定感を高める良い方法なのです。

お子さまと一緒に写真を見ながら、思い出を語ったり成長を喜んだりしましょう。「楽しかったよね」「このときがんばってたよね」「大きくなったんだね」という感じです。そうすると子どもは、自分の存在を認めてもらえたと感じます。それが、自己肯定感を高めてくれるのです。

この時間は、親子のコミュニケーションにもなります。子どもの成長を実感できるため、保護者のかたの自己肯定感も高まるでしょう。

子どもの自己肯定感を高めるために親が注意したいこと

具体的な方法と合わせて、日常生活で注意してほしいことがあります。ついやってしまいがちなことを、ちょっとだけ意識して変えてみましょう。

「マイナスの言葉」よりも「プラスの言葉」

普段何気なく使っている言葉には、マイナスの言葉がたくさんあります。特に、子どもを注意するときです。

たとえば、「走らないで」という言葉は否定文ですよね。これを「歩いてね」という肯定文に変えます。意味は同じですが、受け取る側の気持ちはまったく違うはず。否定されていないため、子どももすんなり聞いてくれる傾向があります。

「~しない」「~しちゃダメ」を「~してね」「~した方がいいよ」に変えるだけで、日常のなかからマイナスの言葉が減っていきます。子どもを注意しないのではなく、注意するときの言葉を変えるということ。たったこれだけでも、自己肯定感は高まっていくのです。

「ほめる」よりも「認める」

ほめるのは良いことです。ただ、それよりももっとおすすめの方法があります。それが、認めることです。

これは難しくありません。子どもがやっていることを、そのまま言葉にして伝えれば良いだけです。「絵を描いてるんだね」「靴が履けたね」といった感じ。「絵が上手だね」「靴が履けてすごいね」と、ほめ言葉を使う必要はありません。ほめ言葉がなくても、「あなたのことをちゃんと見ているよ」ということが伝われば、自然と自己肯定感は高まるのです。

アドラー心理学では、「ほめるという行為は上からの評価になる」といわれています。自己肯定感を高めるためには、周りからの評価は必要ありません。子どもの存在や行動をそのまま認めてあげれば、それで十分なのです。

「励ます」よりも「寄り添う」

子どもが落ち込んでいれば、励ますこともあるでしょう。ただ、これも注意が必要。励ますよりも、まずは寄り添ってあげてください。

たとえば、子どもが転んだとき。泣いている子どもに向かって、「痛くないよ、大丈夫!」と言ってはいませんか? もちろん、良かれと思っての言葉でしょう。しかしこれは、子どもの気持ちを否定している可能性があります。

こういうときは、「痛かったね」「悲しいね」と子どもの気持ちに寄り添ってあげましょう。そうすると子どもは、「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じることができます。マイナスの状況も否定せずに受け入れていくこと。それが、自己肯定感につながっていくのです。

「一般論」よりも「自分の気持ち」

子育てをしていると、周りが気になることはたくさんあるでしょう。そんなときこそ、「自分はどうしたいのか」ということを考えてほしいです。Iメッセージを意識して、子どもと話をしましょう。

「みんなはこうなのに」「普通はこうするはず」と、世間一般の考えや情報に振り回されていませんか? それよりも大事なのは、自分の気持ち。子どもも、よくわからない「みんな」ではなく、目の前にいる保護者のかたの気持ちを聞きたいはずです。

もちろんこれは、非常に勇気がいること。周りと違う考えだった場合も、それを認めていかなければならないからです。そのためには、保護者のかたの自己肯定感も大切になってきます。

親自身の自己肯定感も大切に

自己肯定感は、大人になってからでも高められます。ただし、「誰かに高めてもらおう」というのは、本当の自己肯定感ではありません。逆に言えば、自分の行動次第でいくらでも高められるということです。

自分を優先してみる

子どもの自己肯定感を高めるために、自分を犠牲にしていたら意味がありません。ですから、まずは自分のことを優先してみましょう。

もちろん、仕事に育児にと忙しいなかでは、難しい場合もあるでしょう。それでも、ほんの少しだけ自分を優先してあげませんか? 「今日の夕飯は自分が食べたいものにする」「洗い物は後回しにして好きなテレビを見る」など、時々ならできることもあるはずです。

自分のやりたいことを優先すると、自分を認めたことになるそう。これは、ポジティブ心理学の考え方です。結果的にやることは同じでも、気持ちは変わってくるはず。自分を後回しにしがちな子育て中だからこそ、意識して行ってみてください。

「自己肯定感を高める方法」を自分にも応用してみる

子どもの自己肯定感を高める方法は、保護者のかたにも使えます。「プラスの言葉を使う」「一般論ではなく自分の気持ちを大事にする」「自分の良いところを探す」といった方法を、ぜひ試してみてください。

自分自身だけでなく、パートナーや家族に対しても意識していくと良いですね。そうすれば、家族全員が幸せになっていけるでしょう。

失敗は悪いことではない

イライラしたり、子どもを感情的に叱ってしまったりすることもあるでしょう。ミスばかり続く日だってあります。それも含めて、全部認めてあげましょう。

「今日はイライラしているなぁ」「嫌なことがあったからつい怒ってしまった」など、自分の気持ちに一度正直になってみてください。そのうえで、解決策を探していきましょう。「疲れているから早く休もう」「言い過ぎてしまったから謝ろう」という感じです。

「イライラしちゃダメだ」と、自分の感情を否定する必要はありません。失敗も間違いも全部受け入れてあげることが、自己肯定です。無理にポジティブになるのではなく、マイナスの部分も受け入れながら前に進んでいきましょう。

まとめ & 実践 TIPS

自己肯定感を高めるには、まず受け入れることから始めましょう。「自分は自己肯定感が低いかも」と認めることも、自己肯定感を高めるための1ステップ。失敗も受け入れながら、子どもと一緒に成長していく。そうすれば、自己肯定感は自然と高まっていくはずです。

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