人気国公立・早慶上智編 2020年度入試で学力を伸ばした中高一貫校は?【中学受験】

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志望校を決める際、学校自体の偏差値と大学合格実績も大事ですが、入学後にどれだけ学力を伸ばすことができるかというのも、重要な視点です。今回は、森上教育研究所が人気国公立大学と早慶上智の進学実績をもとに、それぞれの学校がどれくらい学力を伸ばしたのか男女別に分析を行いました。ぜひ、志望校選びの参考にしてみてください。

この記事のポイント

2020年度入試で学力を伸ばした学校とは?

「学力を伸ばした学校」とは、中学校入学時の偏差値と高校卒業時の偏差値を比較して、その差がプラス方向に大きい学校のことです。以下の表は、各中学校の人気国公立大と早慶上智の合格実績をもとに算出した、6年間で伸びた学力が大きい学校をまとめたものになります。表の見方は以下のとおりです。

(1)中学校入学時の学力(2014年度四谷大塚模試の結果偏差値を入学時の学力として使用)
(2)高校卒業時の学力(対象大学群の合格実績をもとに、入学時と同じ単位の偏差値に変換して高校卒業時の偏差値を算出)
(3)6年間で伸びた学力(学力の伸びは、高校卒業時の学力から中学校入学時の学力を引いて計算。(1)と(2)の差が学力の伸び=(2)-(1))
※結果偏差値:入試で80%の人が合格した偏差値

具体例を挙げて説明すると、男子の表の一番上、逗子開成は、人気首都圏国公立大の(1)中学入学時の学力が60.0で、(2)高校卒業時の学力が66.5です。66.5から60.0を引いた差が6.5となっています。これは、偏差値が6.5ポイント上の学校と同じ実績を出したことになり、偏差値6.5ポイント分、学力が伸びたということになります。

表を見ていただくとわかりますように、男子・女子ともに国公立大と早慶上智の両方で実績を伸ばしている学校よりも、いずれか片方で強みを発揮している学校が多くなっています。したがって、お子さんの現在の偏差値帯の学校の中で、めざす大学群の合格実績で学力を伸ばしている学校はどこかという視点でこの表を参考にしていただけるとよいかと思います。

最難関・難関校では男子校、中堅校では共学校が強みを発揮

対象校:首都圏全域/私立・国立/男子校・共学校(男子)/偏差値45以上65未満
対象実績:人気国公立大(東京大・京都大・一橋大・東工大を除く、志願者数が多い大学や地域の代表的な大学を中心とした首都圏の国公立大学)・早慶上智
人気首都圏国公立大 早慶上智 総合
偏差値範囲 学校名 学校種別 (1)2014年 四谷大塚模試 結果偏差値 (2)2020年 卒業生100人当たりの合格者数 (3) (2)の合格数に相当する偏差値 (4) 学力の伸び=偏差値の差((3)-(1)) (1)2014年 四谷大塚模試 結果偏差値 (2)2020年 卒業生100人当たりの合格者数 (3) (2)の合格数に相当する偏差値 (4) 学力の伸び=偏差値の差((3)-(1)) (4)平均 (4)が-3.0以上の学校を含む
偏差値60以上65未満 逗子開成 男子校 60.0 26.6 66.5 6.5 60.0 68.2 61.3 1.3 3.9
昭和学院秀英 共学校 60.0 28.4 67.3 7.3 60.0 59.3 60.2 0.2 3.8
サレジオ学院 男子校 61.0 23.0 64.8 3.8 61.0 93.7 63.7 2.7 3.3
東京都市大学付属 男子校 60.0 21.6 64.1 4.1
市川 共学校 62.0 25.1 65.8 3.8
偏差値55以上60未満 城北 男子校 55.0 15.7 60.3 5.3 55.0 67.0 61.2 6.2 5.7
巣鴨 男子校 55.0 16.4 60.8 5.8 55.0 45.8 58.3 3.3 4.5
攻玉社 男子校 56.0 12.0 57.2 1.2 56.0 79.9 62.5 6.5 3.8
栄東 共学校 57.0 19.2 62.7 5.7 57.0 49.6 58.9 1.9 3.8
本郷 男子校 56.0 11.4 56.6 0.6 56.0 77.3 62.3 6.3 3.4
広尾学園 共学校 56.0 13.4 58.5 2.5 56.0 57.2 60.0 4.0 3.2
東京学芸大学附属国際 共学校 57.5 16.5 61.0 3.5 57.5 60.6 60.4 2.9 3.2
神奈川大学附属 共学校 57.0 19.5 62.9 5.9
芝浦工業大学柏 共学校 55.0 15.0 59.8 4.8
世田谷学園 男子校 57.0 96.1 63.9 6.9
暁星 男子校 58.0 74.7 62.0 4.0
学習院 男子校 57.0 58.9 60.2 3.2
偏差値50以上55未満 帝京大学 共学校 51.0 17.6 61.7 10.7 51.0 44.3 58.0 7.0 8.8
桐蔭学園中等 共学校 53.0 14.0 59.0 6.0 53.0 52.0 59.2 6.2 6.1
中央大学附属横浜 共学校 54.0 19.1 62.6 8.6 54.0 36.3 56.5 2.5 5.6
高輪 男子校 51.0 9.4 54.4 3.4 51.0 32.3 55.6 4.6 4.0
成蹊 共学校 51.5 8.1 52.6 1.1 51.5 46.4 58.4 6.9 4.0
國學院大學久我山 共学校 51.5 8.7 53.5 2.0 51.5 37.1 56.7 5.2 3.6
山手学院 共学校 53.0 11.9 57.1 4.1
穎明館 共学校 54.0 12.2 57.4 3.4
専修大学松戸 共学校 53.0 11.0 56.2 3.2
中央大学附属 共学校 52.0 37.6 56.8 4.8
偏差値45以上50未満 宝仙学園共学部理数インター 共学校 45.5 12.8 57.9 12.4 45.5 35.1 56.2 10.7 11.6
青稜 共学校 45.5 13.1 58.2 12.7 45.5 27.2 54.3 8.8 10.7
大宮開成 共学校 47.5 12.6 57.7 10.2 47.5 18.5 51.3 3.8 7.0
茗溪学園 共学校 47.5 11.0 56.2 8.7 47.5 20.9 52.3 4.8 6.7
成田高等学校付属 共学校 47.5 9.8 54.9 7.4 47.5 14.0 49.2 1.7 4.5
西武学園文理 共学校 48.5 7.9 52.3 3.79
桐光学園 共学校 48.5 7.9 52.3 3.75
※出典/森上教育研究所

