入試に出る本教えます(4)2021年度国語入試では「生き方」「考え方」を問う本が出る?読んでおきたい2冊はコレ【中学受験】

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入学試験問題は、その時代に求められている学力の傾向が色濃く反映されるものです。現代は、高度に発達した情報社会ですが、その中で、情報に惑わされず自分の頭で考えて判断する能力が強く求められています。国語の試験においても、そうした「考える力」を試す問題が増えてきています。

『君たちはどう生きるか』が問い続けているもの

3年前に『君たちはどう生きるか』という本が、漫画を加えて装いを変えベストセラーになりました。昭和の初めに書かれた、吉野源三郎さんの古典的な名著です。人としてまっとうな「生き方」をするために、周囲の同調圧力に屈することなく真実を求めて、「自分の頭で考える」ことの大切さをつづる内容で、過去の中学入試でもよく使われていました。この本で問われている内容は、コロナウイルスによってさまざまな情報や圧力に揺さぶられている現在の社会において、より重要なテーマとなっているように思います。

最近目立つのが哲学的な内容の本がよく使われることです。池田晶子・内田樹・養老孟司・鷲田清一といった思想家の文章は、かなり歯ごたえがありますが当たり前のように出題されています。素材文の選び方から、思考力を試す意図が出題者にあるのだと思われます。

もう一つ、『君たちはどう生きるか』と同じように、若い人向けに「生き方」「考え方」を問う本がベストセラーになりました。それは、次の本で、中学入試でもよく使われています。テレビでも取り上げられ話題になりました。

菅野仁『友だち幻想』(ちくまプリマー新書 2008年3月刊)
出題校=東邦大付属東邦後期(20)、中央大附属横浜2回・星野学園理数選抜2回(19)、世田谷学園(18)、東京女学館・足立学園(14)、東海大付属浦安・聖セシリア女子(13)、和洋国府台女子(11)、日大藤沢(10)、聖光学院・大妻多摩・立教女学院(09)

生きていくうえでの幸せや苦しみは、他者との関係から生じています。人としての生き方を考えるうえで重要なカギになる「友だち」。友だちというものに抱く「幻想」の正体や人間関係の根本を考察し、いかに生きていくべきかを問う内容の本です。年少者が身近なところから「考える」テーマとして、入試問題によく使われるのもうなずけます。

来年の「入試に出る本」は?

では、来年の「入試に出る本」教えましょう。
今年の新刊書の中で、年少者に向かって、「生き方」「考え方」を問うている作品を二つ挙げておきます。

池上彰『なんのために学ぶのか』(SB新書 2020年3月刊)
梨木香歩『ほんとうのリーダーのみつけかた』(岩波書店 2020年7月刊)
お二人は、この本の中でも『君たちはどう生きるか』を必読の書として若い人たちにすすめています。そして、現代の社会に即して、生きるうえでの「学ぶこと・考えること」の大切さをわかりやすく語っています。いずれも中学入試でよく使われる著者ですので、来年度以降の問題としても使われると思われます。

まとめ & 実践 TIPS

「考える力」を育てるには、さまざまな教科の知識を身に付けることが前提になりますが、そのうえで、さまざまな「考え方」を知ることが大切です。優れた考え方を知るには、優れた人物の伝記を読むことがよいでしょう。読書習慣を身に付けながら「考える力」を育ててほしいと思います。

プロフィール



森上教育研究所にて、長く国語入試問題の分析を担当。現在に至るまで、数多くの学習塾・予備校の国語テキスト、模擬試験を作成。30年以上続けている中学入試の国語分析は、もはや趣味として楽しむ領域。小学生向けの国語の問題・参考書の執筆多数。

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