プロを育成する“専門職大学”の未来に迫るシンポジウム開催【変わる大学】

2018年11月25日(日)に、ベネッセコーポレーションと朝日新聞社メディアビジネス局が後援する専門職大学シンポジウム「次代のプロフェッショナルを育む大学へ」が開催されました。主催は2020年開学予定の「東京専門職大学(仮称)/設置認可申請中」と「i専門職大学(仮称/設置認可申請中)」。高校の教職員や高校生の保護者など、300人ほどが来場し、会場は満席。当日はベネッセ教育研究所の研究員による専門職大学の解説や駿台予備学校講師竹岡広信氏による基調講演をはじめ、2大学のめざす教育のプレゼンテーションやパネルディスカッションが催されました。

社会の即戦力となるプロフェッショナルを育成する“専門職大学”

1限目として開会に先立ちベネッセ教育総合研究所研究員佐藤昭宏氏から専門職大学の概要説明がされました。現在の日本は、先進諸国の中でも、(特に後期中等教育において)普通教育に偏った教育を行っているユニークな国であることを紹介。産業・就業構造の変化や、高等教育における改革の流れから、実践的な職業教育に重点を置いた新たな高等教育機関が創設されるに至った背景が解説されました。“専門職大学”では、卒業単位の約3分の1におよぶ約600時間が企業等でのインターンシップ(長期実習)に充てられるなど、社会で活躍していくために必要とされる高度な「実践力」と豊かな「創造力」を育む教育課程が準備されており、新たな専門職業人材を育成する機関への期待や可能性が語られました。

竹岡氏基調講演:「生徒を夢に導く〜プロフェッショナルを育てる〜」

「生徒を夢に導く〜プロフェッショナルを育てる〜」と題して、人気漫画『ドラゴン桜』の英語教師のモデルでもある駿台予備学校講師 竹岡塾主催 竹岡広信氏の基調講演が行われました。イギリスなど、ヨーロッパでは専門職の地位が高いのに対し、日本では専門職の地位が低く、職人が減っていることへの危機感や、これからは専門職大学に多くの可能性があることなどが語られました。英語教師としての知見も混じえ、夢を実現していく教え子たちの具体例などのお話もあり、専門分野において知識や技術を磨き続ける「継続は力なり」の大切さを訴えておられました。

ダイバーシティ社会の実現を支える「東京専門職大学(仮称)」

学校法人敬心学園 理事長小林光俊氏、および大学設置準備室宮田雅之氏から、2020年4月開学予定の「東京専門職大学」の医療福祉学部について説明がありました。運営する専門学校では高校新卒生はもちろん、大卒生や社会人も多数学んでいる現状から専門職大学設立に至る背景などが語られました。「リハビリテーション学科」理学療法専攻と作業療法専攻、「福祉介護イノベーション学科」の2学科体制で、保健・医療・福祉を軸に、多様な人々が共生できるダイバーシティ社会の実現を支える人材育成をめざすという教育理念に基づくカリキュラムの特色として以下の4つを大切にしているとの説明がありました。 ①多様な生活者が共生できる「ダイバーシティ社会」に欠かせない高度な専門知識と社会貢献への意欲を兼ね備えた人材を育成し、「超高齢社会」が直面する課題解決に貢献する。②医療福祉施設のマネジメント層を養成するために、経営戦略、マーケティング、財務、人材などの「経営系科目」を充実させ、「経営」の学びを通してマネジメント力を育成する。③医療福祉分野との連携・協働が進む美容ケア、災害行政、医療福祉工学など「周辺(隣接他分野)」の視野を広げ、新商品やサービスを創造できる人材を育成する。④地域生活を支える自治体・団体・企業などと積極的な連携を図り、「産業界」「地域社会」に貢献することをめざす。これらの学びを通して、保健・医療・福祉の分野からダイバーシティ社会に貢献できる人材育成の教育方針が説明されました。

在学中に全学生が起業にチャレンジする「i専門職大学(仮称)」

2020年4月開学予定の学校法人電子学園「i専門職大学」の学長に就任予定の中村伊知哉氏から「ICTイノベーション学部(仮称)」のプレゼンテーションが行われました。ICTを中心に様々な分野で活躍する多くの客員教員を招聘する計画や、国内外の様々な企業との産学連携計画をはじめ、カリキュラムの特色として「ICT力」「ビジネス力」「英語力」をキーワードに創造力を磨くことを目標とし、主に以下の3つを大切にしていることが説明されました。①これからの時代に欠かせないICTスキル(システム開発、プログラミング、ネットワークセキュリティなど)を徹底的に修得し、高度な専門性を養うこと。②問題発見・解決能力を養成する一環として、全学生が在学中に起業に挑戦することによって、失敗を恐れず、自由な発想で起業・事業運営を行い仲間とともに課題を解決するプロセスを実際に経験すること。③企業での640時間のインターンシップによってビジネスやイノベーションの現場を経験し、身に付けたスキルや知識を実社会で活かす能力を育成すること。起業して学費は自分で捻出するくらいの経験が積める環境を整えるために、地元自治体をはじめ、数多くのICT企業等とも連携。さらに世界で活躍するためにスタンフォード大学やMITメディアラボとの連携もめざすなど、これからの日本や世界のICT分野をイノベートする人材を育成する目標が語られました。

