世界的ダンサー・小林十市氏が語る、家族が家族でいるためのフランス移住
フランスに移住し、奥さまと8歳のお嬢さんの3人で暮らしている俳優・バレエ指導者の小林十市氏。祖父に人間国宝の故・5代目柳家小さん師匠、弟は落語家の柳家花緑さんを持つ小林氏に、ご自身の挫折とそこから見えたもの、家族と自分のために行った選択と子どもとの未来について伺った。
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2003(平成15)年、腰の故障で、ベジャール・バレエ団の退団を余儀なくされました。もう踊れない……そんな時にもらった弟の花緑からの電話や、師であるベジャールさんの言葉が、忘れられません。その後、演技の勉強をゼロから始め、お仕事をいただけるようになり、結婚し、家族もできました。さまざまな人が声をかけてくれ、感謝を知ったことが、最大の学びです。
結婚後しばらくして妻と娘はフランスに帰りました。年に2回ほど渡仏して家族のもとで過ごし、あとは毎日インターネット電話サービスで話していました。ところが、8歳になる娘は、僕がフランスから日本へ帰るのが面白くないようで、見送りにも来てくれなくなりました。その光景を思い出すたび、心が痛みました。
なかなかフランスに住む決心がつかなかったのですが、家族を幸せにしてあげられなかったと後悔するのは嫌でした。一緒にいられるのは今しかない。舞台の仕事は、しばらく脇に置いておけばよいと考えたのです。
娘の教育では迷うことばかりです。習い事も、やめたいならやめたらいいと思います。けれど、続けるからこそ身に付くものもあるし、技術が身に付いて面白くなる手前でやめちゃうのはどうなのかな……難しいですね。
子どもと向き合ううえで大切なのは、笑うこと。真剣になっても、深刻にはならない。一日最低一回でも家族と笑いあえたら、なんとかなるような気がしています。家族が家族でいるために必要なのは、そういうシンプルなことかもしれません。