海外転勤でぶつかる言葉の壁 「英語」とどう向き合う?
共働きで長女は中学3年生の沓澤(くつざわ)家。夫のロンドンへの転勤を機に妻は仕事を辞め、一家でロンドンに渡った。渡英から約10カ月となる生活の中で、英語との付き合い方について感じることを、妻の糸氏に伺った。
***
日本を出るまでは、仕事や引っ越しなどを言い訳に、買ってきた英語の本の表紙すら開くことはありませんでした。準備は不十分、しかもイギリス英語は発音も独特らしい……不安が募る旅立ちとなりました。
暮らし始めた当初は、英語への自信のなさから出かけるのが面倒でした。でも、娘の学校が始まる前に、母娘でロンドンの街や地理にも慣れておきたい、という思いも。意を決して娘を連れて近所のお店やショッピング街へと出かけたところ、周りから聞こえてくるのは、意外にも英語ではない言葉ばかりでした。
ロンドンは今や世界きっての多人種・多文化社会。皆、それぞれの母語のイントネーションなどの「なまり」を持っているので、日本人も気おくれする必要なんてないのです。それからは、たとえ単語の羅列でも、とにかく話してみようと心がけています。語学は、使ってみて、その失敗から学ぶことも大切だと実感しています。
今の自分には少し高めのレベルの、語学学校にも通っています。クラスの生徒は、それぞれの「お国なまり」をものともせず、猛烈な勢いで話します。自分が話さなくてもレッスンが進んでいく状況に尻込みしましたが、高い授業料の元が取れない! と覚悟を決めて発言するようにしました。すると、私の話に興味を持ってくれるではありませんか。
英語が上手いか、発音がいいか……日本人のコンプレックスはそういうことに向かいがちですが、意外とそこは壁にはならず、関心を持てる話題があるか、伝えようとしているかの姿勢が大切なのだと感じました。英語に限らず、外国語を学ぶことは、違う社会や文化を深く理解していくこと。そこから、自分たち自身をよりよく理解できるようになるのだと感じています。