「多面的評価」の考え方を高校受験に活かす

大学入試改革では、一回の入試だけで生徒の可能性を評価するのではなく、総合学習や部活動、生徒会活動や学校外活動も含め、高校時代のさまざまな取り組みを多面的に評価する試みが進んでいます。
今回は、多面的評価の考え方を高校受験や高校選びにどうつなげたらいいかについてお話しします。

「何を、どのように学びたいか」が問われる時代に

大学入試は、今後AO・推薦入試の比率がますます増える見通しです。AO・推薦入試では「高校で何を学んできたか」「大学で何を学びたいか」をはっきり語れることが必要となってきます。

たとえば2016年から始まった京都大学の特色入試では、高校で学んできたことをまとめる「学びの報告書」と、大学で何をどう学びたいか、計画や展望を示した「学びの設計書」の提出が求められています。文部科学省による「JAPAN e-Portfolio」の構築・運営はこの流れと深く結びついています。JAPAN e-Portfolioは、高校生が自ら「探究」などの研究活動、部活動や学外での活動など、学びや活動の履歴をウェブ上に書き込んでいくシステムで、e-ポートフォリオを活用した学習指導を始めている高校も数多くあります。

つまり、e-ポートフォリオは「何を学んできたか」「今後は何を学びたいか」を考える材料となるわけです。学びの記録を振り返ることは、課題の発見や自分の興味の方向性を見定める助けになるのです。

高校入試には、このようなシステムはまだ導入されていません。しかし、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」とともに、学びに「主体性」を求める方向は大学入試改革の方向性と一致しています。

中学生活のすべてが「高校での学び」につながる

部活、習い事、趣味など、お子さまが好きなこと、夢中になって取り組んでいる何かがあれば、それは必ず「学び」の基盤となります。好きなことであれば「もっと強くなりたい」「上手になりたい」と試行錯誤することも苦にならないからです。試行錯誤することは主体的な学びそのものであり、そのまま「思考力・判断力・表現力」の向上につながります。

保護者のかたには「受験のために好きなことを我慢させる」のではなく、「好きなことを受験に活かせるよう励ます」という発想の転換が必要かもしれません。たとえばお子さまが作文や小論文等の書き方で悩んでいたら、ご本人の好きなことや体験をもとに、与えられたテーマについて書けることはないか、一緒に考えてあげてはいかがでしょうか。

社会の「現実」を考えることが主体性を育てる

「なぜ学ぶのか」「何を学びたいのか」を考えることは、高校入試でも大切です。学びたい分野や将来の夢は、中学生の段階ではまだ漠然としている子が多いと思います。しかし、興味・関心の「核」「芯」の部分は、すでにあるのではないでしょうか。むしろまだ進路の定まらない中学時代に、目先の有利・不利ではなく「自分にとって何が大切か」を見つめる機会を持つことはとても大切です。そのために、世界や国内で起きているさまざまな現実社会の問題と触れることは、よいきっかけになります。

少し話がずれますが、とある高校で医学部志望者のための小論文講座を見学したことがあります。「起承転結」といった小論文を書くためのテクニックを教えるのかと思っていたら、地域のホームドクターや拠点病院の厳しい現実について知る、あるいは、長野県を長寿県に押し上げた地道な啓蒙活動について話を聞く、といった内容で驚きました。テクニック以前に、医療現場で実際に起きている問題を知り、自分に何ができるか考えさせることがまず大事だと、その学校では考えていたのです。中学生にも、社会の現実に触れる機会をつくってあげることで、興味・関心が深まることはよくあります。

学びたいことの「軸」が見えてくれば学校選びもぶれない

多面的評価やe-ポートフォリオ導入の背景にあるのは、学力のみで大学が受験生をふるい落とすのではなく、受験生側の「学びたいこと」と大学側の「望む学生像」を丁寧にマッチングしていこうという考え方があります。「大学が受験生を選ぶ」と同時に「受験生も大学を選ぶ」のです。これは高校入試でも全く同じです。

ですから、志望校選択の際に、受験生本人の「学びたいこと」「学びたい環境」のイメージがはっきりしていることが大事です。同時に、保護者のかたも「わが子にこういう大人になってほしい」「これだけは大切にしてほしい」といった本質的なことを、ぜひ一度考えてみてください。そのうえでお子さまと話し合って決めれば、志望校選びにもブレがなくなると思います。
「学びたいこと」を軸に自分で進路を選択した経験は、高校受験だけでなく、大学や就職先を決定する際にも大いに役に立つに違いありません。

プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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