子どもに「ママの機嫌」で行動させない アンガーマネジメントのすすめ

「アンガーマネジメント」とは、怒り(Anger)やイライラした感情とうまくつきあっていくことを目的とした、心理教育のことをいいます。「怒らないこと」を目的としたものではなく、怒りの感情によって自分や周囲の人々が負の感情に包まれることがないよう、怒りの連鎖を断ち切ることを目指したものです。この記事では少しでも冷静に、適切にお子さまと向き合えるよう、アンガーマネジメントの考え方の一部をご紹介します。


子どもの正しい理解がなければ、叱っても次の正しい行動につながらない

 家庭や学校、友達間のルールを守らない子どもを叱ることは必要なことです。しかし、子どもにとってとても難しいのが、やっていいことと悪いことの境界線を見極めること。「だめでしょう」という言葉を連発しても、今やったことの「何が」だめだったのか、「どうすれば」やってもいいことだったのか、ということがしっかり理解できなければ、次の正しい行動につなげることはできません。

 

 

今自分がもっている「べき」を子どもが理解できるようしっかり伝える

 そもそも、人にはそれぞれ「こうすべき」という自分の中で定めている基準があります。これはここに置いておくべき。遅刻はしないようにすべき。部屋は常にきれいに保っておくべき。「べき」はどれもその人にとって正しいことです。

 

しかし、この「べき」は人によって異なり、自分にとって「べき」であっても相手にとっては「べきというほどではない」ということも多いもの。大人同士であっても「べき」の違いは山のようにあるのに、「こんなことわかるでしょう?」と子どもに求めても、それは無理なお話。また、この「べき」という理想と現実の食い違いに怒りやイライラの感情が生まれます。ここで重要なのは家庭で守る「べき」の内容を、子どもにわかる言葉で具体的に伝え、なぜそれを守らなければいけないのかを理解させることなのです。

 

たとえば、「時間を守ること」ひとつとっても「べき」の程度は違います。

 

A「何があるかわからないから、30分くらい余裕をもって約束の場所につくように家を出よう」

B「約束の5分前にはつくように支度しよう」

C「約束のちょうどぴったりした時間につけばいい」

D「約束の時間を多少過ぎてもいいから、せめて連絡はしよう」

 

Aが基準の人にとって、Dは「あり得ない考え」である可能性は高いもの。子どもが求めているのはこのようなはっきりとした「Dはだめ」「Cは避けたい」「Bを目指したい」といった基準なのです。

 

 

保護者の主張が不安定だと、子どもの基準は「保護者の機嫌」に

 もし上記のようにご家庭の「べき」をはっきりさせて説明していなかったり、日によってCだったりDだったりと安定していなかったりすれば、子どもの基準は「親が怒らないこと」になってしまいます。つまり、子どもに自分(保護者)の機嫌をとらせていることになってしまうのです。親の機嫌で子どもの行動を左右させることが適切なことでないのは、誰もが理解できるはず。だからこそ、必要なのは感情に任せた強い言葉ではなく冷静でわかりやすい説明であり、常に安定した位置に基準を定めておくことなのです。さらにご家庭の基準を定めたら、子どもに「どうしてだと思う?」と質問し、なぜ守ることが必要なのか理解度を確認すると良いでしょう。

 

このように考えると、アンガーマネジメントは決して感情のみをコントロールするものではなく、日々の行動を理論的に考えることから始まるものだということがわかります。怒りは感情表現のひとつであり自然なものです。無理に消そうとはせずに怒りと上手く付き合っていく事が大切です。怒りやイライラを「ゴミ箱ノート」をつくって書き出す、「タイムを宣言」して、その時間は気分転換するなど様々な方法があります。

 

ご紹介したのはアンガーマネジメントのごく一部の考え方ですが、ぜひ一度お子さまとの日々のやりとりをアンガーマネジメントの考え方にあてはめて考えてみてください。ご自身の怒りの感情を分析し、断ち切る助けになるかもしれません。

 

 

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