2019年都立高校一般入試 受験倍率、06年以降で最低に

今回は、2019年の都立一般入試についてお届けします。

都立受験者、昨年に続き減少

都立高校の一般入試が2月22日に行われ、全日制では41,690人が受験しました。受験者数は、急減した2018年よりさらに1,000人あまり下回りました。2017年と比べると4,000人近い減少となります。

その主な要因は、2017年から、東京都が私立高校生向け奨学金の給付対象を大幅に広げたことにあります。都内在住の年収760万円未満の世帯を対象に、国の就学支援金と合わせて、都内の私立高校の平均授業料44万9,000円(2018年現在)を上限に助成金が支給されることとなったのです。
その結果、これまでは経済的な理由で私立は検討してこなかった世帯が、「都立と同程度の学費なら」と私立を選ぶケースが増えたとみられ、2018年は都立志望者が目立って減少しました。2019年はその傾向がさらに進んだといえます。

公立中学卒業予定者に占める都立全日制受験者の割合は、2017年→2018年→2019年で58.3%→55.5%→54.4%と低下しています。
また、都立全日制全体の平均倍率は、2017年→2018年→2019年で1.43倍→1.36倍→1.32倍となり、現在の入試制度が始まった06年以降、最も低い値となりました。受験者数が募集定員に満たなかった学校は、普通科で男子12校、女子10校、専門学科などで31校に上っています。

中上位~中位層で目立つ「都立離れ」

普通科の学校を合格基準偏差値で6段階に分け、各段階の志望者数の3年間変化を調べたところ、高難易度の学校(63以上)の志望者数は、男女とも3年間あまり差がみられませんでした。
2019年、志望者が2017年より減少が目立つのは、男子では57~62の中上位層、女子では57~62、51~56の中上位、中位層です。この層は私立を志望したとみられ、近年志望者が増えている私立大学の付属校を志望した人が多いのではないかと思われます。

逆に、男子では45~50、40~44、女子では40~44で、2017年より普通科の受験者が増えています。近年、工業科や商業科など専門学科の志望者が減っている分、普通科で入りやすい学校に志望者が回っているのではないかと考えられます。

普通科で志願者数が多かった学校は?

都立の一般入試で普通科の志願者数を多い順に見ると、新宿(606名)、日比谷(588名)、戸山(575名)、小岩(545名)、青山(535名)となっています。うち、新宿、日比谷、戸山、青山では、国語・数学・英語については、共通問題より難易度の高い自校作成問題による入試を行っています。自校作成問題だからと敬遠することなく、チャレンジする受験生が数多くいることがわかります。

日比谷高校で異例の二次募集、背景に「辞退者増」

2019年入試では、都立高校の最難関といわれる日比谷で二次募集が行われ、話題となりました。とはいえ、同校は前述のとおり数多くの志望者を集めており、「入りやすくなった」とはいえません。では、なぜ二次募集が行われたのでしょうか。
定員254名に対し、同校は辞退者を見込んで270人を合格としました。ところが、辞退者が21名に達したため、5名の欠員が出てしまい、二次募集をせざるを得なかったのです。二次募集では定員5名に対し163人が受験しました。

辞退者増の理由のひとつとして、今年は国立の難関校・東京学芸大学附属で追加合格者が出たことが挙げられます。また、受験者層の変化も、辞退者数の「読みにくさ」につながっています。
日比谷など難関都立高校の志望者は、公立中出身だけでなく、私立・国立中出身者も増えており、「合格したら必ず入学する」とは限りません。公立中から都立高へ、私立中から私立高へ……といった大まかなすみ分けの構図は崩れ、都立、国立、私立とさまざまな選択肢を検討する受験生が増えているといえます。高校入試も「自由競争の時代」に入っているといえるかもしれません。

プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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