2019年度中学受験「午後入試」が存在感を増す

2019年度の首都圏中学入試にはどんな傾向が見られたのでしょうか。森上教育研究所が特徴的な傾向とトピックをお伝えします。

高偏差値の付属校は高止まり、系列校に人気集まる

ここ2~3年で急激に受験者数が伸びている大学付属校では、今年は早慶などのトップクラスはほぼ増えず、MARCHクラスがやや微増。高偏差値の付属校は人気の面からも難しいことから敬遠されていることが見て取れます。
MARCHクラスにしても、たとえば、明治大学でいうと明大中野八王子と明大中野、立教大学でいうと香蘭と立教女学院、青山学院大学でいうと青山学院横浜英和、浦和ルーテルというように、付属校ではなく系列校の受験者数が増加しました。これは、大規模大学の定員制限が厳格化した流れをくんでいると言えるでしょう。

午後入試が人気の一方で、女子は5日の入試にも受験者集まる

一方、男子校の進学校の受験者数も増えました。具体的には、偏差値50~55の学校に人気が集まりました。中でも、今年の大きな特徴は、午後入試です。たとえば、世田谷学園や巣鴨が午後入試を実施。従来、男子校の進学校では東京都市大付属のみしか午後入試は実施していませんでしたが、今年午後入試を実施した3つの学校では、どこも受験者数が増加しました。
昨年までは都市大付属が900名近く受験生を集めて実施していた午後入試を他の学校も実施すれば、それぞれの受験者数が減ることになるはずですが、どこも増えることになったのは、偏差値が60くらいの学校の午前入試を受けている受験生が、滑り止めとして偏差値50~55くらいの世田谷学園・巣鴨・東京都市大付属という学校を受験したという可能性が考えられます。

女子は、先に挙げたように青山学院横浜英和や香蘭など有名校の系列校で午後入試を実施しているところに人気が集まりました。
もう一つ注目なのが、大妻中学校が実施した2月5日の入試です。
女子の受験生は男子の受験生よりも果敢に難関校を受験する傾向があります。たとえば、洗足学園は偏差値が60くらいで、昨年の倍率は3.7倍ほどありました。前年の倍率が3倍以上になると、翌年は敬遠され倍率が下がることがほとんどですが、結果としては今年の倍率は3.5倍。前年の倍率が翌年の倍率にほとんど影響を与えず、「受けたいから受ける」という傾向がある代表的な学校といえるのではないでしょうか。

昨今は、午後入試が増え、どんどん入試の日程が早まっている中で、なかなか合格を勝ち取ることができない場合、遅い日程で実施される入試を受けるお子さんが増えるというわけです。

全体の傾向としては、一人あたりが受験する学校の数は変わらず、午後入試という選択肢も増えてきたといえるでしょう。世田谷学園と巣鴨の午後入試は算数のみ。短い時間で挑戦できるようになったことから、負担が軽いために利用しやすくなったものと思います。

神奈川では上位校の定員の変化によって受験者が増減

神奈川では、今年東大入試の実績が77名と大変良かった栄光学園が、受験者数を増やしました。毎年、神奈川を代表するもう一つの男子校、聖光学院と合わせて受験者数は同じくらいなのですが、今年は栄光学園の受験者数は100名ほど増加。要因となったのは、慶應義塾湘南藤沢中等部が、初等部から上がってくる生徒の人数の関係で定員を4割減らしたことです。その人数が、男女合わせると200名。そのうち約半分である男子100名が栄光学園の受験にまわったのではないかと考えられます。

千葉・埼玉では、偏差値50前後の中堅校の倍率が3倍台という結果になり、受験生が増えました。
埼玉は、さいたま市立大宮国際という公立一貫校が新たに設置され、一次試験は市立浦和と両方受けることができるため、両方で受験生が増えた可能性が。千葉は、公立一貫校が東葛飾を入れて3校に。公立一貫校が増えることが地元の受験生の増加にも一役買い、中堅どころが厚くなった結果、今後も受験人数が増加する流れができそうです。

もう一つの観点としては、東京から神奈川・千葉・埼玉の学校に出ていく数がここ数年伸びている点が挙げられます。2011年の震災以降、都内にとどまっていた受験生が、ここにきて他県に出て行く率が伸びているのです。逆に、神奈川・千葉・埼玉から都内に入ってくる動きはあまりありません。というのも、来年以降東京の人口は増え続け、あと4年増えるとされています。一方、神奈川・千葉・埼玉は人口が減ります。そういう面から、東京から神奈川・千葉・埼玉の、倍率が低く受かりやすい学校を併願するという動きがすでに出ていることにも、注目しておくのが良さそうです。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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