通信制の志望増、専門学科の二極化 2019年首都圏高校入試の志望動向をよむ

2019年の東京、神奈川、埼玉の進路希望調査に基づき、近年顕著な志望動向についてお話しします。

通信制の志望者はなぜ増えている?

1都2県の進路希望調査(東京都「平成31年度都立高校全日制等志望予定(第1志望)調査結果」、神奈川県「平成30年度公立中学校等卒業予定者の進路希望の状況」、埼玉県「平成31年3月中学校等卒業予定者の進路希望状況調査」)のデータを見ると、共通して言えることは、公立高校の志望者減、私立高校の志望者増です。その背景には、各自治体の「私立高校の授業料実質無償化」政策により、私立高校にも公立と同程度の学費で通えるようになったことが挙げられます。

その他、共通しているのは「通信制私立の志望者増」です。東京都では、2017年から2018年に561人増、18年から19年に275人増で1,773人となりました。通信制の志望者は中学卒業予定者全体の2%程度ですが、6年前の2013年と2019年を比べると6倍にもなっています。神奈川県、埼玉県でも通信制志望者は増えています。

その背景としては、まず中学校における不登校生の増加が挙げられるでしょう。東京都内の公立中学の不登校生徒数は、2013年→2017年で7,164人→8,762人と、4年間で1500人余り増加しています。
また、インターネット学習の普及や新しいタイプの通信制高校が誕生していることも大きな要因でしょう。毎日、決まった時間に学校へ行って授業を受けなくても、自分の好きな時間に、スマートフォンなどを使って学ぶことができる。そういった自由なスタイルが支持されているのだと思います。世界を飛び回って活躍しているスポーツ選手や芸術家志望の生徒は、全日制では単位の取得が困難になるため、通信制が適しています。そうした対象者が増えていることも一因と言えます。また、通信制といっても通学スタイルもあります。スクーリングと呼ばれる登校頻度は学校やコースによって違いがあります。

通信制のメリット・デメリット

このように、「いつでもどこでも」学ぶことができ、自分の学び方を自由に選べることが、通信制のメリットです。不登校など、事情があってこれまでの学校のありかたになじめなかった生徒や、やりたいことがあって、全日制では通学が難しい生徒には向いています。

一方で、「いつでもどこでも」学べると思うと、結局「何もしない」うちに時間が過ぎてしまう可能性もあります。ですから、特にやりたいこともないけれど「楽だから」という理由で通信制を選ぶことは、あまりおすすめできません。同世代の生徒や先生とのリアルな出会いの中で、社会性が身についたり、これまでまったく関心のなかった分野に目を開かされたりすることもあります。個人的には、通学する意味はそういったことにあるのではと思っています。

専門学科・総合学科の「二極化」

1都2県の進路希望調査を見ると、専門学科の中でも工業科・商業科の苦戦が目立ちます。たとえば東京都では、工業科28学科、商業科8学科が定員割れとなりました。一方で、園芸高校の動物、農業高校の食品科学、国際高校の国際(一般)など、2.4倍以上の高倍率となったところもあります。また、総合学科も明暗が分かれているように感じます。

神奈川県でも工業科・商業科は苦戦していますが、川崎市立川崎総合科学、横浜市立横浜商業など、数多くの志望者を集めているところもあります。また、県立横浜国際や横浜市立横浜サイエンスフロンティアは、今年も数多くの志望者を集めました。

大学進学志望者が増えていることから、普通科志向が強まっているのは確かです。そのため、工業科・商業科でも大学進学を視野に入れているところは増えています。おそらく、今後は専門学科・総合学科の再編が進み、高度で特色ある専門教育を行っている学校が残っていくのではないかと考えられます。

高校入試の構造が変わりつつある

大学入試改革が進み、高校教育も大きく変わりつつある今、「学び方」も高校選びの観点も多様化しています。今後の志望校選びでは、倍率など目先の情報に惑わされずに、少し引いた視点で、お子さまが自分を生かせる環境について考えてみることが大切だと思います。

たとえ今は人気がない専門学科でも、ご本人が本当に好きな道であれば、よい選択かもしれません。何が「有利」になるか、予測がつきにくい時代だからこそ、「自分にとっていちばん大切なことは何か」「自分を生かせる道とは何か」といった本質的な問題について、お子さまと一緒に考えてみる必要があるのではないでしょうか。

参照資料)

東京都「平成31年度都立高校全日制等志望予定(第1志望)調査結果」(2018年12月14日調査、2019年1月8日発表)、
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/01/08/02.html

神奈川県「平成30年度公立中学校等卒業予定者の進路希望の状況」(2018年10月20日調査、11月20日発表)
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/u5t/edu_stat/jr_high_course_hope/h30_page.html

埼玉県「平成31年3月中学校等卒業予定者の進路希望状況調査」(2018年12月15日現在、2019年1月11日発表)
https://www.pref.saitama.lg.jp/f2203/shinrokibou201812.html

※いずれも実際の出願前の数値です。

プロフィール

安田理

安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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