未来の社会を生き抜くために、大切な力とは?

2019年5月26日、東京国際フォーラムで「ベネッセ進学フェア2019」が開催されました。私立中高一貫校約180校が一堂に集まり、各学校の先生方に直接質問できるほか、学校選びについて専門家に相談できるコーナーもあり、中学受験を考えている保護者のかたや子どもたちで賑わいました。
今回は、同フェアで開催された札幌の新陽高等学校校長の荒井優さんの講演から、「未来の社会を生き抜く力」についてお伝えします。

偏差値ではなく、子どもの「本気の挑戦」を大切にしてほしい

私は、現在札幌市にある私立高校、札幌新陽高等学校の校長を務めています。札幌新陽高等学校は、60年前、私の祖父が作った学校だったのですが、生徒の数が減り、立て直しが必要とされていました。
私が着任したのは4年前。おかげさまで今は、入学を希望する人が増えましたが、当時は偏差値も低く荒れた校風で保護者のかたや受験生からしても、積極的に通いたいと思えるような学校ではありませんでした。

当然、部活動も無いに等しい状態でした。私が着任した際、バスケットボール部を作りたいという希望が生徒からあり、コーチを札幌のプロチームのかたにお願いすることになりました。先方は快く引き受けてくださった代わりに、バスケ部の生徒も、プロチームの手伝いをしてほしいということで、公式戦のボランティアをすることになりました。2年間、ボランティアを続けたあと、Bリーグチームの提案で、新陽高校のバスケ部の部長が試合の際にあいさつをさせてもらう機会がありました。当時の部長は5000人の観客の前で、会場とコミュニケーションを取りながら、臆することなく自分の言葉で挨拶をしました。
また、スタンフォード大学の遠隔教育プログラム「Stanford e-Japan」にも合格者を出しました。ほかの生徒は、いわゆる名門高校の生徒です。そんな中、偏差値が40台の新陽高校が、メンバーの一員となったのです。

このような姿を見ていて私がつくづく感じたのは、これからの社会に出て活躍するためには、偏差値では測れないことがあるということです。東京での会社員時代、高学歴の人材が必ずしも仕事で活躍できるかというと、そうではないということを見てきたからでもあります。

では、私たち大人ができることは、なんなのか? それは、「本気で挑戦したいと思っている子どもを、大人が本気で応援すべきだ」ということです。勉強ができないから、成績がよくないから、お金がないから、家庭の事情が複雑だから……大人が勝手にそうしたことをハンディキャップとして捉えるのではなく、子どもが本気で挑戦できる環境を作ることに本気で尽力すべきだと思ったのです。

激しい変化の時代、「目に見えないものを信じる力」を養って

この20年間で社会が大きく変わったように、これからもものすごいスピードで変化は訪れることでしょう。これから20年先を見通すことは、大人でもできません。そんな社会にあって、「高校に通う意味」「大学に通う意味」を改めて問い直していただきたいと思います。

10代の最後~20代前半という貴重な時間と、大学入試や学費など膨大なお金が無駄にならないような選択をしてほしいのです。特に、お金よりも4年間という時間がとても大切だと思っています。それに資する大学がどれだけあるのか大人たちはよく見ていかないとならないと感じています。

私は、大学に行くのかどうかという問題よりも重要なことがあると考えています。それは、「見えないものを信じる力」を育むということです。先行きが見えない社会にあって、医者になれば幸せになれるのか、弁護士になれば幸せになれるのか、誰にもわかりません。できることは、そうした見えないものを信じて挑戦する気持ちを、子どもたちがもつことが大事なのです。

見えないものを信じるには、「言葉の力」が必要です。今日、私がこうしてみなさんと言葉を通してコミュニケーションを取っているように、人類は言葉によってあらゆるものを作り上げてきました。保護者のかた、そしてお子さまには「目に見える」形で情報が提供される映像ではなく、本で物語を読むことで言葉の力を養ってほしいと思います。そして、「本」は「良い本」を選ぶ必要があります。子どもたちには、「名作」と言われてきた物語を沢山読んでほしいです。ル・グゥインの「ゲド戦記」、リンドグレーンの「長くつ下のピッピ」などがその代表的名作です。

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