我が子の個性をどう伸ばすのか、人格形成期の中学校選び

2019年5月26日、東京国際フォーラムで「ベネッセ進学フェア2019」が開催されました。私立中高一貫校約180校が一堂に集まり、各学校の先生方に直接質問できるほか、学校選びについて専門家に相談できるコーナーもあり、中学受験を考えている保護者のかたや子どもたちでにぎわいました。
同フェアで開催された森上教育研究所の森上展安所長の講演から、「我が子の個性を伸ばしてくれる学校の選び方」について紹介します。

大学に行けるのは「難関校」だからではない、非認知スキルが養える学校選びを

皆さんが中学受験の準備を始める小学校中学年の時期は計算や暗記、運動神経といった認知スキルを養う時期でもあります。一方、中学校に入ったあとの中等教育というのがなんのためにあるかというと、人格形成にほかなりません。これは、非認知スキルとも言えます。
非認知スキルは、人とのコミュニケーションの中で養われていきます。難関校に行けば良い大学に入れると思うかたもいらっしゃるかもしれませんが、そうではなく、12歳の段階で学校に求めるべきは、そこから先の非認知スキルを高めてくれるかどうかです。
では、どういう学校がよいかというと、できればさまざまな個性をもった生徒、先生がいる学校がよいと思います。

中学生のお子さまにとっては、やはり友達というのは大きな存在です。徐々に親離れも進んでいき、保護者のかたの影響力も今までが100%だったとすると、20%くらいにまで落ち着くように感じます。その減ってしまった80%を埋めるのが、横のつながり、友達というわけです。この友達が何をしているのか、どんな考えを持っているのか、80%もの影響力があるとしたら、良い友達や先輩後輩がいる学校選びが重要になります。
また、教員文化というのも大切です。そこでぜひ気にしてほしいのは、学校見学に行った際に、図書館などに足を運び、クラスだよりや図書館だよりなどを読んでみていただきたいということです。そこで使われている言葉を見れば、自然と普段の言葉遣いが想像できますし、それが好ましく「我が子にもこういうふうになってほしい」というスタイルならば、お子さまもだいたいそこに近くなります。学校を選ぶ場合は教員文化がわかるようなものをぜひご覧になっていただくとよいですね。

人間関係が固定されがちな6年間、リーダーの経験も大切

また、変な言い方になりますがお子さまが、「ちやほやされるかどうか」という観点もあります。たとえば、灘校の校長先生が言うには、中学校の定員が180人なのは、それ以上多いと全員の顔が覚えられないからだそうです。つまり、先生が一人ひとりの生徒をよく見てくれるかどうかということです。中学受験を経て見事志望校に合格したお子さまは、小学6年生までは周りからは「すごいね」とちやほやされていたはず。それが、中学校に入った途端普通のことになってしまうため、うまくやっていけないお子さまも出てきてしまうかもしれません。

中等教育の間に大切な自己肯定感を育めるような人間関係が築ける学校だということが大切です。特に、付属校の場合は中学・高校と6年間人間関係が固定されがちです。最初のうちに、誰かの<フォロワー>になってしまうと、その役割のまま6年間を過ごすことになってしまいます。そこで、中学生の間に必ず何かしらの委員を経験させすることをおすすめします。すると、「リーダーってこういう感じなんだ」という感覚をつかむことができるので、多様な役割を経験することにつながります。

もちろん、お子さまの個性によってどんな学校が良いのかは異なります。たとえば、同じ男のお子さまでも、ざっくばらんな雰囲気の男子校で周りにもまれて成長していくのが合っているお子さまもいますし、女子校から共学化したような女子の多い学校でおおらかに見守られて成長していくのが合うお子さまもいるでしょう。
保護者のかたは、ぜひ自分のお子さまがのびのびと活躍できる環境を見極めてあげてください。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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