2018年度首都圏入試からよむ 受験者動向と今後の見通し【高校受験】

2018年度入試では、都立高校の志望者が約3000人も減少したことが話題となりました。しかし、いわゆる上位校の高倍率は変化がなく、都立全体が易しくなったというわけではありません。
今回は、2018年度高校入試の受験者動向と、今後の見通しについて解説します。

「都立定員割れ」主要因は授業料実質無償化

2018年1月に公表された中学校校長会の「進路希望調査」(http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/press_release/2018/release20180109_01.html)によれば、全日制都立高校の志望者数は5万2497人で、昨年より3045人減少していました。割合でいえば、全中3生の74.7%で、前年の77.4%?から大きく低下しました。
都立高校全体の平均志望倍率は1.28倍で、ここ10年で最も低くなりました。
入試本番でも、これに近い結果となりました。

定員割れの高校も多く、全日制では51校が2次募集を行いましたが、計1647人の募集に対し、出願者は計1010人でした。31校では3月末に3次募集まで行いましたが、433人の募集に対して、応募者はわずか26人でした。

なぜ急にこうしたことが起きたのでしょうか。主な要因は、東京都が私立高校生向け助成金の給付対象を大幅に広げたことにあります。2017年から、都内在住の年収約760万円未満の世帯を対象に、国の就学支援金と合わせて、都内の私立高校の平均授業料44万9000円までの助成金が支給されることとなったのです。
これまでは、学費が理由で私立は検討してこなかった世帯が、「同程度の学費なら」と私立を選ぶケースが増えたとみられます。

上位校の志望者数はあまり減っていない

では、都立高校全体が入りやすくなっているかというとそういうわけではありません。進学指導重点校である日比谷、青山、戸山、進学指導特別推進校の新宿、進学指導推進校の北園、豊多摩などは2018年度も数多くの志望者を集めました。志望者が減少したのは、難易度が易しい普通科や総合学科、専門学科が中心でした。従来、これらの学校を志望していた層が私立に流れたとみられます。

私立は推薦で合格を決めた受験者が多い

進路希望調査では、私立志望者数(国立・他県公立を含む男女計)は1万7749人で、昨年より1535人増加していました。
また、7月12日、都生活文化局の発表による都内私立高校の入学状況の概要を見ると、推薦入試での入学者数は1267人増、一般入試での入学者数は、逆に797人減少しています。
つまり、私立高校入学者の多くは都立を併願せず、推薦入試で合格を決めていたことがわかります。

「私立のほうがめんどうみがいい」「大学進学指導や生活指導がしっかりしている」といった判断が働いたようです。また、今後の社会の変化を見据え、英語4技能の習得や、海外研修の機会、サイエンス教育といった特色を打ち出した私立に志望者が集まったとみられます。

首都圏私立大学の定員厳格化による「付属志向」

地方創生政策の一環として、私立大学の定員が厳格化されています。その結果、有名私立大学の多くで難易度が上がりました。この政策が打ち出されていなかった3年前の一般入試の合格発表数と2018年度の合格発表数を比較すると、青山学院大で72%、立教大で79%、早稲田大で80%、上智大で80%など、2割も合格発表数が減っている大学がみられます。
そのため、高校入試でも「付属志向」が顕著に現れました。大学付属校や系属校はいずれも高倍率となりました。

なお、大学付属校を選ぶ場合は、系列大学に希望の学部・学科があるか、内部進学率がどのくらいか、系列大学以外の受験も可能かなど、しっかり調べておく必要があると思います。

2019年度以降に向けて

私立高校の「授業料実質無償化」の影響は今後も続くとみられます。とはいえ、「都立から私立へ」という単純な流れではなく、都立・私立を問わず、志望者の集中する学校とそうでない学校との差が広がるという印象です。
付属志向は今後も続くのではないでしょうか。また、ここ数年、学び方の自由度が大きい「通信制」に志望者が集まるようになってきたことも注目されます。
近年の動向を知ったうえで、我が子の適性を伸ばしてくれそうな環境について広い視野で考えつつ、折に触れ、進路について気軽に話し合ってみることをおすすめします。

プロフィール

安田理

安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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