2022年都立中高一貫校受験者動向・適性検査問題分析

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2022年2月25日に森上教育研究所が主催する「2022年適性検査型入試 首都圏中学入試の結果と分析」セミナーがオンラインで行われました。今回は、ena小学部部長青木繁和氏の発表をもとに、今年の都立中高一貫校の受験者数・倍率等の入試概況と適性検査の出題傾向を詳しくお伝えします。

都立中高一貫校10校の総受験者数は減少傾向

大泉高附属中、両国高附属中の定員増もあり倍率は4.40へ

都立中高一貫校は10校ありますが、その総受験者数は2022年は6,789人で都立全体で減少傾向が続いています。今年はさらに大泉高附属中、両国高附属中が高校募集を停止したため中学入試での定員を増やしたことで、全体の倍率は4.40倍に下がりました。

2023年には白鴎高附属中も同様に高校募集を停止し、中学入試の定員を増やすと見込まれているので、倍率はさらに下がっていくと考えられます。この傾向は今後しばらく続き、倍率は最終的に3倍台で落ち着き、現状より合格しやすくなると予想しています。

大学進学実績の好調な学校の人気は上昇

学校ごとの倍率に着目すると前述のように大泉高附属中、両国高附属中は定員が増えたため倍率が前年よりかなり下がっていますが、その他の学校も前年より倍率が緩やかに下がる傾向にあります。そうしたなかで、倍率を伸ばしたのが、富士高附属中、立川国際中、三鷹中の3校です。この3校に共通するのは、大学進学実績が好調であるという点です。

難関4大学、国公立医学部の合格率を見てみると、都立2トップの位置を確立している武蔵高附属中と小石川中は合格率を着実に伸ばす一方、その他の都立中高一貫校は年度によって増減があります。2021年度については、富士高附属中、立川国際中、三鷹中の3校の躍進が目立ったことで、倍率が高くなったのでしょう。反対に両国高附属中については、難関大等の合格率が低下したことが、倍率の低下に拍車をかけたと考えられます。

適性検査共同作成問題傾向分析

都立中高一貫校では、複数の学校が共同で作る入試問題と各学校が独自で作る入試問題とがあり、各学校でそれを組み合わせて出題しています。ここでは、前者の共同作成問題の2022年度の傾向について解説します。

適性検査Ⅰ:読解問題は難化、作文も構成力がより求められる

まず適性検査Ⅰですが、2つの文章を読ませて読解問題と作文を課す形が続いています。問題2の読解問題では、文章2の傍線部を文章1の言葉で説明させるといった文章横断型の問題が毎年出題されていますが、今年はやや傾向が違う点がありました。

これまでは論理の筋道を丁寧に辿れば答えが見つかる形式のものがほとんどでしたが、今年はヒントとなる足がかりがなく、きちんと文章の内容を読み取り抽象化することで、同じ内容が書かれている箇所を探すという一段階難しい読解問題となっていました。問題2の読解問題も同様に抽象化して読み取ることが必要な問題が出題されており、小手先の読解力ではなく、本当の意味での読解力が要求されています。

作文に関しても、2019年以降は3つの段落にそれぞれ何を書くかが明確に指定されていたため、構成力はそれほど求められていませんでした。しかし、今年は久しぶりに段落ごとの内容の指定がない作文問題となりましたので、より構成力がシビアに求められる問題となったといえます。

適性検査Ⅱ:算数系は問題の取捨選択が合否の分かれ目に

次に適性検査Ⅱですが、大問2の社会系の問題は極めて平易で差が付かない問題でしたので、理系の問題に絞って解説します。大問1の算数系の問題1は解くための方法を見いだすこと自体は比較的容易な問題でした。しかしかなり時間がかかる問題であるため、手を出したはいいものの時間内に最後まで解ききることができなかった受験生が今年の不合格者には多かったと考えられます。逆に手を出さずに他の問題を確実に取った方が合格しやすかったでしょう。

問題2についても立体を転がすという定番の問題だったのですが、これも同様に解ききるにはかなりの時間を要する問題でした。仕組み自体は簡単で手を出しやすい分いかに早く「時間がかかるから飛ばす」という判断ができたかが鍵となりました。算数系については総じて時間がかかる問題でしたので、ここに時間を費やさずに他の問題を着実に解けたかが合否の分かれ目といえます。

適性検査Ⅱ:理科系では共同作成問題初の化学問題

大問3の理科系の問題は、これまで共同作成問題では出題されてこなかった化学系の問題が初めて出題されたことが今年の特徴といえます。傾向を気にしている受験生は少し驚いたかもしれませんが、指示に従って解いていけば正解に辿り着ける問題で、与えられている情報自体も比較的読み取りやすいものだったので、問題を解くこと自体は簡単だったと思います。

ただ最後の問題2の(2)の問題に関しては、実験の内容と結果を追いかけるだけでかなりの時間を要し、実際に解くのにも時間がかかる問題でここで点数を取れた受験生は少なかったと考えられます。大問1の算数系の問題同様、時間がかかることを早めに判断する必要がありました。

適性検査Ⅱは文系、理系合わせた全体を通して時間内に解ききって点数が取れる問題と、時間がかかり点数が取れない問題とがはっきりと分かれていました。そこの取捨選択を適切に行えたか否かが合否の分かれ目となったのが、2022年度の特徴といえます。

まとめ & 実践 TIPS

都立中高一貫校10校の総受験者数は減少傾向にあり、2022年の全体の倍率は4.40倍になりました。ただし大学進学実績が好調な学校については倍率が上昇しています。共同作成問題の2022年度の傾向は、適性検査Ⅰについてはやや難化し、小手先ではない本当の意味での読解力、構成力が要求される問題となりました。適性検査Ⅱは、点数が取れる問題と、時間がかかり点数が取れない問題とが分かれていたので、その取捨選択が合否の分かれ目になったといえます。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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