来年はどうなる?【理科・社会編】 2020年度中学入試の教科別出題の傾向から予想

2020年2月19日、東京都千代田区の市ヶ谷アルカディア私学会館で、森上教育研究所が主催する「2020年入試 首都圏中学入試の結果と分析」セミナーが行われました。
そこで、セミナーの内容から、今年の入学試験の傾向を教科別に分析した内容をレポートします。今回は理科と社会です。来年度以降中学受験を考えているご家庭はぜひ参考にしてください。

小学校の教科書で基本を押さえたうえで思考力を問う問題のトレーニングを

理科の入試問題の傾向については、首都圏の国立・私立中学校を中心に162校の入試問題の分析をした資料を作成した古谷理科教室の古谷広高先生が体調不良で欠席したため、小川理科研究所の小川眞士先生が登壇しました。

理科の入試問題は全体としては、生物・地学・化学・物理の4分野からまんべんなく出題されましたが、中でも、環境問題(生態系)、天体、振り子・てこ、生物(昆虫・植物)が多く出ました。また、2019年は月面着陸50周年ということ、日食月食があったということから月や天体に関する問題が多く出題されたことを挙げ、理科でも、社会のようないわゆる「周年問題」が出題されることにも注目しておきたいということが小川先生から伝えられました。

「今年は4分野からまんべんなく出題された理科の入試問題ですが、対策としては、どの年度においてもまずは基本事項の確認、各分野の定番問題の習得が重要です。たとえば、筑波大学附属駒場中学校でも、てんとう虫の羽が体のどの部分から出ているか問う問題が出ているように、昆虫の体のつくりや花の種子の問題という基本的な問題はどの学校でも押さえておかなければいけない事項です。こうした基本事項は、すべて小学校の教科書に書いてあることで、中学入試の問題もその延長上にあります。注意しなくてはいけないのは、やみくもに覚えるという時代ではなくなったということ。基本的な事項を押さえたうえで、思考的な問題を解けるようになる取り組みが必要です。思考的な問題というのは、今年の出題傾向にあったグラフの読み取りや要点整理、グラフ作成も含まれます」(小川先生)。

時事問題はおよそ9割の学校が出題、社会の一つの分野になりつつある

社会の入試問題について文教大学生涯学習センターの講師を務める早川明夫先生が100校の入試問題を分析した結果を報告されました。
全般的な出題傾向は、基礎学力を踏まえたうえでの応用力を問う問題が増えてきていること、問題文の長文化にともない、読解力が必要とされているということでした。その中には、語彙(ごい)力も問われると早川先生は指摘しています。

「たとえば、『ひさし』といった今の小学生が苦手とする古い言葉を答えさせる問題を桜蔭中学校が、横浜共立学園中学校では『灌漑(かんがい)』を説明させる問題も出題されています。長文化によって問題文を正確に読み取ることが求められます。特に、国語の問題であってもおかしくないような要約問題や抜き出し問題も出題されていることからも読解力をつけることは重要です。
また、社会という教科の特性上、グラフや写真、地形図などといったさまざまな資料を用いた問題がほとんどの学校で出題されています。特に、統計資料については、農作物の生産高を示す定番の問題のほかに、新出の統計資料を用いた問題が非常に多くなっています。西大和学園中学校で出題された、キャンプ場・スキー場・動物園・植物園の施設数と都道府県を一致させる問題が好例です」(早川先生)。

今年は時事問題が非常に多くの学校で出題されました。男子校では80%、女子校は100%、共学校では88%、全体では約90%の出題率となりました。
「特徴的なのは、時事問題だけで大問が出されているということで、プラスチックごみの問題や参議院選挙を念頭に置いて出題しています。また、青山学院中等部では、12月4日に亡くなった中村哲さんを選ばせる問題が出題されています。年内に起こった重大な出来事は注目しておく必要があります。また、記述問題は、大半が原因・結果を問う問題でした」(早川先生)。

新年度の小学6年生の教科書は政治・歴史・国際関係という掲載順になっていることから政治分野、特に主権者教育に関する問題が増えると予想されます。
最後に「社会が得意になるには、身近なものごとに疑問を持つことが大切です。お子さまの『はてな?』を大事にしながら学習することが大切です」と締めくくられました。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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