パネルディスカッション「専門職大学に期待される人材育成」

シンポジウムの2限目は、朝日新聞出版「大学ランキング」編集長杉澤誠記氏をコーディネーターとして、「東京専門職大学」学長(就任予定)の陶山哲夫氏、「i専門職大学」学長(就任予定)中村氏と、竹岡氏、佐藤氏の4氏とのパネルディスカッションが行われました。

■テーマ1:「専門職大学」とはなにか
「東京専門職大学」の陶山氏からは、世界で最も高齢化率が高い国である日本では医療・福祉の人材不足が課題であり、2030年までに215万人の医療・福祉人材の需要が増加すると説明がありました。また、「i専門職大学」の中村氏からは新制度における大学は、既存の大学と専門学校の中間に位置するのではなく、その上をめざす新しい軸の学校であり、理論とスキルを磨き、産学連携で学びを実践するのが専門職大学であると解説されました。

■テーマ2:社会のニーズに応じた専門職人材の育成
杉澤氏からは、7年ほど前のデータになるが、アメリカの小学生が大人になる頃には65%の人が当時存在しない職業に就くようになり、現在はますます予測不可能な社会になっていることが示されました。陶山氏からは、100歳まで生きる超高齢社会において、住み慣れた共生社会の実現、高齢者が健康的に社会で活躍できるようアシストすることが重要で、医療や福祉分野でもロボットやITとも緊密に連携した学問が必要であること。中村氏からは、すべての業界でICTが必要となり、そこでイノベーションを起こすためには、大学のキャンパスは座学の授業ではなく、人が集まって創造する場が必要であるとの話がありました。

■テーマ3:グローバル人材の育成
陶山氏は、敬心学園の専門学校では東南アジアの留学生が多く、高齢化率の高まりはアジア全体の課題であると語られました。国内の高齢者支援は日本人だけでは成り立たず、南アジアの人材が日本で学ぶとともに、母国に帰って活躍する人材を育成することが必要であり、そのために国際関係論、国際協力論などの学びを強化したいと説明がありました。中村氏は慶應義塾大学の大学院でも留学生比率が日本人よりも高い現状を例に、いずれ留学生が学生の半分以上を占めるのではないかと分析。そのためにも海外の企業と連携することが大切であり、MITやスタンフォード大などとも連携をめざしていく構想を語られました。これらの話を受けて竹岡氏からは、「言わなくてもわかるだろうという日本の文化は伝わらない。国際文化の違いを理解し、エビデンスをもって発信できる、主張ができる人材が必要。そのために、人種を越えた“コエデューケーション(共に学ぶ)”が大切である」と話されました。

■テーマ4:プロフェッショナルの育成とは
最後に杉澤氏からの提示により、今現在存在しないものを生み出す「0を1にする」創造力が求められる社会背景を受けて議論が行われました。佐藤氏は「創造力やたくましさは育てられるものではなく、自分が本当にやりたいことを追求、試行錯誤する中でこそ育つ。専門職大学は、高等教育においてこれまでにはない教育と職業をつなぐ新しい人材育成のあり方を提案していくのではないか」。陶山氏は「人を巻き込みながら新たな仕事を生み出していける、豊かな創造力と高度な実践力を持つ人材を育成したい」。中村氏からは「“変化を楽しみ、自ら学び、革新を創造する”という理念を掲げ、その中でも最も重視しているのは“変化を楽しむ”ことであり、今後の大きく変わる社会に楽しみながら立ち向かえる人材を育成したい」と話されました。竹岡氏からは「どんどん挑戦して失敗しなさい。それを支えてあげることができるのが専門職大学。楽しいから人が伸びる、好きなら自分でやる、授業をやるのでなく、やりたいことをアシストすることができれば、プロフェッショナルは自ら育っていくはず」と語られました。

参加者で盛況となった専門職大学「個別相談会」

シンポジウム終了後には、「東京専門職大学」と「i専門職大学」の個別相談会が開催されました。それぞれの大学のブースには、当日参加された高校の教職員や高校生の保護者の方が集まり、個々の疑問や質問に担当者が回答していました。ぞれぞれのブースの盛り上がりは、新しい大学制度である「専門職大学」への期待の現れといっても過言ではなさそうです。

東京専門職大学 https://www.tpu.ac.jp
i専門職大学  https://www.i-u.ac.jp
※大学名、学部学科名は文部科学省への設置認可申請中のため仮称となります。

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