新型コロナの影響で、来年春の大学入試日程はどう変わるのか?

新型コロナウィルスの影響でゆれる、来年春の大学入試。文部科学省は6月19日、「大学入学者選抜要項」を策定し、その日程や選抜方法を公表しました。そのうち主に大学入試日程に関わる内容についてお伝えします。

大学入学共通テストは、2つの日程から選択可能に

【大学入学共通テスト日程】
第1日程 1月16日・17日
第2日程 1月30日・31日
さらに特例追試験を2月13日・14日に設定

文部科学省は新型コロナウィルスによる影響を考慮し、来年春の大学入学共通テストに2つの日程を設定すると発表しました。第1日程は予定どおり1月16日・17日、第2日程はその2週間後の1月30日・31日です。さらに、病気やケガ、事故などの理由で第2日程を受験できなかった場合のために、特例追試験として2月13日・14日を設けるとしています。

これにより、高校3年生は各々の状況に応じて出願時に、第1日程か、第2日程のどちらかを選択できることになりました。これまでは、追試験といえば病気やケガ、事故などの理由に限られていましたが、令和3年度に限っては、病気などで第1日程を受験できなかった場合はもちろん、新型コロナによる学習の遅れなどの理由であらかじめ第2日程を選択することが可能です(ただし、既卒者は対象外)。会場も、第2日程を希望する受験生を広く受け入れるために、全国47都道府県に拡充される様子です。なお、第2日程の詳しい出願要件は今後詰めるとしています。

総合型選抜の出願、学校推薦型選抜の出願、一般選抜の日程は?

総合型選抜の出願開始は、2週間繰り下げて9月15日から、
学校推薦型選抜の出願開始は、予定どおり11月1日から、
一般選抜も、予定どおり2月1日から実施

総合型選抜(旧:AO入試)については、当初9月1日出願開始とされていましたが、高校3年時の活動を評価する時間を確保するためなどの理由で、2週間後の9月15日出願開始となりました。一方、学校推薦型入試(旧:推薦入試)は予定どおり11月1日出願開始となっています。

また、文部科学省は「大学入学者選抜要項」の中で、その選抜方法についても各大学に配慮を求めています。例えば、休校による授業の遅れや、海外留学や英語の民間試験、スポーツや文化関係の各大会や資格試験などの相次ぐ中止・延期を受け、これらの結果を記載できないことで受験生が不利にならないよう「努力のプロセスや入学を志願する大学で学ぼうとする意欲を多面的・総合的に評価すること」、オンラインによる個別面接や実技動画の提出など、コロナウィルスの感染拡大防止に留意した選抜を行うことなどです。

一方、一般選抜(旧:一般入試)は予定通り2月1日からの実施となっています。
これら個別の学力検査については、授業の遅れなどから学習進度に不安を抱える受験生も多いため、文部科学省は各大学に、追試験を設けたり、別日程の受験に振り替えができるようにすること、高校3年時に履修することの多い科目には受験生が履修状況によって解答する問題を選択できる出題形式にする・出題範囲を縮小すること、といった対応を行うよう求めています。また、調査書についても「出席日数や特別活動の記録や指導上参考となる諸事項の記載が少ないこと等をもって、入学者が不利益を被ることがないようにすること」としています。

各大学が新型コロナの影響への配慮として行う対応は、7月31日までに決定し、各大学のホームページなどで公表される予定です。

どれくらいの受験生が、大学入学共通テストの第2日程を選択するのか?

大学入学共通テストの第2日程を受験生がどれくらい選択するかどうかの
決定には、
第1日程との難易度差、私立大学入試の日程とのかぶりなど、
戦略的判断が必要になりそう

受験生にとって、日程が決定されたことは朗報ではありますが、大学入学共通テストの第2日程が2週間後に設定されたことで、さまざまな判断を迫られる場面も生じます。

学習時間を確保するとともに、「第2日程にして出題傾向を見極めたい」と考える受験生もあることでしょう。ただ、これまでのセンター試験では、「追試験は本試験より難しい」というイメージがありました。新たに設定された第2日程は、果たしてこの追試験のイメージのままなのでしょうか。イメージに従って高校等で「2週間程度の学習時間の差なら第1日程で勝負をしよう」といった指導が行われた場合、第2日程を選択する受験者はあまり増えない可能性もあります。また、第2日程を選べば一般選抜(前期)までの期間が短くなるため、その後の学習の負担が増えることも考えられます。

加えて、私立大学の一般選抜は1月下旬から始まるところもあるため、第2日程と入試日が重なるケースもありえます。その場合、どちらの受験を選ぶのか、悩む受験生もあることでしょう。

共通テストで「難しくなるかもしれない第2日程をあえて受けるか」、「学習の遅れを取り戻すため2週間の時間の猶予を重視するか」、「私立大学入試と第2日程、どっちを優先するか」等々、難しい判断を迫られる受験生。第2日程の設定が真に受験生の不安に寄り添うものとなるよう、さらなる検討が望まれます。

今後も文科省は、新型コロナの第2波などで秋以降に臨時休校などが実施され、高校卒業や大学入学の時期が4月以降にずれ込む場合や、試験実施時期の感染拡大が予測される場合には、それに応じて入試日程を変更するとしています。引き続き動向に注目していきたいところです。

プロフィール



ベネッセコーポレーション
大学受験情報責任者
北海道・東海・近畿・九州・沖縄エリアの高校現場を歩く中で、大学合格を果たした生徒とその保護者、学校の実態を踏まえた進路指導に定評。

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