男子は、全体に最難関・難関校では男子校、それ以外の中堅校では共学校が実績を出しています。偏差値60以上65未満の最難関校で注目したいのは、東京都市大学付属です。近年非常に人気が出て進学校化した結果、国公立大で学力を伸ばしています。また、昭和学院秀英は御三家に比べるとやや地味な印象を持たれがちでしたが、やはり国公立大で力を発揮しており、これから注目していきたい学校です。

偏差値55以上60未満の難関校では、人気の共学校、広尾学園が早慶上智で学力を伸ばしています。また東京学芸大学附属国際が国公立大で学力を伸ばしてきているのは、やはり国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)のプログラムで実績を上げていると考えられます。その他は、毎年名前の挙がる中堅校が堅実に学力を伸ばしている印象です。この傾向は、偏差値50以上55未満の上位校も同様です。

偏差値45以上50未満の比較的入りやすい中位校では、大宮開成・青稜、宝仙学園共学部理数インターなどの常連校が、実績を上げています。西武学園文理は、近年名前が挙がっていませんでしたが、かなり復調してきました。また成田高等学校付属は郊外にあるためあまり注目されていなかったのですが、国公立大で強みを発揮してきています。茗渓学園もIBのコースを開設しており、実績につなげています。

女子は中位〜最難関校全てで、共学校が健闘

対象校:首都圏全域/私立・国立/女子校・共学校(女子)/偏差値45以上65未満
対象実績:人気国公立大(東京大・京都大・一橋大・東工大を除く、志願者数が多い大学や地域の代表的な大学を中心とした首都圏の国公立大学)・早慶上智
人気首都圏国公立大 早慶上智 総合
偏差値範囲 学校名 学校種別 (1)2014年 四谷大塚模試 結果偏差値 (2)2020年 卒業生100人当たりの合格者数 (3) (2)の合格数に相当する偏差値 (4) 学力の伸び=偏差値の差((3)-(1)) (1)2014年 四谷大塚模試 結果偏差値 (2)2020年 卒業生100人当たりの合格者数 (3) (2)の合格数に相当する偏差値 (4) 学力の伸び=偏差値の差((3)-(1)) (4)平均 (4)が-3.0以下の学校を含む
偏差値60以上65未満 昭和学院秀英 共学校 60.0 28.4 71.5 11.5 60.0 59.3 60.4 0.4 5.9
市川 共学校 62.0 25.1 69.9 7.9 62.0 67.4 61.4 -0.6 3.6
東邦大学付属東邦 共学校 62.5 22.7 68.6 6.1
学習院女子 女子校 60.0 112.1 65.1 5.1
頌栄女子学院 女子校 61.0 108.4 64.9 3.9
偏差値55以上60未満 栄東 共学校 57.0 19.2 66.5 9.5 57.0 49.6 59.1 2.1 5.8
東京学芸大学附属国際 共学校 57.5 16.5 64.6 7.1 57.5 60.6 60.6 3.1 5.1
広尾学園 共学校 56.0 13.4 61.9 5.9 56.0 57.2 60.2 4.2 5.0
神奈川大学附属 共学校 57.0 19.5 66.7 9.7 57.0 35.7 56.7 -0.3 4.7
お茶の水女子大学附属 共学校 59.0 15.8 64.0 5.0 59.0 70.8 61.7 2.7 3.9
芝浦工業大学柏 共学校 55.0 15.0 63.3 8.3 55.0 21.9 53.1 -1.9 3.2
江戸川学園取手 共学校 57.0 12.9 61.4 4.4
湘南白百合学園 女子校 56.0 51.9 59.5 3.5
偏差値50以上55未満 帝京大学 共学校 51.0 17.6 65.4 14.4 51.0 44.3 58.3 7.3 10.8
桐蔭学園中等 共学校 53.0 14.0 62.5 9.5 53.0 52.0 59.5 6.5 8.0
中央大学附属横浜 共学校 54.0 19.1 66.4 12.4 54.0 36.3 56.8 2.8 7.6
成蹊 共学校 51.5 8.1 55.4 3.9 51.5 46.4 58.6 7.1 5.5
