「どうせ無理」という言葉をなくそう!その3「これからの時代に活躍できる子とは?」編

宇宙開発やTED×Sapporo講演で話題の植松努さん。「どうせ無理」という言葉を社会からなくし、夢を追い続ける大切さを伝えている植松さんに、子どもの夢と可能性を広げるヒケツを取材しました。今回はその3回目です。 ※2015年9月現在(取材・文/長谷川美子)

子どもが「言いなり」「思考停止」にならないよう注意

植松さんは、今の中学生が大人になるころの社会は、どうなっていると思いますか?

今の子どもたちは、かつてだれも経験したことがないほど、人口がどんどん減っていく社会を生きます。人口が減って経済が小さくなる、ということは単純に考えて、国内の売り上げは減っていきます。だから会社に就職しても、入社した年の給料がいちばん多くて、その後どんどん減っていくということも不思議ではなくなります。保護者世代にとって、初任給がMAXなんて、想像できないことだと思いますが、すでにその時代は始まりつつあります。だから「オレの若い頃は~」という保護者世代の経験談は、子どもの将来に全く通用しない時代になるでしょう。

また、企業のオートメーション化も世間が思っている以上に急速に進んでいて、メーカーでは、人間の働く場所はすでに少なくなってきています。近い将来、人間は0になると言われている産業も、すでに工場から人間が消えている産業もあります。それだけでなく宇宙飛行士は近い将来ロボットになる、という話もあるし、あと5~6年で、自分で車の運転をしなくてもよくなるとか、自動で買い物ができる時代になるとも言われています。

つまり、いくら勉強しても、身体を鍛えても、人間の働く場所は本当にどんどん減っていく社会になっていきます。とくに、「ぼくは何をすればいいんですか? 言われたことだけは一生懸命やります」という、指示を待つ感覚の人には、相当きびしい時代になると思いますよ。

そういう状況の中、今、日本の教育に求められていることも、「いかに個性を伸ばすか」という流れに変わってきています。ぼくも、うちのロケット教室に来てくれた子どもたちに、みんなと同じじゃなくて、これからは人とちょっと違うほうがいいよ、と伝えています。

個性があれば、その個性を求める人や場から必要とされます。でも個性がなければ、だれでも代わりになれます。それだといちばん安い値段で働く人が選ばれてしまう時代になるでしょう。もちろん、人に対して「自分は普通」と謙遜するのは美徳かもしれません。でも本当に「自分なんて普通」と思っていてはいけないんです。自分に対しては、常に「さすがオレ」と、心の中でスタンディングオベーションしているくらいでいいと思いますよ。

幼稚園の頃は、みんな諦めることを知らなかった

これからの時代、他の代わりの利かない、個性のある人が活躍できるというのは納得です。それは具体的にどんな人だと思いますか?

だれもやったことのないことに挑戦したがる人、自分で工夫していける人、0から1を生み出して新しい仕事を作り出せる人が活躍していけると思います。それは、指示されたことを遂行するだけのロボットにはできないことですから。

でも特別の才能は必要ありません。子どもたちはみんなそうなれる可能性をもっています。だって幼稚園児たちに「このボタン押してみたい人~?」と言うと、押したくてみんな一斉に手を挙げますよ。やったことのないことを、「だってやったことがないし…」と諦める子はいません。それを見るたび、人は本来、やったことのないことをやりたがるように生まれてきたはずなんだとぼくは思います。

ところがそんなやる気に満ちた子どもたちが、いつから、言われたことだけしかやらないようになるのでしょうか。それは何かやろうとしたら、「失敗したらどうするの?」「どうせ無理」「それで食べていけるの?」などと、だれかに諦めさせられたときではないでしょうか。または、失敗を叱られたり責められたりしたときからではないでしょうか。

そうやって、諦めることを教わったとき、子どもたちは、聞き分けがよくて、都合がよくて、だれかの指示に従うだけの、まるで悪の組織の戦闘員ように成長してしまうのだとぼくは思います。

自分で考えて、自分で試した経験こそがその子だけの個性になる

どうすれば子どもの個性を積極的に伸ばせると思いますか?

