【都立中高一貫校】私立学校との違いや特色のある教育とは? 入試対策も解説

  • 中高一貫校

都立中高一貫校は、特色ある教育方針と高い合格実績で近年人気を集めています。教育内容や選抜方法は私立中学校とどのような点が違うのか、そしてどのように対策を行えばよいのかについて、森上教育研究所がお伝えします。

この記事のポイント

都立中高一貫校とはどのような学校?

東京都教育委員会では都立中高一貫校を「6年間の一貫教育の中で、社会の様々な場面、分野において人々の信頼を得て、将来のリーダーとなり得る人材を育成することを目的とする学校」と定義しています。都立中高一貫校には、次の2つの種類があります。

(1)中等教育学校

  • 小石川中等教育学校
  • 桜修館中等教育学校
  • 立川国際中等教育学校
  • 南多摩中等教育学校
  • 三鷹中等教育学校

(2)併設型(都立中学校+都立高校)

  • 白鷗高校・附属中学校
  • 両国高校・附属中学校
  • 武蔵高校・附属中学校
  • 富士高校・附属中学校
  • 大泉高校・附属中学校

(1)(2)とも無選抜で高校に入学できるため、6年間の一貫教育の中で部活や課外活動などに打ち込むことができます。(1)については高校段階からの入学者募集はなく、(2)では接続する都立高校の入学者募集も行うのが特徴ですが、(2)の併設型も高校段階での募集は今後停止することが決まっています。また(1)の立川国際中等教育学校は2022年度より附属小学校が開校し、小中高一貫校となることから英語教育などの特色ある教育に期待が集まっています。

都立中高一貫校ならではのメリットとは?

地域に根差した教育や独自の文化がある

地域に根差した教育を行う学校が多いのも都立中高一貫校の特徴の一つです。東京都では特に中高一貫校になった都立高校は伝統校が多く、学校ごとに独自の文化があります。

特定の分野に力を入れた特色あるカリキュラムがある

都立中高一貫校は、学習指導要領に沿って授業が進められますが、特定の分野に力を入れた学校独自のカリキュラムで深い学びが実現できるところによさがあります。入学直後の中学1年生の段階で勉強の習慣をしっかりと付けさせたうえで、6年間を見通した一貫性のあるカリキュラムで大学受験に備えられる点もメリットです。

自主性の高い中高生活を送ることができる

都立中高一貫校の校風は、学校にもよりますが自主性重視のところが多いと言えます。多くの場合、生徒たちは先輩の背中を見て、「自分も頑張ろう」「僕にもできるはずだ」という思いを強め、学校行事に主体的に取り組み、学びに向かう姿勢を身につけていきます。

学費が安くても質の高い教育を受けられる

私立中学校→私立高校では、6年間の学費が約713万円かかるのに対して、公立中高一貫校では約283万円で、公立中学→公立高校へ進学する金額と同等程度です。経済的な負担が小さいというのは大きなメリットと言えます。
※1 文部科学省「平成30年度 子供の学習費調査」の「学習費総額」の値(学校教育費のほかに、給食費、学校外活動費が含まれます)。調査は全国平均です。

私立中学校との入試の違いとは?

都立中高一貫校の入試は様々な面で私立中学入試と異なります。

都立中高一貫校の入試日程

まず、都立中高一貫校は2月3日に一斉に入試が行われます。そのため都立中高一貫校は一校しか受験できず、他の日程の私立中学を併願先として選ぶことになります。

入試における合否判定の方法

入試の合格判定は、小学校での成績をまとめた報告書と作文を含む適性検査の合計点をもとに行います。報告書とは小学5・6年生の成績表を点数化したものでいわゆる内申点です。都立中高一貫校では、この内申点の比重が高く、高校受験で言えば「都立トップ校」並みの「オール5」に近いレベルが求められます。

都立中高一貫校の適性検査

適性検査は、基本的に選択式の回答ではないという点が特徴の一つです。記述式を中心としており、選択式の設問であっても「正しいと思うものを全て選べ」といった形であるため「たまたま正解した」ということはなく、本当に理解していないと正解できない問題となっています。
適性検査のもう一つの特徴が、国語・算数・理科・社会といった単独の教科知識ではなく、複数の教科を横断する力を問う合科的な問題が出題される点です。知識を活用し、論理的に考える力が問われます

都立中高一貫校入試の受験者数や倍率の状況は?

実際の都立中高一貫校入試の2021年度入試における受験者数や倍率は以下の表の通りでした。いずれも高い倍率ですが、特に例年女子の倍率は高めになる傾向があります。

都立中高一貫校<男子>2021年度入試結果

学校名 試験名 入試日 偏差値 定員 科目詳細 受験者 受験者
前年比
実倍率
東京都立三鷹 一般枠 2/3 58 80 適性検査Ⅰ・Ⅱ・報告書 430 97.3% 5.38
東京都立桜修館 一般枠 2/3 60 80 適性検査Ⅰ・Ⅱ・報告書 392 104.5% 4.90
東京都立両国高等学校附属 一般枠 2/3 60 60 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 388 102.6% 6.47
東京都立小石川 一般枠 2/3 66 77 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 372 92.3% 4.71
東京都立南多摩 一般枠 2/3 58 80 適性検査Ⅰ・Ⅱ・報告書 368 93.4% 4.60
東京都立白鷗高等学校附属 一般枠 2/3 57 63 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 304 84.0% 4.47
東京都立大泉高等学校附属 一般枠 2/3 60 60 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 295 100.0% 4.92
東京都立武蔵高等学校附属 一般枠 2/3 62 80 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 275 119.6% 3.44
東京都立立川国際 一般枠 2/3 57 65 適性検査Ⅰ・Ⅱ・報告書 239 100.0% 3.68
東京都立富士高等学校附属 一般枠 2/3 57 60 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 228 75.5% 2.85
東京都立立川国際 海外帰国・在京外国人生徒枠 1/25 - 15 作文・成績証明書等 31 100.0% 2.21
東京都立白鷗高等学校附属 海外帰国・在京外国人生徒枠 1/25 - 12 作文 28 103.7% 3.11
東京都立白鷗高等学校附属 特別枠 2/1 - 5 囲碁将棋分野or邦楽・邦舞・演劇分野DVD・報告書 4 80.0% -
東京都立小石川 特別枠 2/1 - 3 作文・報告書 1 50.0% 1.00

