休校の影響で公立高校入試の出題内容を変更する動きあり-東京都立高校入試(学力検査)の 変更点-

新型コロナウイルス感染症の影響により、長く続いた休校措置。地域によっては休校期間が長かったり、部活動などの大会が中止になったりなど、例年とは大きく状況が異なる今年。文部科学省から各都道府県教育委員会教育長などに対して、現在の中学3年生が受検する令和3年度(2021年度)の高校入試における配慮事項の通知が出ています。
特に東京都では、3月上旬から5月いっぱいまで授業を受けられない状態が続いていました。中学校で授業を受けることができなかった影響を鑑みて、東京都教育委員会は令和3年度の都立高校入試における学力検査の出題内容の変更を公表しました。今回は、その公表内容と入試への影響、そして受験生にとっての対策をお伝えします。

文部科学省から各都道府県等へ高校入試における配慮事項を通知

文部科学省から、2020年5月13日に「中学校等の臨時休業の実施等を踏まえた令和3年度高等学校入学者選抜等における配慮事項について(通知)」が公表されています。
この通知には、スポーツ・文化関係の行事、大会や資格・検定試験の中止や延期により、参加できなかったことによる不利益を被ることがないようにすること、また調査書の活用において、中学校の臨時休業等の影響で出席日数や学習評価の内容等の記載により不利益を被ることがないようにすること、諸活動の記録などが少ないことによって不利益を被ることがないようにすること、などが記載されています。また、高校入試における出題範囲や内容、出題方法について、必要に応じた適切な工夫をすること、とあります。
このような通知を受けて、都道府県によっては休校状況などの実情を踏まえ、学力検査の出題範囲、入学者選抜の具体的な内容などを変更する可能性があります。

東京都立高校入試(学力検査)の変更点

都立高校入試の学力検査の日程は、令和3年(2021年)2月21日で例年の時期と変更はありません。ただし、学力検査の出題範囲については各教科に変更があることが公表されています。

【国語】 出題範囲から除外されるのは「中学3年生の教科書で学習する漢字」のみとなります。よって、さまざまな文章(文学的文章、説明的文章、融合文など)の読解や記述については例年同様の出題内容になることと予想されます。漢字や語句・文法などの知識を増やし過去問題等を活用して長い文章の読み取りに慣れる、といったこれまで通りの学習が求められます。

【数学】 中学3年生で学習する「三平方の定理」と「標本調査」が除外されました。「三平方の定理」を使って解く問題が出題できないので、図形分野、特に空間図形の出題内容には大きな制約がかかることと思われます。一方で、除外部分以外では例年並みの問題に加え一部では内容をより深掘りした問題が出題される可能性もあります。関数や図形といった重要単元はもちろんのこと、計算や確率なども含めたこれまでに学習したことがらをじっくりていねいに復習しておきましょう。なお、三平方の定理も今後の学習の基礎となる大切な内容であるため、来春の都立入試には出題されませんが高校入学までに確実に身につけておきましょう。

【英語】 関係代名詞のうち、主格のthat、which、whoおよび目的格のthat、whichの制限的用法や同様の働きをもつ接触節が除外となります。重要な文法事項ですので、リスニング、対話文や物語文、英作文などすべての問題や素材文において、長い文が構成しにくくなるなどの影響が考えられます。一方で、除外内容以外の文法事項を使った英語を読む・聞く・書くことはこれまで通り求められるわけですから、中3までに学習した文法や単語・熟語などをていねいに復習すること、また長文に慣れるという意味では、過去問題は例年同様に一通り演習しておくことをおすすめします。関係代名詞は今後の学習にも大きく影響する重要な学習事項ですので、中学校の間にしっかり習得しておきましょう。

【社会】 公民的分野のうち、『私たちと経済』の「国民の生活と政府の役割」と『私たちと国際社会の諸課題』が出題範囲から除外されます。社会においては、地理的分野・歴史的分野・公民的分野と広い範囲から出題されるため、今回の部分的な除外は、数学や英語に比べるとそれほど大きな影響はないと考えられます。受験生としては例年通り、1・2年生の学習内容も含めて出題範囲をまんべんなく学習しておくことが大切です。

【理科】 第1分野の『運動とエネルギー』の「力学的エネルギー」と『科学技術と人間』、第2分野の『地球と宇宙』の「太陽系と恒星」と『自然と人間』が出題範囲から除外されます。
社会と同様に、物理・化学・生物・地学と幅広い範囲から出題されるため、出題範囲をまんべんなく勉強しておくことが大切です。加えて、個人によって得意分野・苦手分野がはっきりと出やすい教科でもあるので、出題範囲の中で苦手な部分は特に力を入れて復習しておく必要があります。

【自校作成問題】 基礎的・基本的な知識及び技能の定着や、思考力・判断力・表現力などをみるとともに、体験的な学習や問題解決的な学習などの成果もみることができるようにする、という学力検査の出題方針は、共通問題も自校作成問題も同じです。そのため、自校作成問題も同様の方針に沿って作成されるものと思われます。

都立高校入試出題内容の変更をどう受け止めるか

これまでお伝えしてきたように、都立高校入試においては休校措置を鑑みて一部の内容が出題範囲から除外されました。しかし、除外された内容はあくまでも令和3年度入試に出題されないだけで、中学校の学習指導要領に定められた内容である以上、在学中に学習することに変わりはありません。除外された部分も「勉強しなくてよい」わけではないのです。

また、今回の措置については「除外される内容」ばかりに注目が集まりがちですが、実は「除外されない内容」のほうが圧倒的に多いことを忘れてはいけません。中学1・2年生の学習内容すべてと、中学校3年生で学習する多くの内容は出題範囲です。また、調査書については第3学年の成績が記載されることに変わりはないので、定期テストや課題・提出物など中学校での日々の学習の取り組みが重要であることは言うまでもありません。

私立高校などの場合は、学校によって入試における配慮事項の内容が異なる可能性もあります。各学校におけるwebサイトでの情報発信や、実施される場合には説明会等で確認しておく必要があるでしょう。

各都道府県の公立高校入試の出題内容などの変更有無の状況は、<高校入試情報サイト>の以下のページに掲載しています。※随時更新
新型コロナで変わる? 令和3年度(2021年度)公立高校入試変更点まとめ
https://czemi.benesse.ne.jp/open/nyushi/article/closeup/00/1366955_13514.html

【出典】
●中学校等の臨時休業の実施等を踏まえた令和3年度高等学校入学者選抜等における配慮事項について(通知)(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20200514-mxt_kouhou01-000004520_2.pdf

●中学校等の臨時休業の実施等を踏まえた令和3年度東京都立高等学校入学者選抜等における配慮事項について(東京都教育委員会)
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/high_school/exam/release20200611_01.html

●進研ゼミ中学講座 高校入試情報サイト 東京都の高校入試情報
https://czemi.benesse.ne.jp/open/nyushi/exam/13/

プロフィール

浅野剛

浅野剛

ベネッセ教育総合研究所 特任研究員
進研ゼミ 高校受験総合情報センター センター長
元大手進学塾高校入試担当部長、入試情報統括を歴任。30年にわたって受験指導を行い、多数の生徒を志望校に合格させてきた高校受験のエキスパート。現在は、中学生・保護者向け入試説明会の講演をはじめ、中学校での進路講演なども担当。

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