國學院大學久我山 共学校 51.5 8.7 56.4 4.9 51.5 37.1 57.0 5.5 5.5
山手学院 共学校 53.0 11.9 60.4 7.4 53.0 25.9 54.4 1.4 4.4
穎明館 共学校 54.0 12.2 60.7 6.7 54.0 31.4 55.8 1.8 4.2
森村学園 共学校 50.0 8.2 55.7 5.7 50.0 19.8 52.4 2.4 4.0
専修大学松戸 共学校 53.0 11.0 59.4 6.4
法政大学第二 共学校 51.0 7.6 54.7 3.7
江戸川女子 女子校 50.0 6.9 53.4 3.4
日本大学藤沢 共学校 50.0 6.8 53.3 3.3
東京都市大学等々力 共学校 54.0 9.3 57.2 3.2
光塩女子学院 女子校 52.0 45.1 58.4 6.4
中央大学附属 共学校 52.0 37.6 57.1 5.1
香蘭女学校 女子校 53.0 42.0 57.9 4.9
カリタス女子 女子校 50.0 21.6 53.0 3.0
偏差値45以上50未満 青稜 共学校 45.5 13.1 61.6 16.1 45.5 27.2 54.7 9.2 12.6
宝仙学園共学部理数インター 共学校 45.5 12.8 61.3 15.8 45.5 35.1 56.6 11.1 11.1
大宮開成 共学校 47.5 12.6 61.1 13.6 47.5 18.5 51.9 4.4 9.0
成田高等学校付属 共学校 47.5 9.8 58.0 10.5 47.5 14.0 49.8 2.3 6.4
茗溪学園 共学校 47.5 11.0 59.4 11.9 47.5 20.9 52.8 5.3 5.3
西武学園文理 共学校 48.5 7.9 55.1 6.62
桐光学園 共学校 48.5 7.9 55.1 6.58
日本大学 共学校 47.5 6.3 52.3 4.8
東京女学館 女子校 48.0 18.1 51.7 3.7
※出典/森上教育研究所

女子は全ての偏差値帯の学校で共学校が実績を出し、健闘しています。偏差値60以上65未満の最難関校では、共学校の昭和学院秀英・東邦大学付属東邦・市川が国公立大で学力を伸ばしました。逆に、頌栄女子学院や学習院女子といった女子校では、早慶上智で実績を上げています。偏差値55以上60未満の難関校においても、女子校の湘南白百合学園が早慶上智で学力を伸ばし、私学に強みを見せています。男子で名前が挙がっていた東京学芸大附属国際が、女子でも国公立・早慶上智の両方で学力を伸ばしている点は注目です。また、茨城県ではこれから公立中高一貫校が増えますので、国公立で実績を伸ばしている江戸川学園取手は、よい併願校になるのではないでしょうか。

偏差値50以上55未満の上位校では、国公立大・早慶上智の両方で学力を伸ばしている國學院大學久我山の名前が毎年挙がりますが、今年も人気でした。その他の学校も中堅校が実績を上げ、いずれも頼りがいのある学校として人気が出ています。光塩女子学院はカトリック校で英語が強いこともあり、私学の早慶上智で学力を伸ばしている点も注目したいところです。偏差値45以上50未満の中位校では、男子と同様、常連校が実績を出し、いずれの学校も人気が出てきています。やはり、学力を伸ばしてくれる学校に注目して学校選びがなされていることがうかがえます。

まとめ & 実践 TIPS

男子の場合は全体に最難関・難関校では男子校、それ以外の中堅校では共学校が、女子は全ての偏差値帯の学校で共学校が実績を出しています。男子女子とも常連校が堅実に実績を出している場合が多いですが、東京学芸大附属国際や茗渓学園のようにIBの導入で実績を伸ばしてきている学校がある点にも注目したいところです。男子・女子ともに国公立大と早慶上智のいずれか片方で強みを発揮する学校が多いので、お子さんの現在の偏差値帯の中で、めざす大学群の合格実績で学力を伸ばしている学校はどこかという視点でこの表を参考にしてください。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

  • 中高一貫校

子育て・教育Q&A