都立中高一貫校<女子>2021年度入試結果

学校名 試験名 入試日 偏差値 定員 科目詳細 受験者 受験者
前年比
実倍率
東京都立桜修館 一般枠 2/3 62 80 適性検査Ⅰ・Ⅱ・報告書 538 99.4% 6.73
東京都立三鷹 一般枠 2/3 58 80 適性検査Ⅰ・Ⅱ・報告書 441 94.2% 5.51
東京都立白鷗高等学校附属 一般枠 2/3 59 63 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 437 90.3% 6.52
東京都立南多摩 一般枠 2/3 58 80 適性検査Ⅰ・Ⅱ・報告書 422 92.1% 5.28
東京都立両国高等学校附属 一般枠 2/3 63 60 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 416 96.1% 6.93
東京都立立川国際 一般枠 2/3 59 65 適性検査Ⅰ・Ⅱ・報告書 389 100.0% 5.98
東京都立大泉高等学校附属 一般枠 2/3 60 60 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 387 100.0% 6.45
東京都立小石川 一般枠 2/3 66 78 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 366 92.0% 4.58
東京都立富士高等学校附属 一般枠 2/3 59 60 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 270 87.1% 3.38
東京都立武蔵高等学校附属 一般枠 2/3 65 80 適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・報告書 211 80.5% 2.64
東京都立立川国際 海外帰国・在京外国人生徒枠 1/25 - 15 作文・成績証明書等 31 100.0% 1.94
東京都立白鷗高等学校附属 海外帰国・在京外国人生徒枠 1/25 - 12 作文 26 104.0% 1.73
東京都立白鷗高等学校附属 特別枠 2/1 - 5 囲碁将棋分野or邦楽・邦舞・演劇分野DVD・報告書 2 40.0% 2.00
東京都立小石川 特別枠 2/1 - 2 作文・報告書 0 0.0% -

都立中高一貫校の入試対策のポイントは?

都立中高一貫校の報告書対策

報告書対策については、日頃から提出物や課題を真面目にこなすことに加えて、早めに担任の先生と懇談の機会を持つことが大事です。都立中高一貫校を志望していることを伝えて成績評価でどのような点が重視されるか、どういう点に気を付ければよいか確認しておきましょう。さらに、昨年一昨年で、志望の都立中高一貫校に合格したお子さんの情報を聞くのも一つの方法です。一般的には、内申で高く評価されるお子さんは、活発で学校生活を楽しんでいるお子さんです。実際に志望校に合格されたお子さんが小学校生活でどのような行動をとっていたのか、先生に詳しくお聞きできるとご家庭での内申対策の参考になります。

都立中高一貫校に合格するために、塾は必要?何年生から通うべき?

適性検査の対策のためには塾に行かれるのが無難かと思います。私立中学をメインで受験される方は、4年生から塾通いをされる方が多いですが、都立中高一貫校の場合は早くても5年生からで十分でしょう。また、塾での勉強の量も私立を志望される場合と比べると少なくなっているので、過度の受験勉強は避けられるでしょう。ただ、本質的な学力が問われますから、塾で形式に慣れていくことに加えて、学校の授業を通していろいろな見方や考え方を議論する機会を持っておくことも大事です。

都立中高一貫校に向いているのはどんなタイプ?

都立中高一貫校で求められているタイプ

都立中高一貫校で求められているのは、授業で活発に発言するような勉強に積極的なお子さんです。さらに、学業の成績に加えて「生きる力」、みんなとコミュニケーションをとってうまくやっていく「非認知能力」の高いお子さんは都立中高一貫校に向いていると言えるでしょう。

ご家庭によっては私立を選択したほうがよいケースもある

もし、親御さんが学校に一定のカラーや雰囲気を求める場合は、私立を選択されたほうがよいかもしれません。都立中高一貫校は公立ですから、さまざまなご家庭からいろんなお子さんが集まってきます。そうした多様性に開かれているという点を評価できるご家庭であれば、都立中高一貫校が向いていると言えます。





都立中高一貫校のメリットまとめ

  • ・地域に根差した教育や独自の文化がある
  • ・特定の分野に力を入れた特色あるカリキュラムがある
  • ・自主性の高い中高生活を送ることができる
  • ・学費が安くても質の高い教育を受けられる

まとめ & 実践 TIPS

入試は東京都の場合は2月3日に一斉に入試が行われるため都立中高一貫校で受けられるのは1校のみです。合格判定は、報告書と作文を含む適性検査の合計点をもとに行います。授業で活発に発言するような勉強に積極的なお子さん、みんなとコミュニケーションをとってうまくやっていけるお子さんは都立中高一貫校に向いていると言えます。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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