ぼくが子どもたちにおすすめしている方法は、自分で考えて自分で試すことです。自分で考えて自分で試したことは自分だけの経験ですよね。その経験こそが、その人の本当の個性となります。

でも当然、自分で考えて自分で試すと、失敗もします。保護者は、失敗に罰を与えないよう気をつけることが必要です。失敗に罰を与えるような環境では、何も挑戦できない人、失敗できない人が増えてしまいます。学校でも、会社でもそうです。

失敗したときに大事なのは、「何で失敗したんだろう?」「だったらこうすれば?」と考えることではないでしょうか。失敗の経験は、成功のためのデータにすればいいだけなんです。

もし子どもに「失敗したらどうするの?」と言いたくなったら、自分だって失敗してきたことを思い出してください。先回りして失敗させまいとしていると、子どもは本当にダメになってしまいます。新しいことに挑戦しなくなるんです。

子どもはだれかの言うことを聞くために生まれてきたわけではありませんよね。あれをやってみたいな、これをやってみたいな、と希望をもって生まれてきたのではないでしょうか。もし子どもたちみんなが、「自分なんて…」「どうせ無理…」と言わなくなったら、未来の世界がずいぶん変わり、世の中が救われるとぼくは信じています。

人の夢を奪う連鎖を止める言葉が「だったらこうしたら?」

どうして子どものやりたいことを、否定したり、諦めさせたりする大人がいるのだと思いますか?

「どうせ無理」という言葉で子どもから夢を奪ってしまう大人たちも、子ども時代、きっとだれかに夢を奪われたのだとぼくは思います。夢を奪われた子どもが大人になり、今度は自分の子どもや他の人の夢を「どうせ無理」と奪ってしまう。これは本当に残念な連鎖です。

でもその連鎖はたったひと言で止めることができます。その言葉が「だったらこうしたら?」です。ぼくは子どもたちだけでなく、保護者の方にも、いつまでもやりたいことに挑戦してほしいと思っています。大人になって何かの職業に就いてしまったら、それで夢が終わるわけではないはずです。「何になろう」ではなく、「何をやりたいか」。それが夢です。だったら大人だって、たくさんの夢を追いかけることができるし、追いかけることでずっと成長し続けることができるはずなんです。

打ち上げに成功したロケット

3回にわたる植松努さんの「どうせ無理」という言葉をなくす話、いかがだったでしょうか。「だったらこうしたら?」をまずは家庭内からはやらせて、お子さまやご自身の可能性をどんどん伸ばすことができたらすてきではないでしょうか。


 

プロフィール

(株)植松電機 専務取締役 植松努さん

(株)植松電機 専務取締役 植松努さん

1966年北海道芦別生まれ。 子どもの頃から紙飛行機が好きで宇宙に憧れ、独学で飛行機やロケットを学び始める。北見工業大学で流体力学を専攻し、名古屋で航空機設計を手がける会社に入社。1994年に父が経営する(株)植松電機へ入社。1999年よりリサイクルに使う分別用マグネットを開発し全国シェア1位に。2004年、北海道大学大学院の永田晴紀教授とともにロケット開発もスタート。2006年、株式会社カムイスペースワークスを設立し、ロケットや人工衛星の研究開発で実績を重ねる。全国各地での講演やモデルロケット教室を通じて、人の可能性を奪う言葉である「どうせ無理」をなくし、夢を諦めないことの大切さを伝えている。2010年4月より北海道の赤平市にて「住宅に関わるコスト1/10、食に関わるコストを1/2、教育に関わるコスト0」の実験を行う「ARCプロジェクト」を開始。著書に『NASAより宇宙に近い町工場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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