女子の理系進学は先生の励ましから

男女共同参画社会基本法が1999年に制定されて今年で20年がたちますが、理工系に進学したり研究者になったりする女性は、日本ではまだまだ少ないのが現状です。先ごろ公表された2019年度版の男女共同参画白書では、女子が理系を避ける原因は成績ではなく環境だとして、進路選択のためのキャリア教育の充実を訴えています。

理系進学率は上昇したが工学系が不足

白書は、この20年間で女子の大学など高等教育機関への進学率が大きく上昇し、進学先が多様化したことを指摘します。
1975年度の女子の大学進学率は12.7%、短期大学で20.2%でしたが、2018年度には大学が50.1%、短期大学が8.3%と、バブル経済崩壊後に進学率が上昇。大学進学率は男子(56.3%)を下回っているものの、かなり近づいてきました。

一方で専攻分野別にみると、男女ではまだ偏りが見られます。「薬学・看護学等」「人文科学」「教育」では女子の割合が過半数ですが、「農学」は40%台、「社会科学」や「医学・歯学」は30%台、もっとも少ない「工学」では15%にとどまり、白書では「工学を専攻する女子が際立って少ない」と評しています。

また、全国の女性研究者は2018年度で約15万人いますが、研究者総数に占める女性の割合は16.2%で、諸外国と比較してかなり低い水準です。工学分野は他の専門分野より研究者数が約42万人と群を抜いて多いのですが、うち女性研究者は約2万6,000人と6.2%に過ぎません。「研究者としての需要が非常に多い工学、理学分野において女性の割合が特に少なくなっている」と白書は述べています。

イメージにとらわれない進路指導に期待

この偏りを改善するには、理工系女子のすそ野を広げることが必要だと白書は指摘しています。理数系科目の学力不足ではなく、理工系への関心や周囲の女子の進学動向、親の意向、身近なロールモデルなどの環境、学校で学んだ知識と実社会のつながりを理解させる環境を作り上げていく必要性を挙げています。
とりわけ学校の先生が、男女共同参画について学び、「男性だから・女性だから、こうした仕事が向いている」といった性別役割分担意識にとらわれずに、進路や職業を選択できる指導をすることが期待されます。

文部科学省では今年度、「次世代のライフプランニング教育推進事業」として、男女共同参画についての教員研修のモデルプログラムを作成するとしています。昨年の医学部入試の不正問題を受けて発足した同省の有識者会議では、「性別による一律の差別は説明困難」とし、先ごろ入試の公正確保のための共通ルールを公表しました。こうした最新の情報提供も含めた研修が期待されます。
プログラミング教育やSTEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)教育の推進など、学校教育に期待される理数系教育の比重は高まるばかりです。女子がその潮流に取り残されないよう、主体的に理系進路やキャリアを選択できるような取り組みや、先生の関わりが求められます。

(筆者:長尾康子)

※内閣府 男女共同参画白書
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/index.html

※文部科学省 大学入学者選抜の公正確保等について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1417494.htm

プロフィール

長尾康子

長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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