私立中学校で進むオンライン授業、オンライン説明会【中学受験】

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため始まった一斉休校ですが、5月25日に緊急事態宣言が全国で解除され、徐々に学校の教育活動が再開しつつあります。休校の間、先進的な私立中学校ではどのように学習活動や学校説明会を行っていたのか、森上教育研究所がお伝えします。

教育現場でオンライン授業の導入が進んでいる背景

さまざまな教育現場でオンライン授業が積極的に活用されていますが、こうした現象の背景にはICT技術の発達があります。通信技術が発展して遠隔からの映像や音声をスムーズに伝達できるようになり、さらにパソコンやタブレットといったIT端末の普及率が上がって誰でも使える時代になりました。このように、技術の進歩で遠隔での授業が容易になったことが、オンライン授業の導入が進んでいる理由のひとつです。時間や空間の制約を受けずに授業が行える教育の新しい形として注目され、海外ではいち早く活用されていました。その波に乗って、日本での普及も着々と進んでいます。
また、新型コロナウイルスの影響で自宅での学習がやむを得なくなり、導入率が急増しているという事情もあります。

中学校にオンライン授業を導入するメリットとは

中学校にオンライン授業を導入することで、生徒はさまざまな恩恵を受けることができます。
まず、登校することが難しい生徒も授業に参加できるようになるでしょう。新型コロナウイルスで外出自粛が促される以前から、心や体の問題で学校に通うことができない生徒は存在していました。こうした生徒は学校に行けないという理由で授業を受ける機会を失っていましたが、オンラインを活用することで登校せずとも授業を受けられるようになります。オンライン授業の導入が、学習の機会に関する不平等改善のきっかけとなる可能性があるのです。
また、コミュニケーションの場を増やすことができるのもメリットのひとつです。オンライン授業の導入により、学校同士をネットワーク上でつなげることが容易になります。他校との交流などを通して遠隔地に住む人の価値観に触れさせ、生徒の人間性を育てることができるのです。
さらに、専門家を招待して授業の質を高めやすくなるというメリットも挙げられるでしょう。オンライン授業なら、学校の教師に加えて外部の講師に参加してもらうことも容易になります。専門家の視点を交えながら複数の教師が指導にあたれるようになり、授業の質を向上させることができます。

公立中学校でオンライン授業は実施されていた?

多くのメリットがあり、パンデミックなどの有事の際にも活用できるオンライン授業は注目を集めているものの、公立学校では導入がほとんど進んでいないのが実情です。文部科学省が令和2年度の4月に行った調査によれば、双方向型のオンライン授業を行った公立学校は全体の約5%に過ぎませんでした。この調査結果には小学校や高校も含まれていますが、公立中学校の実施状況が芳しくないことを推し量るには十分でしょう。ちなみに、事前に収録した授業動画を活用した公立学校も約10%と多くはなかったようです。自治体の資金力などによっても導入率は変わってきますが、公立中学校ではほとんどオンライン授業が実施されていないと考えるのが適切だといえます。

公立中学校でオンライン授業の導入が進まない理由

公立中学校でオンライン授業の導入が進まない背景には、やむを得ない理由があります。オンライン授業を導入するためには、その学校に通う全生徒の家庭にインターネット環境やIT端末が備わっていなくてはなりません。もともと設備がない家庭には学校側から提供する必要があり、その整備にかかる費用を捻出できない学校も多いのです。一方、裕福な家庭の子どもが多く通う私立中学校では設備面に関する懸念が小さく、オンライン授業導入のハードルが比較的低くなっています。学校自体にも公立より資金力が備わっているので、今後も需要が高まるオンライン授業を積極的に導入できるのです。
また、オンライン授業を導入することで教員の負担が大きくなると考え、二の足を踏む公立校も多くあります。公立校にはオンライン授業のノウハウが備わっておらず、実施に先駆けて行う準備に大きな労力がかかることが予想されます。「何から始めていいのかわからない」と戸惑う意見も出ており、ただでさえ負担が大きくなりがちな教員を守るためにオンライン授業を避ける公立校が多いということです。
このように、オンライン授業導入への意欲については、公立校と私立校の間で大きな隔たりがあるといえるでしょう。

始業の朝礼から正規時間割の授業をオンラインで行う私立学校も

多くの学校が長期にわたる休校に追い込まれる中、学校によってはいち早くオンライン授業を導入し、子どもたちの学びを止めないための工夫を行っていました。特に私立中学校では授業量が多いため、一部の難関校を除き多くの学校がオンライン授業に熱心に取り組んでいました。

たとえば、栄東・広尾学園・北鎌倉女子学園は、4月からオンライン授業を積極的に行っていた学校の代表と言えます。いずれの学校も朝の始業時間にはホームルームや朝礼をオンラインで行い、規則正しく学習に取り組むための工夫をされています。栄東と広尾学園では、1時間目から6時間目まで実技教科も含めた正式な時間割通りのオンライン授業を行っています。北鎌倉女子学園も、午前中に3時間のオンライン授業、午後はチャレンジ課題・オンライン進路指導・オンライン英会話などを行い、充実した学びの環境を実現しています。

志望校の休校中の取り組みもチェックを

他の中学校においても、生徒が慣れないオンライン授業で疲れてしまわないように動画配信と双方向授業を交互に行ったり、午前中に5教科の学習を集中させて午後に実技教科を配置して楽しく取り組めるようにしたり、先生方が試行錯誤しつつさまざまな工夫をされていました。

こうした取り組みは、今後学校説明会などでどこの学校もアピールすると思いますが、志望する学校が休校中にどのような学びを実行していたかは、先生方の熱心さを測る意味でもぜひチェックされるとよいと思います。

増加するオンライン説明会、一部ではオンライン個別面談も実施

学校説明会が始まる時期となっていますが、多くの中学校が新型コロナウイルス感染を防ぐために従来の学校での説明会を行わず、動画配信やライブ配信によるオンライン説明会を実施しています。この傾向は、今後も続くと考えられます。

また、北鎌倉女子学園などの一部の学校ではオンライン説明会のあとに、申し込み制でオンライン個別面談も実施しています。これは、従来の説明会では手を挙げて質問しなければいけなかったり、説明会後の相談ブースで長時間待つ必要があったりしたことを考えると、個別に質問をしやすく非常に優れた試みだと思います。

今年はさまざまな面で従来とは異なった対応が必要となり、戸惑われることも多いと思いますが、各中学校の新しい取り組みも学校選びにぜひ活用してください。

(著者:森上教育研究所)

参照:
広尾学園中学校
https://www.hiroogakuen.ed.jp/

北鎌倉女子学園中学校
https://www.kitakama.ac.jp/

栄東中学校
http://www.sakaehigashi.ed.jp/

プロフィール

森上展安

森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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