高い応募倍率に惑わされない「真水倍率」って何?【中学受験】

それぞれの学校の応募倍率は受験生が事前に知ることができる重要な情報ですが、ここのみに焦点を当てると、あまりの高倍率に気後れしたり緊張感を強いられたりすることが多々あります。
しかし、合格したとしてもその学校に入学しない生徒の数を考慮に入れた、「真水倍率」を算出すると、実際は応募倍率より少ない倍率で合格を手にすればよいことがわかり、必要以上に気後れする必要がなくなり、フラットな気持ちで試験に臨むことができるのではないでしょうか。具体的にはどういうことなのか、森上教育研究所がお伝えします。

合格しても入学しない生徒もいることを考慮に入れた「真水倍率」

普段は見えない志望校受験生が一堂に会す入試本番では、その人数を前に緊張してしまうことがあるでしょう。
そこで、受験生の心を落ち着かせるために用いるのが、実倍率です。

受験生が事前に知り得る倍率は応募数に対する定員の「応募倍率」だけの場合がほとんどですが、これは例年かなり高倍率になるのが常です。一方、学校側としては、実際に受験した人数と、合格しても手続きをしない人の差を見越して、合格者数は定員より多く出します。この実際の合格者数と受験者数とで算出した倍率を受験倍率もしくは実倍率と呼び、多くの場合応募倍率より約1倍分少なくなります。
しかし、よく考えると本当に入学したい受験生だけで、その学校の生徒の席を獲ろうとしているのですから、受験生としても、合格して棄権する人は初めからライバルではないわけです。
この正味の受験者数と実合格者数との倍率を仮に「真水倍率」として計算した表を用いて、詳しく説明します。

「真水倍率」は実倍率より0.5倍前後低くなる

結論から言うと、この「真水倍率」は前記した実倍率から0.5倍前後低くなります。
このような見方をすると、お子さまがこれから受験しようとしている入試の応募倍率がかなり高い4倍でも「4人に1人か……」と落ち込まず、「実倍率で3倍、真水倍率で最小2.5倍になるかもしれない!」という見方ができ、気が楽になるのではないでしょうか。実際の入試では、大勢の受験生を見ても仮に真水倍率が2倍強なら、隣の受験生より一点でも多く取れれば合格するのですから、俄然心強く思えてくることでしょう。

もちろんそんな例ばかりではありません。少なくとも男子校、女子校、共学校で事情が違いますし、難度によっても違います。そこで表の見方と合わせて、倍率事情をお伝えします。

まずは、男子有名校の直近2年の倍率状況です。

(出典:森上教育研究所)

表からは、実倍率では3倍の学校も真水倍率では2倍台になっているのが見て取れます。
開成・早稲田・芝など有名難関校は真水倍率でも3倍に迫ろうとするほどの人気が窺えます。同じ2倍台でも麻布は実倍率は2倍半ばですが、真水倍率は2倍前半。本郷は実倍率は2倍後半ですが、真水倍率は2倍を切る倍率となっています。桐朋も実倍率は2倍半ばですが、真水倍率は2倍に。このように、わずかな違いのようでも3倍台と2倍台ではがらりと違う印象を受けるのではないでしょうか。

次に、女子校の直近2年の倍率状況です。

(出典:森上教育研究所)

実倍率では2倍台が並んでいます。男子と比べて各校とも少数精鋭なのか実倍率自体は高いとは言えませんが、それでも2倍以上ですから確率は5割以下。ところが、真水倍率になると1倍台の学校がかなり多くなります。
吉祥女子は実倍率2.22のところ真水倍率は1.06で受けやすい印象になる一方、最も高倍率で知られる洗足学園のように実倍率3.86が真水倍率でも3.64という学校もあり、ほとんど変わらない入試も少なくありません。

次に、共学校男子の直近2年の倍率状況です。

(出典:森上教育研究所)

共学校は、女子校・男子校よりもさらに高い倍率の3~4倍台の実倍率が多く見られます。男子校も同様に、共学校男子の真水倍率も確かに緩和するのですが、もとが高倍率のため、安心度は低くなるかもしれません。
そんな中、目につくところで言うと、国学院久我山は実倍率が3.14のところ真水倍率が2.66、中央大学附属横浜は実倍率2.21のところ真水倍率が1.34。一方、広尾学園は実倍率は4.68で真水倍率は3.98と、高倍率となっています。

最後に、共学校女子の倍率状況です。

(出典:森上教育研究所)

渋谷教育学園渋谷が実倍率3.52のところ真水倍率は2.49、中央大学附属横浜は実倍率2.78のところ真水倍率は1.71、中央大学附属は実倍率3.38のところ真水倍率は3.02などが目につきます。一方、早稲田実業は実倍率3.58で真水倍率は3.15、成城学園は実倍率3.29で真水倍率は2.80と、かなり減っていますが高倍率となりそうです。

来年、再来年といつもこの通りとは限りませんが、水増率自体はそれぞれの学校で大きく変わることはありません。ぜひこれを参考に、自信をもって入試に挑めるとよいですね。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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